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今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第2部 旅は道連れと言いますし。
15/27

15話 そうだ、異世界で情報収集しよう–アリスの場合–中編

ゴツィータ達との一件のあと、アリスは一度宿屋に戻った。


「あれ? ナツキもヤマトもいねえのか」


まあ都合いいか。

面倒ごとに巻き込まれたのがバレないし。

あいつらならきっと危険もないだろう。

それにまぁ、ヤマトはともかくナツキは嗅覚でいつでも俺達の場所も分かるだろうしな。


この日、アリスは1人で宿屋にて夜を明かした。


ーーーー翌日。



「俺様をこんな汚ねえ所に呼び出しやがって……」

「お、旦那! おはようございやす!」

「ございやす!」


スラム街のとあるボロ小屋、そこで3人は

ボロ椅子に腰掛け、テーブルを真ん中に置き、

作戦会議を始めた。


「んで、俺は何すればいいの」

「へい、旦那には奴の周りのボディガード達を倒して頂きたいんです」

「これが作戦の内容です」

「字、きったねえなてめえ……」


サングラが作戦の書かれた紙を差し出す。


ん? そういやこの世界の文字って読めるんだな。

日本語ではないけど。

これも神の野郎のご都合主義って奴ですか?



作戦その1!

スラムの取り壊しの下見に奴がくる!


作戦その2!

アリスがボディガードを倒す!


作戦その3!


ゴツィータ、サングラが奴を確保! スラム工事の権利書を強奪!


そんな内容だった。


「うんうん。……雑かっ!!!!!」


アリスは紙を破いた。


「い、一生懸命書いたのに……!」


床に手をつき落ち込むサングラ。


「旦那ぁ、スラムで字を書けるのはサングラしかいないんだ。字の汚さは目を瞑りましょうよ」

「いや、そういう問題じゃないからね。

大体よぉ、奴奴、って言うけど奴って何ものなんだよ?」


アリスは椅子に腰掛け直しながら2人に尋ねた。


「あ、言ってませんでしたね。

この街を牛耳る貴族の1人でブチョンチョという奴です」

「ずいぶんふざけた名前の奴だな」


サングラが説明を続けた。

ブチョンチョはかなり陰湿な貴族で、気に入らない奴には容赦ない。スラムの取り壊しも建前で、

本当の目的はスラムの人間を全て奴隷にする事らしい。


「ふーん。まあ俺はお前らも悪いと思うけどね」

「へい、仰る通りです……」

「まあよ、引き受けたからには頼まれてやるよ。

んで、こっちの戦力は?」

「へい! 俺とサングラ、それに旦那です!」


……んん?


「ごめん、よく聞こえなかったよ。

もう一度お願いできる?」

「へい! 俺とサングラ、それに旦那です!」


全く同じ台詞を吐くゴツィータ。


デジャブかな?……いや、じゃなくて。


「だけ?」

「だけです!」

「話になるかああああ!!!!!」


アリスは昭和の親父よろしく、

ちゃぶ台を返すかのようにテーブルをひっくり返した。


「だ、旦那! 落ち着いてくだせえ!」

「落ち着いてじゃねえ! 他のスラムの奴らはどうした! いねえのか!?」

「そ、それが……残りのスラムの住人は皆ガキばっかりなんです」

「なに?」


聞く所によると、ガキとは別に比喩とかではなく、

本当に子供ばかりだという。

そいつらを養う為にゴツィータとサングラはカツアゲや泥棒を働いていたのだ。


ふーん。

なんだ、こいつら意外と見れるとこあるじゃねえか。

まあ真面目に働けと言いたい所だが

スラムの奴らは痩せて身なりも悪い(ゴツィータは異常にムキムキだが)、

なかなか受け入れて貰えないだろうしな。


「まあガキを危険な目にあわせる訳にもいかねえしな。

この戦力でやるしかねえってわけだ。

安心しな、俺が天才的な作戦練ってやるからよ」

「おお! 流石です旦那!」

「旦那は頼りになりますね! ゴツィータさん!」

「俺様に任せなさぁい。

んでブチョンチョはいつスラムに来る予定なんだ?」

「へい! 明後日です!」


……プチ。


「だからそういうのは早く言ええええええ!!!

時間が無いだろうがあああああ!!!」

「「ブフォオ!!」」


ゴツィータとサングラはアリスにシメられた。



とりあえず明日は作戦の準備だな……。



ーーーーー宿屋。


「あれ? 今日もいねえのか」


アリスが宿屋に帰ると今日もナツキもヤマトはいなかった。


ま、作戦考えるのにあの2人がいても邪魔か。

ナツキはかまってちゃんだから、話し相手いないと暴れ出すし、ヤマトは変態だ。

あれ?俺がこのパーティで一番まともだな。完全に。


(いや、キミも似たり寄ったりだと思うよ〜)


どこからかそんな声が聴こえてきた気がした。


結局アリスは真夜中まで作戦を練った。


「よし、これで完璧だろう!

さーて寝るか」


そう言ってベッドに入るアリス。


こんな真夜中だというのに2人はまだ帰って来ない。


なんだあいつら?こんな連日帰ってこないなんて。

……ま、まさか! あいつらデキてんのか!?

このワイルドビューティな俺様を差し置いて

デキちゃってんですかぁ!?

いやいや! ナイナイナイナイ!

あの恋愛なんてした事無さそうな2人がそんな事あるわけ……ないよね? ねぇ?

なんだか無性にムカついてきたぞ!

……ムカつく。


その日アリスの枕は濡れてたとか濡れてなかったとか。



ーーーー決戦前日。


朝早くスラムへと出向いたアリス。


「おう! てめえら! おはよう!!」

「お、おはようございます旦那」

「どうしたんですか? なんか目が赤いですけど、

眠れなかったんですか?」

「うるせー!!」


会って早々、殴られるサングラ。

アリスはどうやら昨日は眠れなかったよつだ。


「ひ、ひどい……」

「ふん! これを見ろ。俺が考えた作戦だ」


痛がるサングラを一瞥しアリスは紙を取り出した。

アリスが書く字もまた、この世界の住人に読めるようになっている。

ご都合主義様様である。


「こ、これは……!」

「どうよ、俺の完璧な作戦は」

「す、素晴らしいです! これなら安心して戦えますしね!」

「これならいけるかも!!」


「安心」という戦いにはふさわしくない単語が飛び出た。


「そうじゃろそうじゃろ!

では諸君!! 作戦の準備に取り掛かろうぞ!!」

「「おー!!」」


一体どんな作戦なのだろうか。

アリス達は丸一日かけ、更に徹夜で準備を終えた。



決戦は明日……!!

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