永遠の別れ4
何とか逃げて来られたのか、
ノッテによく似た綺麗な顔に煤と
少しの火傷を作った
ノッテの双子の妹が駆けて来た。
「お兄様!・・・・お・・兄様・・」
走りよって胸の中で泣きじゃくる
双子の妹、ティーナを抱きしめながら
その後に駆けて来る人影が無いのを一瞬で
確認し、何かを察したように俯いた。
しかし再び顔を上げたノッテは、
ノッテ自身も、まだ、10を数える程しか年を
重ねていない身で、一回り以上も年の離れた
大人達に囲まれ守られながらも涙を零す事も
なく、ただ、赤く燃える目の前の城を
見上げていた。
「ティーナ」
一つ頷いて何かを決心したように、
そっと、まだ泣き続ける
ノッテの双子の妹である、
ティーナの身体を離して、両手を握り締め
覗き込むように瞳を合わせた。
「今、私達がすることは、
チェーロを守って逃げる事、
何時までも此処にいてはいけません、
私達は、あの、父上と母上の子です。」
そう言うと、ノッテは、今度は
足元で、ノッテの服の端を握り締め
じっと見上げていたチェーロを抱え上げて、
馬車に積まれた小箱の中に
ノッテのガウンに包んだままの
チェーロを寝かせる。
驚いて起き上がろうとするチェーロの
頭を撫ぜながら、
「チェーロ、可愛い私達のお姫様、
心配する事は何もありませんから、
私達が守りますから」
そう言って、手の平でノッテは、
チェーロの瞳を閉じさせた。
すると、チェーロに、急に眠気が襲ってきて、
「・・・・にぃたま、チェーロ眠りたく・・
ない・・・此処・・いや・・チェーロは・・」
懸命に眠気と闘うけれど、
ノッテの声がチェーロの耳に届くたびに
抗いがたくなって来て・・・、
「・・・・チェーロは暗いのが怖いのでしたね、
暗いのも、怖いのも、哀しいのも、
兄様がこの箱の傍にずっと居るから大丈夫ですよ
しばらく何も考えずに眠っていなさい。
何も考えずに・・・ゆっくりと・・・・。」
チェーロの意識は夢の世界へと
旅立ってしまった。
「ティーナ、父上が、仰っていました。
敵は、チェーロを探していたと、
我が国の偉大な王にして、
英雄である、双王の子であるチェーロを・・・
『チェーロが、双王を傷つけた、
ソラーレ様は、殺され、
アイェリーノ様も瀕死の状態』だと、
そんなはずは無いでしょう?
何かが起こっているのです
何かが・・・。」
ティーナは、俯く双子の兄の手を握り締めた。
「お兄様・・・大丈夫です、
きっと、大丈夫ですから。」
頷くと、ノッテは、ティーナと共に
馬車に乗り込んだ。
「チェーロも、ティーナも、
私が守ります。
私は、『あに』なのですから・・・。」