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今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第1部 はじめまして、異世界さん。
9/27

09話 その男はそりゃもう、ひどいもんで 1

東京都内、某所にあるアパートの一室。

パソコンの画面に向かう1人の青年がいた。


「うーん、おかしいぞ?

【ワンダーランド@俺が最強】さん

今日クエストの約束してたはずだよなあ」


青年の名前は大和(ヤマト) 孝臣(タカオミ)

同じくヤマトと呼ばさせていただこう。

彼は20歳のフリーター。

高校生の頃まではとても優秀な生徒で、剣道では全国ベスト8。学業もトップクラスであった。

が、あるきっかけから剣道も辞め、進路も決まる事なくこうして1人暮らしのフリーターをしていた。

見た目はメガネをかけた如何にも真面目な好青年といった感じだ。

少し重ための前髪をかき上げているのが様になっている。

性格はお人好しで面倒見がよい。

趣味はネトゲ、アニメ、漫画の所謂、普通のオタクである。

因みに【ワンダーランド@俺が最強】とはヤマトがハマっているネトゲ内のフレンドのハンドルネームだ。


「まぁ、仕方ない。急用が出来たのだろう。

ん? 今日は金曜日か。てことは【なっきー】のライブ動画投稿の日だな!」


なっきーとはヘコ動という動画サイト内の歌い手の事だ。ヤマトはなっきーの熱狂的ファンであった。



……。おかしい。

時刻はもう夜中の2時を回っている。

いつもなっきーは12時前にはライブ動画を終える。

ワンダーランド@俺が最強さんにしてもこれまでクエストの約束だけは必ず守っていた。

もしかして何か事件に巻き込まれたか…?

いやー!ないない!何を言ってるんだ俺は、事件て!!

※巻き込まれています。


「あああああ!!! そういえば!!!」


明日は【お兄ちゃん、もぉ!!!~街行く妹達を捕まえろ~】の発売日じゃないか!

しかも初回特典の「ふえぇ……お兄ちゃん、私を博士に送らないでぇ……」抱き枕カバー付き!

こうしてはおれん! 早く並ばないと!!


そそくさと着替え家を飛び出るヤマト。

要はエロゲである。

そう、ヤマトは真面目な見た目とは裏腹にムッツリスケベ。

いや、超ど変態ムッツリスケベだったのだ。


ーーーーーーー


いやー、夜中から並んだ甲斐があった!

しかし余裕で買えたな。1番に。

何だコレ。人気ないのか?


時刻は午前9時。

エロゲソフトを買えたヤマトは

満足そうに帰路についていた。


「俺は別に妹属性が特別好きって訳ではないが、ヒロインが総勢520人という所に魅力された。

いや、流石に多すぎだとは思ったが制作会社のそのアグレッシブな攻めの姿勢にーーーーあっ」


1人でブツブツ言いながら歩いていると手元が滑ってソフトを落としてしまうヤマト。

それをさらに誤って蹴ってしまったため、ソフトは道路へ放り込まれた。


「お、俺の【おにもお】おおおおお!!!!!!」


【おにもお】とは公式の省略タイトルではない。

ヤマトが今、勝手につけただけである。


道路に飛び出しソフトを拾おうとするヤマト。

ホッとしたのも束の間、黒い影にソフトを略奪された。

カラスであった。

無駄にキラキラテカテカしてたパッケージのせいでカラスの興味を引いてしまったらしい。


「うおおおおい!!! 待てええええ!!!」


今は辞めたものの元剣道全国ベスト8の足腰をなめるなよ!

辞めてからも素振りとかはやってたから体は鈍ってないしな!

あのクソカラス、捕まえて焼き鳥にしてやる…!


ヤマトはカラスを追った。


ヒューゥ……ボチャン!


「はうッ!!??」


カラスとの追走劇の途中、カラスは途中で飽きたのかソフトを手放し、捨てた。

運悪くその先は流れの強い川であった。


待ってろ、俺の【まちいも】おおおお!!!


略し方、さっきと違わないか?

とにかくヤマトは迷いなく川に飛び込んだ。


「ぶはっはぁ……! はぁ……! どこだ……!?」


かなり流れが強い川だ!

どこにあるんだ!?

あ!あった!

……?あの奥に見えるのは、猫?


どうやらソフトを見つけたらしいヤマト。

しかしその奥には溺れる猫の様な白い影が。


「ちっ……!何なんだよクソがああ!!」


ヤマトはソフトを素通りし、猫の影の元へ泳ぐ。

体力はもう限界だ。


「はぁっ!大丈夫か!?お前!……ってあれ?」


何とか辿りついたヤマトは抱き抱えた。

猫はピクリともしない。というより……


ぬいぐるみじゃねえかこれ!!!


ぐっ、まずい!ここにきて足がつった!

もう体力もない……


「ゴボッ……!」


こんな所で俺は死んでしまうのか……?


ヤマトの意識は途切れた。



ーーーーーーーーーーー




「呼ばれてないけど、ジャジャジャジャーン!!

異世界へようこそ〜!」


真っ白な空間に、

目の前には女の子か男の子か、髪の長い子供がいた。


「ボクは神…みたいな存在!

君にチート能力を与えたもう〜」


神がシュバッといった感じで慣れないポーズをとる。


しめしめしめ、今までの子達は強烈で押し負けちゃったからな〜。

今度はこっちがインパクトを出して隙を与えなくさせてやる〜!


神はそういった魂胆だったらしい。


「……た」

「ん? なになに〜?」



「ボクっ娘キタアアアアアア!!!!!!」

「ふみゅ!?!?」




神は思った。


ああ、またか。

この子も強烈なタイプだ……。

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