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今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第1部 はじめまして、異世界さん。
12/27

12話 キチとの遭遇

現在、アリスとナツキは

アリスが最初、転移した街

ミナセトへ向かっている。


「えー、またあの街に戻るのお?」

「仕方ないじゃん。この世界の事色々知らないといけないし」

(それにどうしても服を着替えたい……。)


ナツキも女の子だ。お漏らしした服 (しかもスウェット)で行動などしたくないのだ。


「乗り気しねえなー。指名手配は流石にされてねえよな……?ねえねえ、ナツキ1人で行って来いよ!」

「ねえねえうるっさい! しかも苗字の呼び捨てやめんかい!

せめて下の名前で呼んで!」

「やだよ。 俺だって苗字で呼ばれてんだし」


そ、れ、は!

あんたが呼ばせてんだろうがあ〜! それに私は年上だぞっ! 本当にこの子「俺様」って感じ!

てゆーか、むしろあんた1人で行って欲しいわ!

私は自分じゃ何もしたくないの!!


ナツキはそう思ったが声には出さなかった。


「はいはい、ナツキでいいよもう。

それで、どっちに行けばーーー」


ナツキが話してる途中だが

急にアリスがナツキの口を抑える。


「むぐっ!?」

「しっ! 静かに。

……そしていいヒザ蹴りだ。ぐふっ!」


ナツキは口を抑えられたと同時にヒザ蹴りを繰り出していたらしい。


「あーくそ、いてえな。 この暴力女め」

「あ、あああんたが急に……!!」


ナツキが顔を真っ赤にしながらアリスから遠ざかる。


「だからよ、不可抗力だって。

さっき人の叫び声が聞こえなかったか?」

「え?私は何も聞こえなかったけど…」

「あのなぁ、こういう時のチート能力だろうが」

「た、たしかに……」


その通りだけど使えない理由があるんだよなあ。

うーやだよやだよ〜。あ、そうだ!

少しだけ変身すればあんまり憑依されないから平気かも!確か猫の聴覚はすごかったはず…。


ナツキは『百獣の巫女』で猫の姿(猫耳、しっぽが生えただけ)に変身。

敏感になった聴覚で音を聞き取り、

ついでに臭覚で臭いを判別、場所を割り出した。

そしてすぐに元の姿に戻った。

この間、わずか2秒。


「にゃん」


ナツキは2秒間、猫に憑依されたが

鳴くだけで済んだっぽい。


「…………」

「うん、確かに声が聞こえたよ。それに臭いで場所もだいたいわかった。こっちだよ!」

「ちょっと待て。なに今の」

「能力の副作用みたいなもの! いいから早く行くよ!」

「お、おう……」


2人は声の方へ向かった。


「この辺りのはず。誰かいませんかー!」

「お〜い。 助けに来たぞ〜い」

「いや、適当かよ!!」


2人は辺りを探す。


「おお!! だ、誰か知らないが助けてくれ!!」


その声は近くにあった直径2メートルくらいの穴から聞こえてきた。


ん?あの穴は確か……あ。


アリスは考えるポーズをとり、何か思い出した様子。


「おい! ナツキ何ボサッとしてんだ!早く助けてやるぞ!」

「う、うん」

(ええ、何こいつ……。)


アリスは学ランを脱ぎ、それを穴から垂らし

穴にいた青年、ヤマトに学ランを手繰らせ引き上げた。


「おい、アンタ大丈夫か?」

「ああ、助かったよ。ありがとう」


ヤマトが握手をしようと手を出す。

それに応えるアリス。


「……アンタ名前は?」

「俺は大和孝臣! 孝臣と呼んでくれ!」

「そうか。ヤマト、お前の能力はなんだ?」


あれ!? 今この人、孝臣って呼んでって言ったよね!?

アリスって人の事絶対に苗字で呼ぶ人なのかな!?

って「能力」!?!?


ナツキは驚く事でいっぱいだった。


「俺の能力は『支配者』、時を止める能力だ!

この能力で覗きをしようと思っていたのだが、

生憎にも目を閉じなければ発動できずーーー」


ほぼ言いかけたところでヤマトはハッとした表情になる。


「あ、危ねぇ!! なんてやろうだ……!

もう少しで能力をバラすところだった!」

「「いや、もう言ってただろ」」

「で、ですよねぇ〜」


アリスとナツキはヤマトから少し離れコソコソと会話を始めた。


(名前からして完全に転移者だぜ。服装もだけど。

あれはバカだな)

(そんな事言わないの! ね、ねぇ。あの人も仲間に入れるの?さっき覗きがどうとか……)

(さぁ?聞き間違いじゃね?

これから先、仲間は多いに越した事はないしな。

それにヤマトは能力を答えた。脅威は無いと思う)

(き、聞き間違い?)


チラッとヤマトを見るナツキ。

ヤマトは見た目は真面目な好青年だ。

爽やかな笑顔をナツキに振りまく。


うーん、聞き間違いだったのかも……。

いや! 聞き間違いだよね、きっと!


「おーい。なにコソコソしているんだ?

ところでお前達も転移者なのだろう?

神は他にも転移者はいると言ってたからな」


ヤマトは2人の方へ近づいて言った。


「あ、ああ悪い。俺は有栖楓。

呼ぶならアリスと呼んでくれ。

能力は『絶対神罰』、触れた人間を数分後に爆破する能力だ」

「アリスか! よろしどぅぇぇぇ!? ばくはつぅぅぅ!?」


ヤマトはさっきアリスと握手したことを思い出した。


「ぷーくく、嘘だよバーカ。本当は触れたものを焼きそばパンに変えるクソみてえな能力さ。けど、能力なんか無くても俺が最強だけどな!」

「あ、焦らせるなよ!」

「全くもう……」


ナツキがやれやれと首を振りヤマトの前に出る。


「アリスは本当に自己中だから……。

私は夏木 裕月。アリスはナツキって呼んでる。

格闘技が得意だよ! 能力は『百獣の巫女』生き物の力を借りられる〜みたいな感じかな?

でも変身した後にその生き物に憑依されるから

あんまし使いたくない。」

「いや、その能力すごくないか!? ナツキもよろしく!」


2人のヤマトへの自己紹介が終わった。


「改めて、俺は大和孝臣だ。ヤマトと呼んでもらっても結構! 好きなものは女体!嫌いなものは衣服だ!

お前達に会わなければ元の世界の法が無いこの世界では恐らく全裸で過ごしていただろうな!

そしてナツキ、お前の声に聞き覚えがあるんだが……

エロゲの声優とかやってませんでした?」

「あ、そういうのはやめた方がーーー」


アリスが忠告するがもう遅い。

ナツキの綺麗なコンビネーションがヤマトに決まった。


「すげ……」


アリスはパチパチと拍手をおくった。


「あ、アリス!? 私この人と一緒に行動するの反対!」

「んまあ、俺はどっちでもいいけどさー」


ヤマトが満身創痍といった感じで起き上がる。


「ぐ、ぐふっ! 因みに趣味で炊事洗濯お手の物だ、身の世話はなんでも任せてくれ」

「ようこそヤマト君! 一緒に旅立てるのが光栄だよ!

「おい」


しかしこのパーティ、ロクなのいねえぞ。

3人はそれぞれお互いにそう思った。


こうして、この世界に波乱を巻き起こす異世界転移民。

アリス、ナツキ、ヤマトの3人の冒険が今ーーー


「ところでアリス、旅はいいがその目的はなんだ?」

「そうそう、アリスが最初いた街に行った後はどうするの?」

「なにってそりゃあ……」


アリスが一呼吸あけ言い放つ。


「魔王も勇者も倒して俺が最強って事をこの世界で証明するんだよ!」

「「…………」」


ナツキとヤマトは、アリスの言葉に鳩が豆鉄砲を食らったかの様な表情になった。


3人の冒険はまだ始まってすらいない……!!



※因みにヤマトのハマった落とし穴はアリスが

自分の能力を試している時に出来た穴だった。

が、彼がそれを打ち明けることはなかった。




第2部へ続く。

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