大公3
「あのさ・・コルテ・・・・・コルテはさ、
プレーチェの事好きだよね?」
唐突に何か言いだしたチェーロの声に、
マイーサの腕の中に居るプレーチェに手を伸ばしていた
コルテは、『はあ?何を?』と、言いたげに
眉を寄せてチェーロの方を見た。
「うん・・・・好きなのは分かっているけど、
将来結婚しようとしているような好きだよね?
・・・あ!貴族とかでありがちな政略の幼い時の許嫁
に対する穏やかな親愛とかの意味じゃないよ!
自分自身の意思の、とっても大事のどっちかというと
束縛したい大好きの好きだよねって、確認。」
聞いているうちに流石のコルテも、
どこか恥ずかしくなったのか、屈んでいた足を伸ばすと、
への字口で徐々に顔を外側に逸らしてゆく。
よく見れば頬をほんのりピンクに染めていた。
「・・・・・・チェーロ様、微妙なお年頃の方に、
そんなにハッキリくっきりそう言う事を仰るのはどうかと・・」
「『好きなのは分かっている』・・って、
『束縛したい大好き』って・・・
僕としては確かにそうだけど・・・
13歳の僕が、5歳のプレーチェに対してそう思うのって、
『幼女趣味』を疑って、敬遠するところじゃないの?
それをサラッと断言するって・・・。」
苦笑いを浮かべてフォローしようとする
マイーサの言葉と、その後のコルテの言葉を、
マイーサを引っ付けたままのプレーチェが、
ぼんやりと聞いていた。
ぼんやり聞いていて・・・・しばらくして、
一瞬きして、瞳にちょっとずつ光が入ってきて、
眠たそうに見えるまつ毛に囲まれた
チェーロより少し切れ長が入った黒い瞳が
ほんの少し開いて、ほっぺたがリンゴに染まった、
「・・・・・・かわいいなぁ・・・・・どっちも色が白いから、
赤く染まってるのがよく分かる。
コルテとプレーチェは、恋愛対象かは、ともかく・・
私だって、恋愛対象ってどんなのなの?だけど・・。
まあ、それはともかく、年齢とか、
どんな好きとか種類はともかく、二人とも仲良いよね~?
・・・・あのね・・・・・許してね。
コルテに、言っておかなきゃいけないのじゃないかな・・・
って、たぶん同じ、コルテとプレーチェと・・
どう収まるのかは違うけれど。
チェーロね、ノッテ従兄上が、
小さい時から大好きでね・・大きくなったら
(ノッテの事をチェーロが)お嫁さんにしようと
思っててね・・。」
「!!?」
「大好きなんだ・・・・・・けど・・・
コルテの姉上とノッテ従兄上が結婚するって
チェーロ、ちゃんと分かってるよぅ?
ノッテ従兄上は、とってもとってもチェーロを、
『自分たちの王さま』になる王女として、
妹みたいな従妹として、全てを掛けて
大事にしてくれている・・・けど、
ノッテ従兄上の一番近い家族になる人は、
コルテの姉上のティーンだって分かってるから、
コルテには不快かも知れないけれど、
ノッテ従兄上の忠誠は、チェーロに頂戴・・・お願い。」
チェーロの瞳は、真剣だった。
「プレーチェの傍で、チェーロの事、
ノッテ従兄上の事、見ていくことになると思うけど、
不愉快な気持ちになることもあるかも知れないけど
許して欲しい・・・。」
紫水晶の瞳で真っすぐにコルテを見つめるチェーロに、
コルテは、なぜか息を詰めて
見つめ返すことしか出来なかった。
『僕に許しを請う事ではないでしょう』
とか、
『デーモネ大公子ノッテと、
姉のスクラメンテ公女ティーンの婚約は政略だから、
ノッテ義兄上の気持ちは貴女にあるのでは?』
とも、
『二人の間に横恋慕みたいな事をするなんて・・』
とも、
言葉がどうにも口から出てこなかった。
話を聞いていたマイーサが、めちゃくちゃ目頭を押さえた。




