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今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第2部 旅は道連れと言いますし。
19/27

19話 そうだ、異世界で情報収集しよう–ナツキの場合–後編

この世界は

人界(じんかい)

魔界(まかい)

深魔界(しんまかい)

天界(てんかい)

未界(みかい)

の5つに分けられる。


今回ナツキ達が訪れたのはそのうち魔界。


魔界は主に魔族が住む領域。

魔力濃度が人界よりも高い為、比較的魔物も多く、強い。

土壌が痩せており作物などは育ち辛い。が、希少な鉱物などがたくさん採れる。

人族はその鉱物を求め、魔族に戦争をしかけている。

より、強力な魔物が存在する深魔界との境界には魔国があり、常に魔物の進入を阻止し治安を守っている。


魔界にも色々地方があり、ここはスレンバ地方と呼ばれている。


ーーーーー



ズガーン!!バァーン!!



「おりゃああああ!!次いいいい!!!」


ナツキは只今、絶賛戦闘中であった。


お相手はトレント、インプ、コボルドの集団、

異種混合デスマッチ。

インプ以外はランクD、魔法を使うインプのみランクC下位に該当する魔物だ。

先程までいた森とはやはりレベルが違う。


今回、ナツキが『百獣の巫女』で変身したのは(ひょう)。中でも雪豹(ゆきひょう)である。

あまり知られていないが、雪豹の脚力は凄まじく、垂直で9メートル跳んだとの記録もある。

キックを得意とするナツキに相性抜群だ。


それに雪豹の白い耳と尻尾はナツキの白いアーマーと相まって、とても可愛らしい。それもナツキが雪豹を選んだ1つの理由だ。

兎でも見た目は良かった。が、ナツキは今後、雪豹メインで変身する事に決めた。

それには理由(わけ)がある。昨晩の事である。



********



ナツキとムータは戦闘を終え、一息ついている。


「ちょっとムータ君。私これから見られたくない事になっちゃうから少し離れててくれる?」

「? はい」


さて、どうしたものか。

今回の変身時間は7、8分って所かな?

意識を失って勝手に移動されても困るしなー。


そう思いナツキは近くにあった木と自分の足をロープで繋いだ。


「さて、変身解除するかな」


そこでナツキはある事を思い出す。


待てよ、私は何に変身した? 兎だ。

兎といえば……可愛い! モフモフ!

ぴょんぴょん跳ねる! 万年発情期!

万 年 発 情 期!!!! うわああしまったああああ!!!


ナツキは変身解除を中断。

足だけでなく全身をロープで木にぐるぐる巻きにして、改めて変身を解除した。


10分後……


「ナツキさん? そろそろ平気でーーーどうしたんですか!?」

「ああ、ムータ君。これ解いてくれる?」


ムータにロープを解いて貰い、

立ち上がった時、何かに気づくナツキ。



……あ、パンツ変えなきゃ。


ナツキは金輪際、兎の力は借りない事にした。



********



雪豹ちゃん可愛いよぉ……兎なんてぺっぺっ!

ナツキは雪豹愛好家になっていた。


「ナツキさん! 来ますよ!」

「うわ!? 火の玉!?」


馬鹿な事を考えいたナツキに火球が掠める。


トレントは木の魔物である。外殻が硬く、生半可な武器では傷もつかない。

コボルドは魔物にしてはかなり知性がある。

インプは脆いが、低級の魔法を使ってくる。

いずれも厄介な魔物達だ。


トレントは動きが遅いので後回し。

コボルドもまだこちらの様子を見ているだけだ。大した脅威ではない。

鬱陶しい魔法を遠くから打ってくる、あいつをまずは倒そう。


ナツキはまずインプを仕留める事にした。

平行飛びで15メートル飛ぶ事もある雪豹。

一瞬で距離は詰まる。

インプが咄嗟に魔法で火球を放つ。


「あちっ!」


が、ナツキは素手で弾いた。


「火傷しちゃっただろ!」


ドゴッ!!


「ギギャッアッ……!!」


ナツキの前蹴りが炸裂。

インプは遥か後方に吹き飛び生き絶えた。


続けてナツキはトレントに狙いを定める。

猛ダッシュで近づき、得意の後ろ飛び蹴りを放った。

動きの遅いトレントは為す術もなく体を貫かれ、上下に真っ二つになった。

その一部始終を見ていたコボルドは敵わない事が分かったのか、一目散に逃げ出した。


「ふぅ……。ムータ君がトレントは硬いって言うから思い切り蹴ったけど、思ったより脆いね」

「いや、凄く硬いですよ。ナツキさんが異常なんですよきっと……」


そんなこんなで魔物を倒して進む2人。

いつの間にやら辺りは暗くなり、ミッション二泊目が訪れた。


「今日はこの辺で野営しとこう」

「はい、じゃあまた火を焚きますね!」

「ちょっと待って!」


薪木を集め火を焚こうとしたムータを遮るナツキ。


「私にもそのー、魔法、教えてくれないかな?」


どうやらナツキは魔法を教えて貰いたかったようだ。


「もちろんです! 魔法が苦手な僕が上手く教えられるか分かりませんが……」


ナツキはムータに魔法の基礎を教わる事となった。


魔法の属性は主に

・熱・水・空・気・闇・聖

に分けられる。


熱属性は熱を操る魔法で高温、低温も操れる。低温の方が難度が高い。


水属性はそのまま、水を発生、操る事ができ、上手く使えば乾燥させる事も出来る。


空属性は空気を操り、風を起こしたり空気を振動させ音を出したりする事も出来る。


気属性は人体の潜在能力を引き出す事ができる。身体能力強化魔法等もこれにあたる。


闇属性は目くらましや影を操るなどといった奇襲に適したものが多い。扱えるものが少ない。


聖属性は扱えるものはごく僅かで、光や霊獣を操る事ができる。


「ーーーーです! 例えば僕が使った煉獄火炎(アビスフレイム)は熱属性に当たります」

「ふーん、霊獣ってのは?」

「すみません、僕もそこまでは分からなくて……」

「へぇ、でもまだ子供なのによく知ってるねぇ!」


よしよし、とムータの頭を撫でるナツキ。


「むぅ、魔族は子供の頃から戦闘を教わりますからね。それに僕は子供じゃないです!」

「はいはい、偉い偉い」


子供を茶化すナツキ。実に大人気ない。


「コホン! ではまず、低級魔法の火球(ファイアボール)を練習してみましょう。インプが放ってた魔法ですね」

「はーい!」

「いきますよ!」


ムータは詠唱を始めた。


「集え、火の妖精達よ。汝の持つその熱で対象を焼き焦がせ! 火球(ファイアボール)!」


するとムータの指先から消しゴムくらいの炎がポトッと落ちた。


「こ、これが火球(ファイアボール)……」

「僕は魔力量が少ない種族だからこうなんです! ナツキさんが出来るようになればもっと大きくて勢いもありますよ! さあ、 やってみて下さい」

「やってみてって言われても……」

「体内の魔力をこう、ドバァって感じです!」


ええ、んなアバウトな……。

原理は多分、体内の魔力で空気中の魔力を変換して化学反応を起こしてる、みたいな感じかな?

うん、とりあえずやってみよう!


「えっとなんだっけ? 集えー火の妖精の皆さん、熱があるー、うんたらかんたら……ええい! 火球(ファイアボール)


ナツキが詠唱? を終えると掌から直径1メートル程の大きな火球が勢い良く放出された。


ドゴォーン!!!


火球はその勢いを保ったまま前方の大岩に着弾し曝発。

大岩は粉々に砕け散った。


「「……」」


2人してポカンと口を開けるナツキとムータ。


「「す……」」


「すごいっ! 私、魔法使えたよ!?」


「すごいです! 今のは中級魔法、いやそれ以上の威力でしたよ!? しかも詠唱適当だし!」


何度も言うがナツキはスペックは高い。

ナツキの考えた魔法のプロセスはほぼ当たっており、

最適かつ最高の出力で魔法を発動する事ができた。


「「火球(ファイアボール)♫、火球(ファイアボール)♫」」


ドゴォーン!!ドゴォーン!!


「「火球(ファイアボール)♫、火球(ファイアボール)♫」」


ドゴォーン!!ドゴォーン!!


ナツキは魔法をそこら中にバンバン放ち、2人でキャッキャッと大いにはしゃいだ。


「ヴォオオオオオオ!!!!」


「「!?」」


だがそれは、よりによって起こしてはならないモノを起こしてしまったようだ。

ズシン、ズシンと地響きを伴う凄まじい足音を立ててそれはすぐそばまで近づいていた。


「「でか!!!」」


スレンバジャイアント。体長実に6メートル。巨大な棍棒を武器とする、この地を統べるAランクの魔物だ。


「ムータ君! 下がってて!」


ナツキは一気に戦闘体制に入った。

もちろん雪豹モードである。


「ハァッ!!!」


スレンバジャイアントの棍棒攻撃を躱し、飛び蹴りを炸裂させるも相手は大したダメージを受けてない。

大きさの差故に距離が遠すぎるのだ。


全然効いて無さそうだ!!

そうだ! この魔物はだいぶタフそうだしアレを試してもいいかな?


ナツキはスレンバジャイアントから距離をとると変身を解除した。数秒程しか変身してなかったのですぐに正気に戻った。


すぐにナツキは再度変身する。一見、先程と同じ雪豹のようだが腕の部分がさっきと違い、大きく毛深くなっていた。


「よし、成功だ! やっぱ物は試しだね……って腕キモ!!

ゴリラの力を借りると腕に変化が出るのかよ!」


ナツキが試したかった事。それは二重の変身だ。

彼女は今、ゴリラの腕力と雪豹の脚力のいいところ取りをしている。

パンチとは、地面を蹴る力を拳に伝える事で威力が跳ね上がるのだ


「次の一撃で決めるからね」


ナツキは次の瞬間、目にも止まらぬ速さでスレンバジャイアントの鳩尾に、ジャンピングアッパーを打ち込んだ。



「グォアアッ…!!」


が、その拳は鋭過ぎた。ナツキは拳が突き刺さり抜けなくなってしまった。


「ちょちょちょ……!!」


そのままスレンバジャイアントは崩れ落ちた。

下敷きになってしまうナツキ。


「な、ナツキさん!?」


「ムータ君! 今から魔法で脱出するから、ここから出来る限り離れて!」


ムータが駆け寄るとナツキの声が聞こえた。

どうやら無事なようだ。ムータは言われた通りにする。


煉獄火炎(アビスフレイム)!」


ナツキが唱えたのは上級魔法、煉獄火炎(アビスフレイム)

瞬間、スレンバジャイアントは爆散、どころか余りに余った炎は辺りを火の海に変えた。



「……やりすぎたかな」


「やりすぎです」


2人は消火を終えた後、場所を変えてそのまま野営した。


ーーーーー翌日。



「ムータ!!」


「お母さん!!」


どうやらムータの村はすぐそこだったらしく、昨日のボヤ騒ぎで様子を見にきた村の者と合流でき、

スムーズに村まで行く事が出来た。

いままでの苦労はなんだったのか。


「本当にありがとうございます。なんとお礼を言っていいものか……、後1ヶ月くらい帰ってこなかったらどうしようかと……」


「いえいえ、そんなとんでもない」


いや、1ヶ月て! 逞し過ぎるよ魔族!!


「それじゃ、私はこれで。じゃあね、ムータ君。

これからは親に心配かけちゃ駄目だよ?」


「はい! ありがとうナツキさん! 僕、これからナツキさんみたいに強くなるよ!」


「おお、それは楽しみだ! その時は私のお婿さんにでもなって貰おうかな!」


ムータは赤面した。言ったナツキも何故か赤面した。



ムータの村を後にしたナツキ。

帰りは(はやぶさ)モードに変身し、1時間程でミナセトに到着した。


到着したナツキは物陰で自身を縛り付け変身を解いた。



ーーーーー1時間後。



「ハッ!!夢か……」


ではなくて。

いやー、それにしてもすごく大変な3日間だったなあ。

なによりこの私が人の為になにかするなんて……。

魔法だって使えるようになったし!

あー! 早く2人に会いたいなあ!!



ナツキは宿屋への道を歩きながらそんな事を考えていた。


「ただいま!! アリス、ヤマト君!!

聞いてよ、実はねーーー」



なんだか成長出来た気がしたナツキであった。



「って誰もいないし!?!?」




ナツキがムータの村から帰る際、森の上空を飛んでる姿が冒険者達に目撃され、「ミナセトの森には天使がいる」という都市伝説が出来たのはまた別のお話。


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