表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第2部 旅は道連れと言いますし。
27/27

27話 第 六 天 魔 王


「あの日の本能寺はそれはもう凄い火の海で……」

「おい、このガキ急に回想挟もうとしだしたぞ」

「五月蝿いわ! 黙って聞けい! そうじゃ、あの日は確かーーー」



********



「おい、ミッツーよ! なぜ吾輩を裏切った!?」


かの有名な本能寺の変。

明智光秀が謀反を起こし、今で言う京都の本能寺に宿泊していた主君、織田信長を襲撃した事件である。


燃え盛る火の中、ミッツーと呼ぶ男と対峙する織田信長。

織田信長のその姿は、魔王を自称する幼女の姿でも無ければ、アリスにやられる前の、まるで鬼かのような銀髪の大男の魔王の姿でもない。

只者ではないオーラはあるが、普通の甲冑をつけた侍といった感じだ。


「その呼び名はやめろ! 俺の名前は明智光秀だ! なぜ裏切ったかだと? 自分の胸に聞いてみるがいい!」


ミッツーとはどうやら明智光秀の事だった。

光秀は信長に対し激怒している。対して信長は、気がもめているかのようだ。


「な、なんじゃ? 吾輩の何がいけなかったんじゃ? あ、あれか! お主の刀の鞘に時々、馬糞詰めてた事を怒っとるんじゃな?」

「き、貴様!! そんな事していたのか!?

通りで刀を抜くとたまに臭い時があったのか! そんな事をする目的はなんなんだ!?」

「いやぁ、暇じゃったからのぉ、悪戯……的な?」


先程までの焦っているかのような態度とは打って変わって、ずけずけとした物言いで言い放つ信長。

その言葉は光秀をプッツンさせるのには充分過ぎた。


「殺す……!!」

「じゃから悪かったって! 話をーーー」


その時、轟音と共に光秀と信長の頭上へと天井が崩れ落ちてきた。

既に柱に火が回っていたからであろう。

そのまま2人は瓦礫の下敷きとなり、本能寺は燃え崩れた。



ーーーーー


…………


吾輩は死んだのか……?


「いや! 死んでたまるか! 天下統一は目の前にーーー」


信長が目覚めると辺りは真っ白な空間になっていた。


「やあやあ、異世界へようこそ〜」


目の前には髪の長い不思議な子供。


こうして信長の異世界生活が始まった。

不死身のチート能力。「悠久の覇王」をひっさげて。


ーーーーー



「といった感じじゃな。じゃから吾輩は魔王ナーガじゃし、織田信長でもある」

「なるほど、神様の能力のお陰でアリスの能力でも復活できたのか!」

「でも何故そんな、かわいらしい幼女の姿に?」

「そういえば、制限とかで転生後は幼女の姿になるだのなんだの……」

「神グッジョブ!」


ナーガのこれまでの経緯を聞き、ナツキとヤマトはナーガの言う事を信じたようだ。

しかし、この男は違った。


「俺は信じねえぞ! だいたい、なんでナーガなんて名前なんだよ」

「そ、それはじゃな……」


ナーガが恥ずかしそうな顔をして俯いた。


「……たんじゃ」

「あん?」

「じゃから! 覚え間違われたんじゃよ! 魔王就任の時に!

吾輩はちゃんと織田信長と名乗ったのに、民衆がナーガナーガと……」

「く、くだらねえ……」

「くだらないとはなんじゃ!」

「まあ、織田信長なんて名前、この世界には聞き慣れないだろうしな」


涙目になっていたナーガは目をゴシゴシと拭き、

再び3人の前に踏ん反り返った。


「ブハハハ!! しかし初めて、ちーと能力?

とやらを使う事になったが、まさか不死身の能力とはの! 通りで寿命が長いと思っとったわ!

じゃが、もう油断はせんぞ! お主らは吾輩を怒らせた!!」


咄嗟に構えるナツキ。

アリスとヤマトは一応遠くへ避難した。


「なんで俺が逃げなきゃなんねえんだよ」

「仕方ないだろう、巻き込まれては元も子もない

それに奴は不死身だぞ」

「ぐぬぬ……」


「私、子供は殴りたくないんだけど!? 」

「子供扱いせんでよい。最初からフルパワーじゃ!

ほれ、喰らうがよいわ! ……あれ?」


防御しせいをとり目を閉じるナツキ。

が、何も起こる事はなかった。


「ななな、なんじゃ!? 魔法が打てん!

馬鹿な、吾輩は歴代最強最高の魔力を持つ魔王のはず……!」


ナーガは魔法を打ち出す様な構えをとり、腕を何度も振るうが何も起きない。


「どうしたの?」

「魔法が打てんのじゃ!

あー! 思い出した! 制限はもう1つあって、【転生後は経験値を持ち越せずで成長も出来ない】とか言っておったぞ!

って事は吾輩これからこの非力なままずっと……?」


頭を掻きむしったり、絶望に打ち震えたり

1人で忙しく騒ぐナーガ。

アリスとヤマトも何事かと集まってきた。


「この子魔法が使えなくなってるらしいの」

「ほう、じゃあこいつはただのクソガキって事だな」


ナーガの頭を鷲掴みにするアリス。


「わ、吾輩はお主らより500は歳上じゃぞ! 歳上は労らんかい!」

「新ジャンル、ロリジジィということか……!

俺は気に入ったぞおおおお!!」


ヤマトが再びナツキに(はた)かれる。


「ンギモッチィィ!!」


ビクンビクンと打ち震えているヤマトは

いないものと扱ってナーガはアリスの前に立った。


「なあ、吾輩をお主らの旅とやらに同行させてはくれんかの?」

「やだね」


アリスはナーガの申し出を一蹴。

背を向け立ち去ろうとする。


「ふん、知らぬのか? 魔王からは逃げられんぞ」

「くっ……!」


しかし回り込まれた!


「おい、そこの小娘」

「小娘やめい! 私にはナツキって名前があるの!」

「うむ、小娘。吾輩は少しなら他人の思考が読む事が出来てな? 吾輩の同行を認めてくれるなら、お主の悩みを解決してやろう」

「私の悩み?」

「おーい! ガルアム! すぐに来い!」


ナーガが手をパンパンと叩くと、一瞬で何処からか、ダンディな執事姿の魔族のが現れた。

恐らくはナーガの側近の1人だろう。


「お呼びですか、ナーガ様」

「吾輩のこの姿に何も突っ込まないのか……まあよい、かくかくしかじかーーー」

「ふむふむ、かしこまりました」


2人がコソコソ話を終えるとガルアムは一瞬で何処かへ行き、また一瞬で戻ってきた。


「ナツキ様これを」

「え、指輪? いいい、いきなりこんな事されても!? けけけ、結婚とかまだ早いというか何というか……」

「こちらには術式が埋め込まれており、大気中の魔力を自動で吸収し、ナツキ様の股間部分に空魔法、次元裂(ディス・ディメンション)を常に発動してくれます」


ガルアムはナツキに指輪をはめるとすぐにいなくなった。


「ようは厠が常にそこにあるという感じじゃな。

これでお主の悩みも晴れて解決ーーー」

「うぇ……えぐ、ぐす」


ナーガがナツキの方を向くとナツキは顔をぐちゃぐちゃにして泣いていた。


これで、やっと汚れヒロイン卒業だ……!


「ようこそナーガちゃん! 一緒に旅、楽しもうね!」

「本当かの! ほれ、小僧も早く認めんかい!」

「けっ、勝手にすればー」

「俺は大賛成だぞ!」

「ブハハハ! よろしく頼むぞ!」


新たな仲間、現魔王のナーガが3人に同行する事となった。


ーーーーー


「そういえばナツキ、変身解いた方がいいんじゃないか?」


魔王城から出る途中、思い出したかのように

ヤマトはナツキに告げた。


「あ、ヤバイ! そうだった!」


本人が忘れているのもおかしな事だが……

すぐに変身を解除するナツキ、だが変身解除中に気づく。


しまったぁぁぁ!! こいつらから離れるの忘れてたぁぁぁぁ!!


無情にもそのまま『百獣の巫女』は解除されてしまう。

ナツキの地獄タイム、スタート。


「ウホウホ」


「プギャーハハハハハハ!!!」

「これは酷い」

「わ、吾輩はこんな奴らにやられてしまったのか……!?」


「ウホホッウホォォォ」


ヒロインならぬ悲愴(ひそう)インのナツキであった。



因みに、ナツキがカメレオンの副作用で虫を食べようとした時は3人で全力で阻止した。




第3部へ続く。



ーーーーーーーーー


【魔王ナーガ (織田信長)】


第99代目魔王。

転生前は鬼のような大男だったが、現在は華奢な幼女。

銀髪でアホ毛が沢山ある。白い肌と八重歯が特徴的。

好奇心が旺盛でいつも落ち着きがない。

物知りだが、圧倒的アホ。


類稀なる戦闘センスで、チート能力を使わずして魔国の王となった。

「第六天魔王」という呼び名を実は大変気に入っており、魔王になった理由はそれ。


所持能力は自身不滅の「悠久の覇王」

制限は「転生後、経験値の持ち越しは出来ず成長する事もない。ついでに神の気まぐれで転生後の姿は幼女固定」



第2部終了です!

少しは物語も動いたかな?


ちなみに僕はナーガが早く登場させたくてたまりませんでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ