十二
私は自信をつくる為に必死で勉強しました。
姉さんのことだけを考えて、姉さんの愛情に包まれることだけを願って。
しかし、だめでした。
落ちた、と姉に報告する時、涙は出ませんでした。
何もかもが乾いていました。
私の脳みそも心も声も目も何もかもがかさかさに乾いていました。
「つかさ」
パソコンの画面の向こうで姉さんが悲しそうに瞳を揺らします。
失望させた、と反射的に感じました。
乾いた身体が急に冷水を浴びせられたように縮み上がりました。
「ごめんなさい……」
声が震えます。
「なんで謝るの?」
姉さんが不思議そうに微笑みました。
「え、だって…待っててくれたのに……」
「つかさ、いいの。姉さんはいいのよ」
「え……」
「つかさ、これからは自分の道を探すの。つかさだけの道を。姉さんの後をついてくるだけじゃだめなのよ」
「………」
それは、本当はとうこ姉さんが私から解放されたいということではないの?
だって姉さん、私がそばに行けなくても全然、悲しそうじゃない。
「きっと新しい出会いがつかさを変えてくれるわ」
姉さんは残念そうに言っているのでしょうが、私の耳には嬉しそうに聞こえます。
私は打ちひしがれました。
今まで私は姉に甘えていただけだったのでしょうか。
姉さんも私が好きで愛しいものだと信じ切っていたのに。
両親は元より私になんか興味がないので、姉の学校に落ちたことを報告すると、「そう、じゃあ、受かるとこを受け直しなさい」、とだけ言って電話を切りました。




