永遠の別れ2
「ねえ、チェーロ、
チェーロは、私の父上と、
母上も好きですよね?」
チェーロからは、伯父と義伯母にあたる、
ノッテの父と母の元へホクホクと挨拶に向かう
チェーロを見て、ノッテがそう言うと、
チェーロは、ノッテを見上げて少し真剣な顔で
答えた。
「・・・・ん・・・・でも
おじたまもおばたまも、子持ちししゃも
らから・・、子持ちししゃもは、奥さんのもの
でねぇ・・・奥さんの子持ちししゃもは、
亭主のものだもん・・だから、
にーたまを、頂戴って言うの・・」
「・・・子持ちししゃもですか、
両親が、子持ちししゃもなら、
私達は、お腹の卵ですか?・・・
でも、子持ちししゃもは、メスって・・・
そんなことまで、考えてませんよね・・」
ノッテは、少し訳の分からない、突拍子も無い事
を言う、チェーロの言動にそれでも
ニコニコ微笑みながら、父と母の部屋まで、
チェーロの手を引いて行った。
「あれ?・・・・誰も居ませんね」
ノッテの父と母の寝室には、誰も居なかった。
「おかしいねぇ・・・チェーロ探してくる!!」
もう寝る時間だと言うのに、
目が冴えきってしまったのか、
ノッテが部屋に入って、両親を探して部屋の中を
見回していた、一瞬の隙に
チョーロは再び駆け出してしまった。
「本当に、姫様はお元気ですね」
侍女の声にノッテも苦笑いを浮かべてしまった。
お転婆姫を捕まえなければね、
そう言って、ノッテもチェーロの後を
追いかけた。
どこをうろうろしているのか、全然見付からない
チェーロにノッテが、しまいめに
廊下の幾つか有る大瓶の中を覗き込んでいると、
「どうした?ノッテ」
という声が聞こえ、ノッテは、
少し驚いて、その次に
はっと、大瓶を覗き込む自分の姿の
恥ずかしさに気づいて
ちょっぴり赤面しながらゆっくりと顔を上げた。
「父上!母上も・・。」
ノッテの両親が、けげんな顔で、
侍女や、従者達と一緒に
瓶を覗き込んでいる我が子を少し離れた所から
見ていた。
「チェーロが、お二人にご挨拶をと、
一人で行ってしまったのですが、
見かけませんでしたか?」
近づいて来て、ゆっくりと膝を曲げ
自分に視線を合わせる両親の、
子ども扱いしてくれる様子に
なんだかくすぐったい気持ちで
ノッテが問いかけるが、
母が、ノッテの口元に、シーっと
指を当てたので、ノッテは、口を噤んだ。
「チェーロなら、ここだ・・・・・。」
父が背中を見せると、探していた、チェーロが、
その背中で、すやすやと眠っていた。
チェーロのその寝顔にクスクス笑いながら
ノッテが、大切な物を見る瞳で、
眠っているチェーロの柔らかい頬っぺたを
突っつきながら話しかける。
「チェーロ、本当に、チェーロは、名前の通りに
『空』みたいに自由な子ですね・・・。」
その、ノッテの姿に、
父が、微笑を浮かべながら、
そっとノッテの背中にチェーロを乗せてくれた。
「ノッテ、これからも、お前の天使を
大事にするんだぞ、
これからも、従兄妹同士、
お前達きょうだい同士、
皆、一緒に、力を合わせて、仲良く・・・。」
そっと、ノッテの頭を撫ぜてそう言うので、
ノッテは、口では、恥ずかしいですよ
と言いながらもその温かさがこそばくて
嬉しかった。
チェーロの弟のアルト王子の誕生と
双王の部屋で、あの悲劇が起こったのは、
それから、しばらくたって・・・