07話 未知との遭遇
人界最端の街「ミナセト」
魔界にほぼ隣接しているこの街は人族、魔族の隔たりがなく、スラム街やゴロツキもいるものの、冒険者や商人などが立ち寄る街としてそれなりに賑わっている。
※アリスが最初にいた街です。
の、近くにある魔界と人界を隔てる大きな森、ゴブリンが出現し見習い冒険者の狩場となる。
いつもは静かなこの森が今日はやけに騒ついていた。
ドドドドドドド!!!!!
「うおおおおおお!!!」
ゴブリンの大群を引き連れ爆走する青年、アリスの姿がそこにあった。
いやー、やっちまった。
『絶対神罰』について色々試してる内にまさかゴブリンの親玉を焼きそばパンに変えちまうとは。
そりゃ子分も怒るよね。
「いや、怒りすぎだろおおお!!
何百匹いるんだお前ら!!!」
ゴブリンは時折、笛の様な物を吹いているその笛で仲間を呼んでいるのだろう。恐らく森中のゴブリンが集まってきている。
あいつら足は速くねえから追いつかれはしないが、至る所から湧くし、体力は無尽蔵だ。
ゴブリンと能力無しでタイマン張ったが
そこら辺の不良なんか目じゃないくらい、かなり手強かった。
こんだけ数がいりゃ能力使ってもキリがねぇし、捕まったらマジで死ぬかも……。
正直な所ゴブリンの親玉、別に「戻せる」んだけどなあ…、言葉が通じるとは思えん。
さて、どうするか。
お、あれは……!ラッキー!これで助かる!
アリスは何かを見つけたようだ。
それは川だった。
アリスは上着を脱ぎ頭に巻きつけ走る勢いのまま川に飛び込んだ。
「ぶはっ! へっ、どうだ!
手足の短いお前らじゃ泳げねえだろ!」
アリスの読みは当たった。
確かに手足が短かく頭の異常に大きいゴブリンの身体は泳ぎに向いているとは言えないだろう。
ゴブリン達は悔しそうに引き返した。
へっ!ざまあみやがれ!
いやしかし、流石に走り疲れたよボク。
アリスはそのまま無気力に川に流される事にした。
いやー、危なかった。これからは気をつけねえとな。
しかし、俺の能力について収穫も沢山あった。
まずは物質変換対象は俺がちゃんとイメージ出来ないと駄目だ。
例えば家を焼きそばパンに変換しようとすると外壁や屋根は変換されるが家具は変換されない。
次に変換する物の質量は基本無視して変換できる。
ゴブリンの親玉も4メートル近い化け物だったが触れちまえば一瞬で焼きそばパンにできた。
最後に、変換したもの焼きそばパンは欠損が無ければ元に戻せる。この発見はデカい。幅広く応用ができそうだ。
アリスが仰向けでプカプカ浮かんで流されているとだんだん水位は浅くなってきた。
どうやら川の終わりが近いらしい。
起き上がるアリス。
すると何やら向こうの岩陰から声が聞こえてきた。
「あー、もう最悪。
替えの服なんて無いのにぃ……。
本当! あのチート能力、無能だし!」
チート能力!?今確かにチート能力と聞こえたぞ!
「おい、あんた。 今、チート能力って言わなかーーー
アリスが岩陰に近づき回りこむ。
そこにいたのは全裸の美しい少女。ナツキだった。
「ッッッッ!!!?!?!?」
声にならない叫びをあげるナツキ。
「コホン。 今チート能力って言わなかったか?」
「せめてリアクションしろおー!!!」
バゴォーン!!
ナツキの渾身の右拳がアリスに炸裂した。
アリスは吹き飛び川にボシャーン!
ナツキは咄嗟に身体を隠す。
(なんだこの女、俺を殴る女なんて初めてだぞ!?!? 今まで回りの女なんか俺を恐れて近づきもしなかったぞ!)
(なんなのこの男の子、私の裸を見てむ、無反応だったよ!?!? 今まで私に近づく男ってなんかやらしい目つきの人ばっかだったのに!)
(こんな女【男】初めてだぜ【よ】!!!!)
運命の出会い? がそこにはあったそうな。




