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今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第1部 はじめまして、異世界さん。
11/27

11話 その男はそりゃもう、ひどいもんで 3

「ん……む?」


気づくとヤマトは何処かの森の中にある

川の岸辺に打ち上げられていた。


およそ日本とは思えない景色だ。

恐らくもう異世界にいるのであろう。

魔物も出現すると神は言っていた。気をつけないとな。

こちらの世界の人は元いた世界の言葉が通じるということも確認した。とんだご都合主義だが……


とにかく、神に事前に色々と聞いておいて正解だったな。

とりあえず街を探そう。こんな何処とも分からない場所にいるのは危険だ。


そう思い、ヤマトが立ち上がる。


それにしても、くそッ!

どうせなら【おにもお】、やってから異世界転移してくれよぉぉぉ!


ヤマトは悔しい思いを胸に森の中へ入って行った。

すると森を入ってすぐ、ヤマトからほんの少し離れた所をゾロゾロと歩く小さな影の大群を見つけた。


あれは? あの見た目、ゴブリンの群れか!!

何であんなにたくさん!?

これは見つかったらやばいぞ!


ヤマトは裸足になり、気配を消し慎重に歩みを進める。

流石、元剣道部。すり足はお手の物だ。


よし、このまま息を殺して遠ざかろう。

抜き足、差し足……。

ひぇっ!!ムカデ!(みたいな何か)

ふぅ、危なかった。思わず声が出そうになった。

だがもう少し離れれば大丈ーーー


「プスゥー……プリッ」


いっけね☆

安堵で力が緩んでしまった!

メッ!だぞ、俺の肛門括約筋!

しかし、殆どスカした筈だ! 多少音は出たが。

頼む、気づかれないでくれぇ……!!



《ここからは、珍しいゴブリン視点でお楽しみ下さい。》


「フゴッフゴフ」

(あー、ちくしょー。 さっきの人間、マジ足はえーよ)


「グギブフ」

(だよなー。 しかもあの野郎、

最後は川に逃げやがって。 俺らが泳げるかっつうの)


「オゴッオウオウッ」

(どうする? 今度マーメイドさんとこに水泳でも習いに行く?)


「イ」

(しかし、私の見解からすると前親分は我々にとって

あまりいい親分ではなかったと思う。自分勝手だったし。あの人間を襲ったのも多少、その場のノリみたいな部分があったのではなかろうか?)


「「「「ンゴ」」」」

((((それな))))


「ププルププ」

(どうする? 次の親分、誰がやる?

……ん?なんか臭くね?)


「ファーブルスコファー」

(おい! あそこに人間がいるぞ!

さっきの奴の代わりだに皆でやっちまおうぜ!)


《ゴブリン視点、終わり。》


「フギャッギャイギャイ!!」


ドドドドドド!!!!


「うぎゃああああ!! やっぱバレますよねええええ!?!?」


くっ……!ゴブリンといえど流石は野性。

あんな些細な音でも聞き逃さないか……!

※臭いでバレました。


捕まったらまず殺されるであろう。

そう思ったヤマトは全力で逃げた。


「はぁ、はぁ……! ……うぉ!?」


が、足場も悪い森の中だ。運悪く枝に躓き、転んでしまった。

すぐに追いつくゴブリンの大群。


まずいまずいまずい!!

やられるッ!!


ゴブリンはヤマトを半円状に取り囲み一斉に飛び掛かって来た。

咄嗟に目を閉じ防御姿勢をとり後ろに飛び退くヤマト。

が、


……ん?なんだ?やけに遅いな。


チラっと目を開けるヤマト。

その瞬間目の前に降り注ぐゴブリンの雨。


なんだ、今の時間差は?

そ、そうか!『支配者』の効果か!!


そう。ヤマトの能力『支配者』は目を閉じた時のみ発動。しかも自動発動なのである。


貰った時はなんだこの糞ゴミ能力と思ったが、

これで助かる!!


ヤマトは目を閉じたまま逃げる事にした。


「いてっ! いてっ!」


そこらの木々にぶつかったり、石に躓きながらフラフラと。


ゴブリン達が気づくとヤマトはすでに目の前にいなかった。

踏んだり蹴ったりだったゴブリンは金輪際、人間にちょっかい出すのを控えたという。




ーーーーここまで来れば大丈夫だろう。

かなり移動したしな。


そう思ったヤマトは目を開けた。


「しかしやばかった。

転移早々こんな目にあうとはな。だがこの『支配者』、全く使えんと言うわけでも無さそうだな」


とりあえずヤマトは森を抜ける為、再び歩みを始めた。


ズボッ


ん? ズボ?

あれ? っかしーな。なんだか体が傾いてるよ。


って落とし穴あああああ!?!?


誰がこんなところに仕掛けたのか、

ヤマトは落とし穴にはまった。


「ぐふっ! いってえな……。

誰だこんなところに落とし穴を仕掛けた奴は」


それにしても中々深い。深さにして約3メートルはあるだろう。


あ、これ自力で脱出するの無理ぽ。

だってこの状況、『支配者』とか意味ないもん。

これ、このまま助け来なかったら死ぬな。


って、おい!!!

こんな終わり方の異世界転移モノ見たことねぇよ!!

俺にはこの世界の美少女全員と出会うという

崇高な目的があるんだ!!

こんなところで死ねるか!!

ああ、誰か誰か誰か!!誰でもいい、俺を……


「たああすけてくれえええええ!!!!!」


ヤマトのその声は森中に響き渡った。



ーーーーーーーーーー


大和(ヤマト) 孝臣(タカオミ)

20歳フリーター。

メガネをかけた真面目そうな好青年。

お人好しで世話焼き。

が、その中身は超弩級の変態である。

剣道でかなりの実力がある。


所持能力『支配者』

目を閉じているとき、時を止められる能力。

しかし、完全に自動発動する。

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