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今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第2部 旅は道連れと言いますし。
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18話 そうだ、異世界で情報収集しよう–ナツキの場合–中編


「あれ? アリスいないや。もう起きて出かけちゃったのかな?」


ナツキは昨晩泊まった宿屋に来ていた。

下にムータを待たせている。


「魔界かー。どれくらいかかるか分かんないし

アレ、用意しとかないとね」


ナツキは昨日の買い物で下着を購入したのだが、

その際、近くにあった雑貨商で、吸水性のあるコットンのような植物と、防臭効果のある植物を購入した。

それらを組み合わせ、ナツキは簡易的なオムツを作っていた。

アレとはオムツの事であった。


「途中は魔物も出るだろうし、何回能力使うか分かんないもんね」


用途はお察し。


「いや、ヒロインがいざという時オムツ履いてるて! ねえよ! 多い日も安心。ってバカやろう!」


ナツキは虚空に怒りをぶちまけた。



「お待たせムータ、さあ行こうか」

「はい、ナツキさん!」


2人は街を出た。


「ところでお家がどこかはわかるの?」

「いえ、でもあの森は通って来ました。」


ムータは近くにあった森を指差す。

その森は最初に3人がいた、3人が出会ったあの森だった。


「あの森にまた戻るのか。森を抜けるともう魔界なの?」

「そのはずです」

「そこからの道は覚えてる?」

「……すみません、わからないです」

「うーん、そっかあ」


わからないときたか。


どうしよう、ヒントがないと辿り着きようがないぞ。

でも森を抜ければ道を思い出すかもしれないし、とりあえず前に進もう!


「そういえば迷子になってどれくらい経つの?」

「今日で丸2日ですね」

「丸2日!?」


今までよく無事だったな! 親御さん心配してるよきっと!


「す、すごいねムータ君。でも安心して!

お姉さんが必ずお家に送ってあげるからね!」

「はい!」

「じゃあ、しゅっぱーつ!」

「おー!」


2人は森へと入っていった。


ミナセトの隣にある森は前にもあったが、

魔界に隣接している。

比較的魔物は多いが強くはない。

が、弱くても魔物は魔物。基本、人を襲う。

しかし、ナツキとムータの2人は全く魔物に襲われる事はなかった。


おかしいな、街に行くときはそれなりに魔物に襲われたのに。

全部アリスが能力でやっつけてたけど。

※アリスは能力で焼きそばパンにした魔物は

全て、食べるか遠くへぶん投げて元に戻しています。


ずいぶん歩いた2人、

辺りはもう暗くなりそうだ。


「やっぱり1日じゃ着かないか。

仕方ない、今日はここで野営しよう」

「夜は魔物の動きが活発になりますから

火を焚いておきましょう」

「え、そうなの? でも私、火を起こす道具持ってきてないや……」

「え、 大丈夫ですよ?」


するとムータは薪木を拾い集めた。

ナツキも何となく手伝う。


「これくらいでいいかな」

「これをどうするの? あ、わかった!

サバイバルでよくある、木の棒をこう……シュバッてやるやつだ!」

「なんの事だかわからないですが……ナツキさんは魔法を使え無いのですか?」

「え!? 魔法!? ムータ君使えるの!?」

「はい、少しだけですが」


そう言うとムータは目を閉じ

両手を薪木に向け、呪文を唱え出した。


「我、求めるは灼熱の裁き! 全てを灰にせし地獄の業火よ! 敵を討ち滅ぼせ!!」


ええええ!? ちょ!!!!

それ火起こしごときに使うようなやつじゃない!!

辺り一帯燃やし尽くしちゃうやつ!


「む、ムータ君!? 待っーーー」

煉獄火炎(アビスフレイム)!!」

「きゃああああ!!!!」


死んだ。ナツキはそう思った。が、


ムータの手から発射されたのは握り拳台の小さめの火球だった。

勢いもなく、効果音を付けるなら「ぺっ」といったところか。

まあ、結果的には火は付いた。


「いやー、僕魔法は本当に苦手で……

今の上級魔法でもこれくらいの威力が精一杯なんですよー。あれ? ナツキさん?」

「……」


ナツキは頭を抑えてうずくまっていた。


「もお! 驚いちゃったじゃない!」

「す、すみません! 驚かすつもりなんて……」


半泣きになりながら、子供にガチ切れするナツキ。


ーーーー


2人は明日に備え食事をとることにした。

ミナセトで買った干し肉やパンを焼いて食べている。


「僕は哺乳獣型の魔族だから、魔法が苦手って事ですね」

「なるほどなるほど」


魔族も哺乳獣型、鳥獣型、爬虫獣型などにいくつか分類分けできる。

中でも哺乳獣型の魔族は体力、筋力が高い傾向があるが、一方で魔力が低く、魔法が苦手。

反対に爬虫獣型の魔族は魔力が高く、魔法が得意。


ムータの話曰く、そうなっているらしい。


ちなみに他にも悪魔型の魔族などもいるが、

絶対数が極端に少なく情報が少ないという。


「ふーん、魔族も色々いるんだね。

……って、ムータ君? 私のお肉食べたでしょ」


見ると焼いていたはずのナツキの干し肉が無くなっていた。


「たくさん食べるのは良い事だけど、

人のもの盗むのは頂けないなあ」

「え! ぼ、僕じゃないてますよぉ!」

「ガウガウ」

「ほら、魔物もそう言ってるじゃん。……って魔物おおお!?」


流石に森の中で美味しい匂いがすれば火があろうと魔物も寄ってくるだろう。

いつの間にかナツキ達は数匹の狼型の魔物、

【ブラッドコヨーテ】に囲まれていた。


「ムータ君、下がってて!」

「は、はい!」


ブラッドコヨーテは相手の血を吸う狼型の魔物だ。

常に集団で行動し、連携をとって素早い動きで相手をジリジリと追い詰め、仕留める。

一匹は大した事ないが、集団のブラッドコヨーテの脅威レベルは冒険者ギルドでランクCと設定されている。

ランクCは見習い冒険者十数人、中級冒険者数人で仕留められるレベルだ。

この森では最も厄介な魔物だろう。

ちなみにゴブリンはランクEで見習い冒険者1人で何とかなるレベル。


素早い動きと的確な連携でナツキ達を翻弄するブラッドコヨーテ。

その動きに対応する為ナツキが『百獣の巫女』の能力で変身したのは(うさぎ)であった。


右から左から上から下から、

四方八方からナツキに襲いかかるブラッドコヨーテ。

しかし、攻撃は全て躱される。


ふん! 兎の聴力を持ってすれば相手の位置の把握なんて簡単だもんね!


攻撃を躱され続けるイラついたのか、ブラッドコヨーテの一匹が連携から外れ、真正面からナツキに飛びかかる。

が、待ってましたと言わんばかりにナツキはキレイな回し蹴りを浴びせた。


バゴォォォーン!!!


ブラッドコヨーテは爆散した。


あれ? 思ったより強かった、どころじゃないぞ?


それもそのはず。兎は自分の脚力で骨折する程の脚力を持っている。

ナツキは上手く筋肉を扱えるので骨折の心配はないが、その脚力で回し蹴りを使えばその威力は計り知れない。


残りのブラッドコヨーテはナツキに脅威を感じたのか、連携を正して再度ナツキに襲いかかるも、

ナツキはこの魔物は対した事ないと判断したのか一瞬で片付けた。

気持ち悪いので爆散しない程度に。


「初めての戦闘だったけど、あんまり大した事なかったな。ムータ君、もう出てきて大丈夫だよ」

「な、ナツキさんすごいです!! やっぱり魔族ですよね!?」

「違うってば……!? ムータ君危ない!!」


一瞬の油断が命取りとなる。

ブラッドコヨーテは一匹だけ物陰に隠れており、

出てきたムータを狙って襲いかかった。


まずい、間に合わない!

なにが責任を持って送るだ、私の馬鹿!!


「おい! お前の相手は私だ!!」


ナツキが叫ぶがブラッドコヨーテが見向くはずもない。

牙を突き立てムータに飛びかかった。



「はっ!!!!」

「キャイン!!」



……なにが起こったのかナツキは分からなかった。

ありのまま起こったことを説明すると、

ブラッドコヨーテはムータに襲いかかったが、

ムータにぶん殴られて怯んで逃げた。


「魔族は小さい頃から狩りとかしますからね

あれ一匹くらいなら1人で倒せますよ」

「そ、そう……」


ブラッドコヨーテは一匹でもランクD下位程度には強い。下級冒険者でやっと勝てる程度だ。

魔物は相手の強さ、特に同種に対して敏感である。

つまり、この森でやたら襲われなかったのは魔族のムータの強さ故だった。



この子、1人で帰れんじゃね?

私の存在意義って一体……。


ナツキはそう思ったが、大人なので言わないでおいた。


ーーーーー


夜が明け、行動を開始した2人。

しばらく歩くと森の出口が見えた。


「やあっと抜けたー!」

「あ、ここ見覚えありますよナツキさん!」



荒野の様な景色、何となく霧のかかった空気、遠目から見てもかなり数の多い魔物。



森を抜けるとそこは魔界だった。

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