05話 その女もまた、一癖二癖 2
ーーーーーーーー白い空間。
「ここ、なんなの……?」
オロオロとした様子で辺りを見回すナツキ。
目の前には男の子?女の子?どちらかわからないが髪の長い子供。
「ここはまぁ夢みたいなもんだから気にしないで〜。改めましてようこそ異世界へ〜!!」
「い、異世界……?」
異世界って漫画とかアニメでよくある……?
剣とか魔法の……?
「そうそう〜! その異世界だよ〜。
前の子と違って察しが良くて助かるよ〜!
やっぱりチュートリアルを短縮して正解だったね〜」
心読まれてるし!?
「って事はもしかしてこの夢が覚めたら私1人で生きて行くの!?」
「基本的にはそうなるね〜。 でも安心して! 君にもすご〜いチート能力をーーー」
「無理ムリむりー!!! 私は1人じゃ生きて行けないの! ああ……お腹が空いてきた……。 ご飯作って! お風呂沸かして! ベッドの用意してー!!」
神の言葉を遮り、うわーん!と泣き叫ぶナツキ。
そう、彼女は極度の「依存癖」があるだ。
ナツキにはこれまた完璧超人の義兄がいた。
ナツキは生まれてからずっと身の世話など兄に頼りっぱなしで生きてきた。
しかしその生活も16歳で終わりを告げる。
16歳になった事で、義兄に結婚を迫られ襲われ犯されそうになったのだ。
しかし当時、すでに格闘技を極めきっていたナツキはすんでの所で助かる(自力でぶちのめしただけ)。
その後、両親は離婚。2度と義兄と会う事は無くなったが「依存癖」は健在。
それとついでに性に対して異常な恐怖心が身についてしまったのだった。
ナンパ男に胸を触られそうになり、過剰に反応したのはその為である。
「うぇへへ〜……君も疲れそうなタイプだぁ……。
だーかーら! チート能力あげるからボクの質問に答えて! いい!?」
「うぇ……ぐす……ふん」
涙でぐちゃぐちゃになりながら頷くナツキ。
お、依存癖から人の言うことは聞きやすいのか。しめしめ。
神はやっと俺のターン! といった感じだった。
「はい、じゃあ始めるよ? 正直に答えるように。
【あなたの趣味はなんですか?】」
「ぐすん……歌うこと……」
「いい加減泣き止みなよ……。 次の質問。
【あなたの将来の夢は?】」
「私の夢はなんでもしてくれる素敵な人と結婚すること! そうね、家事は多少手伝うけど買い物とかはお願いしたいかな? それでーー」
「も、もう結構! 続いての質問。 【あなたはーー」
質問が終わった。
「結果発表〜!! 【あなたは物凄いかまってちゃん。普通にしてればモテるのに色んな所で台無し! 残念でした! そんなあなたにピッタリなチート能力は可能性は無限大! 『百獣の巫女』】
お、すごい能力だよ〜! すごいすごいっ」
ドンドンぱふぱふっ
「当たってるからなにも言い返せないや……。 そんなことより『百獣の巫女』?」
「説明するね〜。 百獣の巫女は人間以外の生物の力や能力を一時的に借りられる能力だよ〜。
その際見た目もちょこっとだけ変身するけどね。
猫なら猫耳ついたり尻尾が生えたり」
「そ、それすごい能力じゃなかですか!!」
テンションが上がり口調が乱れるナツキ。
かなりすごい能力だ。例えばゴリラの腕力でボクシングのストレートを打てばそれは脅威的な破壊力となるだろう。
確かにすごい、すごいのだが……。
「ただし制限というか制約みたいなのがあって〜」
そう、この神のくれるチート能力には厄介な制限がある。
なんだろう。1日の回数制限とかかな?
「能力解除後、通常時の姿のまま変身先が乗り移るっていうやつなんだけど、
因みに乗り移られる時間は変身していた時間と同時間だから気をつけてね〜」
「あんまピンと来ないな……」
どういう事だ?
猫に変身したらニャーニャー言っちゃうとか?
確かに困るけど、それを差し引いてもすごい能力だ!鳥の力を借りれば空も飛べる!
「ありがとね!神様!」
「うっうっ……。初めて感謝されてボク、嬉しいよ……。
ゴシゴシ、それじゃあこのチート能力をぞーんぶんに駆使して異世界生活楽しんでねぇ〜」
よーし、この異世界生活で依存癖も克服するぞ!
そしてきっとどこがで素敵な人出会う……んだ……。
ーーーーーーー
ナツキの意識は途切れ気づけば辺りは明るくなっていた。
しかし、ナツキはこのチート能力の制限の恐ろしさをまだ知らなかった。