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今回の異世界転移民のチート能力は【無能】なようです。  作者: こうしさん
第1部 はじめまして、異世界さん。
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01話 その男、最凶につき 1

もうそろそろ夕暮れになりそうだ。

しかし、今日のこの街はまだ騒がしい。


(何がどうなってやがる? どうしてこうなった?)


「待ちなさい!」

「止まれと言っている!」


「誰が待つかよバァカ!!」


そう言って人混みをかき分け街のメイン通りを走り抜ける学ラン姿の黒髪の青年とそれを追う衛兵風の男2人組。

治安の悪いこの街では別段、珍しくもない構図だ。



ただ青年の服装はこの街に若干そぐわない気もするが……。


そうこうする内に3人は街の裏通りへ。

裏通りに入った途端青年はさっきまではお遊びだったのか、衛兵達をぐんぐん引き離していく


(お前らみたいなのには散々追われ慣れてんだよこっちは! 捕まるわけないの!)


振り返りべーっと舌まで出して衛兵を煽りまくる青年。

なんとも性格の悪そうな面構えである。


「なッ!!」

「あんのクソガキ!!」


衛兵はブチ切れ。当たり前である。


「怒った? 怒ったっしょ!? プギャーははは!」

指差しさらに煽る青年。だが距離はどんどん突き放す。


「……止まらんというなら仕方ない」


と、衛兵の2人が立ち止り手を突き出す。すると掌が淡い緑色を帯びる。


(諦めたか…?)


警官を巻こうと青年が前を向き直した瞬間、


ビュオッ!…バギィッ!!

凄まじい風の音が青年の側を通り過ぎ近くにあった木箱が吹き飛ぶ。


(ハアアア!?!?)


青年がいきなりの出来事に驚き、

再び振り返ると目に見える程の衝撃波が目の前に迫っていた。


(あ、ちょタンm)


この黒髪で目つきの鋭い青年の名前は「有栖(アリス) (カエデ)

青年は女の子らしい楓という名前が嫌いな為、アリス、と呼ぶことにしよう。

アリスは喧嘩自慢の元不良。

面倒くさがりで相手を逆上させるのが大好きで、身長は178センチ程だろうか、

クセのある黒髪を無造作に伸ばしている。

顔はそこそこいいのにねじ曲がった性格故、モテないのが悩みの(本人は原因に気づいてない)

18歳の高校3年生である。

いや、であったというべきか。

服装からわかるようにアリスはこの世界の住人ではない。



そう、アリスは異世界から転移してきたのである。




吹き飛びながらアリスは思う。


ド ウ シ テ コ ウ ナ ッ タ



ーーーーー数時間前。



「ふあ〜あ、だる。なんか面白いことないかな」


アリスは自身の通う高校の帰宅途中そんな事を呟く。

彼にとって日常生活、学校生活はくだらないものであった。


彼は高校2年生の中頃まで地域では名の知れた不良グループのリーダー格だった。

その強さや凶暴性からついたあだ名は「死神の国のアリス」

髪は金髪に染め、他校に乗り込み、番格とタイマンを張り、時には警察官におわれ……

彼にとってそんな日常も退屈せず、悪くはないかなと、そう思えた。

しかしある事件からそんな彼も不良をやめる。


それからというものの、学校の生徒やそれまでアリス慕っていた仲間や後輩からも畏怖される事となる。

そして誰も彼に近づかなくなり、彼にとっての学校生活は孤独なものとなった。

と、いっても図太い彼の性格によりそんな事は当の昔に気にしていなかった。

それはそれで問題だが……



「アァァリィスゥゥゥ!!! ここで会ったが100年目!今日こそぶっ殺してやるぜぇ!!」


帰宅途中のアリスに世紀末かよってくらいに気合の入った不良が5人6人と立ち塞がった。


「世紀末かよ…お前ら」


どうやらアリスも同じよう事を思ったらしい。


不良をやめた今もこうしてアリスに恨みを持つものが絡んでくる事が多い。こちらから吹っ掛ける事はないが大抵は返り討ちにしている。

(5...6人か。まぁ、問題ないだろ)


「で、どちらさんですかぁ?僕ちんこれからネトゲで友達とクエスト行く予定があるんだけと。邪魔しないでくんない?」


そう言って不良達の間を平然と通り抜けようとするアリス。


「ちょぉぉ!! 待ててめぇ! 忘れたとは言わせねぇぞ!代高の頭の佐t…」


スタスタスタ……とアリス。

完全に無視である。


「おいぃぃ!! せめて名前だけでも言わせてぇぇぇ!!!」

「うるせぇな、相手してやるからかかって来いよ、明日。」


どれだけネトゲがやりたいんだ。


「ちっ、どこまでも舐めやがって! もういい! テメェらやっちまうぞ!」


佐なんとかさんがそう叫ぶと不良達が一斉にアリスに襲いかかる。

しかしアリスは不良の攻撃を全て躱し、全員に反撃を食らわせた。しかもなぜかビンタ。


「これでいいか?面倒くさいからもう絡んでくんなよ……お?」


と不良達が怯んだ隙に立ち去ろうとすると……


なぜか後ろにも不良が6人いた。


「アァァリィスゥゥゥ!! 今日という今日は生きて返さn…ゴボハァッ!!」

「すまん! 聞いてない! なにその世紀末な感じ流行ってんのか?」


と流石にイラついたのか台詞の途中で相手をぶん殴ったアリス。


(((ひ、ひでぇ……)))


その場の誰もがそう思った。


(合計で12人か、ちと骨が折れるな)


アリスでも12人相手はキツイらしい。最初の6人も既にピンピンしている。最初の一撃が本気ならば違ったが、相手を舐めてかかる癖が悪く出た。


「どうするよ?絶対絶命だぜアリス君よぉ」

「こんだけの人数に囲まれちまえば怖くないわけないよなぁ?」


不良達も今にもかかってきそうだ。


「えー、コホン。あー!! おまわりさーん! こっちこっちー!!」


と叫ぶアリス。


「「「な、なに!? おまわり!?」」」


素直な不良達は全員誰もいない他所を向く。



「へっ、バァーカ! いるわきゃねーだろ!俺は逃げーる!」


アリスは卑怯な手が大得意であった。


「あっまてこの野郎!!」

「ぜってぇ逃すな!!」


隙を見てアリスは不良の囲いから脱出し、裏道へと逃げた。不良達も後を追いかけるが、アリスは足も速い速い。

すぐに不良達を撒いてしまう。

だがいつまた遭遇するか分からないのでそのまま裏道を走り帰る事にした。


ここを曲がればもう家はすぐそこだ。

ったく疲れさせやがって。帰ったらネトゲして……

あ、そうだ! 今日は【なっきー】の動画更新の日だ、チェックしとかねぇと


そんな事を思いながら裏道を出る曲がり角を曲がる。



そこで彼の日常は終わりを告げる。



「…………は?」



まるで中世を連想させる街並み、明らかに日本人とは違う服装の人々、街を行く馬車……


目の前には見た事もない風景が広がっていた。

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