一
第一志望の高校へは見事に落ちて、諦めの気持ちが私の全身を支配したままこの高校の門をくぐります。
初対面の同級生に囲まれて固い表情のまま列に並んで、入学式の会場である体育館に向かいました。
歩くたびに胸元の赤いリボンがひらひらと揺れて、諦め切った無心な心が疼きだします。前を歩いている女子のポニーテールが揺れているのにも理由なき苛立ちがわいて、私は唇を噛みました。
新入生入場、とスピーカーからの声を合図に体育館前で止まっていた列が進み始めます。
割れんばかりの拍手と吹奏楽の演奏と進む道の両側を埋め尽くす在校生や保護者、壇上にでかでかと吊るされた入学式と書かれた横断幕。私の目に映るもの、耳に響く音全てが祝っている。
やめてほしかった。
こんな学校来るつもりなかった。
本当は、こんな真っ黒なセーラー服着たくない。本当は、紺色のブレザーを着て、チェックのスカートの制服を着たかった。
冷たいパイプ椅子に腰を下ろして、私は目を閉じました。
入学式が暗闇の中を進行していきます。
居眠りしていると見咎められてはいけないので、時々は目を開いていましたが、そのたびに落胆します。夢じゃない。現実です。
次々に生徒の名前が呼ばれ、呼ばれた生徒が返事をしながら立ち上がります。
「綿貫つかさ」
はい、と気の抜けた返事をして立ちます。
私の名前を読み上げた担任が苦い顔で私を見ました。
その担任こそが源城先生、源城行孝先生でした。身体に合っていない大きめのスーツが滑稽で、思わず唇の端が上がってしまいます。源城先生はそれに気づいて、目を一瞬くわっと見開きました。私は直ちに真顔に戻ります。源城先生も慌てたように手元の資料に目線を戻します。
「い、一年C組、以上、計三十二名」
着席、と先生が言い、私は腰を下ろします。
体育館に来る前に教室で源城先生の姿を見た時は何の印象も無かったのですが、今になってはっきりと先生の姿かたちを覚えます。
さっきまでの気分が嘘のように軽くなりました。笑う行為は単純に心に良いみたいです。
週一回投稿していきたいと考えています。
よろしくお願いします。