永遠の別れ1
「今日は、チェーロちゃんは、
私と寝るのですからね。」
双子の妹にそう言って、ノッテは、
母親の出産と、それに付き添って居る
父親の様子に不安そうになっている
チェーロの手を引っ張って、
ノッテの寝室へと向かっていた。
「チェーロ、眠たいのですか?」
引っ張られながら船をこぎ始めたチェーロを
抱き上げて、ノッテは、
「母上様の出産で最近、チェーロも
ずっと気を張り詰めてましたものね、
連れてって上げますから、寝ていて
良いですよ。」
どちらかと言うと、負んぶの方が良いですけどね
そう、言って、チェーロを背中の方に
移動させた。
侍女や侍従達が手を貸そうとしたけれど、
ノッテにとって、チェーロは、
可愛い宝物だったので、
どうしても自分が負んぶしたかった。
「・・・・・にー<従兄>たま、チェーロ
おしっこ・・。」
暫く負んぶして歩いていたノッテだったが、
その声に、ゆっくりチェーロを床に
下ろしてやり、しゃがみ込んで、
顔をのぞきこんでやると、
見返した、クルンとした大きな紫の瞳は、
眠気が何処かに吹き飛んでしまったようで、
バタバタと足踏みをして、
ノッテを急かしていた。
「はいはい、分かりましたよ」
じっと、負ぶさってくれてたのは一瞬の事か、
と、額に片手を当て、ため息を吐いて、
ノッテが、答える。
チェーロは、ノッテのその様子に、
にんまり笑って、
「にー<従兄>たま、いつもきれいね、
おっきくなったら、チェーロが
お嫁にもらってあげますからね」
と、しゃがみ込んでいたノッテの首に手を回して、
抱きつき、頬に小さな口付けを落とした。
可愛くて、可笑しくて、ノッテは、
クスクス笑うと、
「それはそれは・・
すっごぉく楽しみにしていますよ」
と答えた。
「うんv」
嬉しそうに答えた後、
チェーロが、
「あのね・・・・チェーロ、
おしっこ引っ込んだの、
それで、にー<従兄>たまの所の、
おじたまと、おばたまに『お休みなさい』
言うの忘れてたの・・
言いに行くの、」
そう言って、駆け出したので、
ノッテは、慌てて手を掴んで
チェーロを引きとめ、
ノッテの父と母の所に一緒に、
挨拶しをしに行く事にした。
それが、最後の別れになるとも知らずに・・。