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今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第2部 旅は道連れと言いますし。
16/27

16話 そうだ、異世界で情報収集しよう–アリスの場合–後編

ーーーーーーー決戦当日。



いつもと違った騒がしさがこの日のスラムにはあった。


「きょきょをきょうちて、あちょこはああちて」

「「「イエス、ボス」」」

(((なに言ってんのかわかんねぇ……)))


なにやら滑舌の異常に悪い太った男と、

数人の屈強な男達がいた。

いずれもスラムには似つかわしくない格好をしている。


「あの豚がブチョンチョか」

「へい、そうです」


ブチョンチョはいかにも下衆そうな、

まんま豚みたいなやつだった。

周りに20人程の武装したボディガードが付いている。

アリスとゴツィータが物陰から様子を見ていた。

サングラの姿は見えない。


ブチョンチョは何か筒の様なものを持っていた。


「ああっ! あれです旦那! きっとあの中に

権利書が入ってるぜえ!!」

「バカかてめえは!!! そんな大声だして

バレたらどうすんじゃい!!」


権利書の入っているであろう筒を見つけたゴツィータが大声で騒ぎ、

アリスがさらに大声で怒鳴り立てた。


「にゃんぢゃ? きしゃまりゃは」

【なんだ? 貴様らは】


「「で、でたー!!!」」


案の定、居場所はバレてブチョンチョ達に詰め寄られたアリス達。


「あやちいやちゅらでゃな、おみゃえたち!ふぃっとりゃえろ!!」

【怪しい奴らだな、お前達! ひっ捕らえろ!】

「「「イエス、ボス」」」

(((とりあえず捕らえればいいかな?)))



「バレちゃしょうがねえ。作戦決行だゴツィータ!」

「へい! 旦那!」


そう言ったアリス達はブチョンチョ達に背を向け

全力で逃げた。


アリスの作戦第1《逃げる》


「不利な状況なら逃げるのも作戦じゃボケェ!」


「にゃにしとぅる! おうんぢゃ!」

【何しておる! 追うんだ!】

「「「イエス、ボス」」」

(((あ、今のはちょっと分かったかも)))


後を追うボディガード達。

ブチョンチョも追うが、体型から分かるように足が遅い。


ーーーーー


「どうやらここまでだな貴様ら」

「観念するんだな」


「ちっ」


スラムの奥地、廃墟の壁に囲まれ追い詰められたアリス。

目の前には10人程のボディガード達。


「ん? ずいぶん減ってないか?」

「他の奴らはどうした!」


「くっくっく……」


ーーーーー


「ゼハァ……! ゼハァ……!」


ブチョンチョは必死にアリス達追っていた。


恐らく1人は格好からしてスラムの人間だ。

奴らめ俺がスラムに下見に来ることを事前に知って、

権利書を強奪するつもりだな。

そうはさせるか!


「!?……おみゃえりゃ! どうちたんぢゃ!」

【お前ら! どうしたんだ!】


「ぼ、ボス……やられました……」


ブチョンチョが見つけたのは落とし穴にハマった

ボディガード達だった。

しかも穴の底にはとりもちの様なものが仕掛けられて

身動きが取れないようだ。


アリスの作戦第2《落とし穴で敵戦力を削る》


「あにょびんびょうにんどぅもぎゃあ……!!」

【あの貧乏人どもがあ……!!】


絶対に奴隷にしてやる……!!


ーーーーー



「ゲヒャヒャヒャ!! 気づかねえでやんの!

ずいぶん減っちまったなお前ら! バーカバーカ!!」

「旦那! 煽りすぎです!」


指差し涙を流しながら馬鹿笑いし、

ボディガード達を煽るアリス。


「く、クソガキめ……! しかし追い詰められたのには変わらんぞ!」

「あのよ、ただ俺たちが逃げてただけ、

そんな訳ないでしょうが。……野郎どもやっちまえ!!」


アリスの掛け声と共に廃墟の窓からボディガードに向かって石が大量に投げつけられた。


「グフォッ」「ギャッ」「ぐあッ」


石を投げてたのはサングラ

と、スラムの子供達だった。


アリスの作戦第3《有利な場所に誘い込む》


「使える全力は全て使うのが鉄則!

子供でも安全な場所からならいくらでも攻撃できるからな!」


残り4人になったボディガード達。

アリスがボキボキと指を鳴らし躙り寄る。

ボディガード達はたじろいだ。


「そして作戦第4、《残った奴らを俺がブチのめす》と…」


「みゃてえ!!!」

【待てえ!!!】


そこにようやく現れたブチョンチョ。

さらに数人の部下を連れてやってきた。

だがどうやら先程のボディガードとはタイプが違う。


「何人連れてきても同じだぜ」

「おみゃえたちはいきてきゃえしゃん……!

やってしみゃうぇ!」

【お前達は生きて返さん……! やってしまえ!】


ブチョンチョの掛け声と共になにやらブツブツ唱える部下達。


「「「……衝撃波(ソニックブーム)!」」」


唱えが終わったと同時に、数発の視認できる程の衝撃派がアリスに襲い掛かってきた。


な!? これは以前喰らったぞ!

そう魔法だ! やべえこの世界に魔法があるの忘れてた……!


やられるっ!!

そう思ったアリスは着弾直前、

咄嗟に手を前に突き出した。


「だ、旦那あ!!! ……あれ?」


着弾したかに思えたが何も起きない。


「ん? ……何にも来ないぞ?」


気になったアリスが不意に足元を見ると

焼きそばパンが幾つか落ちていた。


にやぁ〜。


「ボコボコタイムのお時間でーっす☆」


ドカッ! バキッ! ガスッ! バゴーン!!


アリスは無双状態であった。

ボディガードを殴る蹴る、魔法は全て無効化。

サングラ達も援護してくれていた。


しかし、数が多すぎる。落とし穴にハマった連中も脱出してきたようだ。

アリスも何発か攻撃を食らってしまった。


「あー! くそっ! キリがねえ!!

おい! さっさとアレ奪ってこい!」

「で、でも敵が多すぎて近づけませんよお!!

……!? だ、旦那!! あ、あれ……!!」

「あん?」


グオオオオオ……!!!


それは不気味な唸り声と共に現れた。


大きなトカゲのような化け物だ。


「にゃちゃちゃちゃちゃ!! しょにょきょはおれのぺっちょ、ふぃふきときゃげのしゃみーちゃんぢゃ!

しゃみーちゃん! そいつらをもやちてーーー」

【がはははは!! その子は俺のペットの、火吹きトカゲのサミーちゃんだ! サミーちゃん! そいつらを燃やしてーーー】


言いかけた所でアリスが口を挟んだ。


「そうそう! これこれ! こういうの待ってたのよぉ! 人間を焼きそばパンにするのなんか気持ち悪くてよ!」


そう言うとアリスはサミーちゃんに近づき、

『絶対神罰』を発動。

一瞬で焼きそばパンに変えてしまった。


「「「…………」」」


この日一番の静寂に包まれるスラム。


「「「ば、化け物だああああ!!!!」」」


この日一番の絶叫と共にブチョンチョ達は権利書を置いて逃げていった。


「がははのは! 俺様の強さに恐れをなしたか!

おうお前らよくやったぞ、おつかれーーー」


アリスが振り返るとゴツィータ、サングラ達も逃げていた。


ええ……それは流石の僕ちんも傷つくよ……。



ーーーーーーー



アリスは1人トボトボと帰路に着いていた。


ちっ、タダ働きしちまったぜ。

まあ俺の『絶対神罰』が魔法にも適用されると分かったのでチャラとするか。


「だ、旦那! 待ってくだせえ!」

「待ってくだせえ!」


スラムを出る直前、アリスは呼び止められた。

そこにいたのはゴツィータ、サングラ、スラムの子供達だった。


「さっきは逃げてすみませんでした!」

「「「すみませんでした!」」」

「けっ、礼も言わずに逃げるとは元不良の俺でも流石にどうかと思うぜ?」

「本当にすみません……旦那のおかげで権利書も奪えましたし、謝りついでに

助けて頂いたお礼をと思いまして……」


そういって差し出した小袋の中には

銀貨が十数枚入ってあった。

なけなしの金を掻き集めて来たのだろう。


「いるか! そんなはした金!」

「で、でも!」

「そんな事よりよぉ」


すると、アリスはスラムの隅に捨てられてある瓦礫やゴミ、ガラクタに片っ端から触れていった。


「それ食ってスタミナつけてしっかり働け!

この愚民どもめ!」

「だ、旦那ぁ……!!」


アリスはそれら全てを大量の焼きそばパンに変え、

スラムの住人達に与えた。


「本当にありがとうございやした!」

「「「ありがとうございやした!」」」


ふっ、たまにはいい事してみるもんだ。


アリスはハードボイルドに立ち去りながらそう思った。


こうしてアリスの騒々しい3日間は幕をとじーーー



「あ、ごめん。聞き忘れてたわ。

Dr.ハックって奴について教えてくんない?」

「へ、へい。もちろんです」


ハードボイルドはまだ早いアリスであった。



ーーーー宿屋。


「あ、おかえりーアリス。遅かったね」

「なんか服も汚れているな、大丈夫か?」


宿屋に着くとこの3日間どこにいたのか。

しばらく見る事もなかったナツキ、ヤマトがいた。


なんか疲れたなこの数日。

やっぱこいつらがいると安心するな。


アリスはなんだか感慨深い気持ちになっていた。


それよりもこいつらはちゃんと情報集めてきたのかぁ?

俺にはとっておきのがあるぜ。

……きっと驚くだろうなぁ!



「くっくっく……聞いて驚け!

俺様が最強の情報を手に入れてきてやったぜ!!」




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