実の子1
「う・・・・・う・・・・あ・・」
必死に自分を求めるプレーチェの手も瞳も涙からも
背中を向けシルホード大公ルナーレは・・・
プレーチェの養父にして、幼いプレーチェにとっての
絶対の人は、全身でプレーチェを否定していた。
「・・・・やっぱち・・・・ぼく・・・ぼく・・・・きらい・・・
ぼく・・・・とーたま・・に・・・しゅてやえるにょ・・・ぅ・・」
「・・・・きらいとか、捨てられるとか、言っているから
お前は弱いのだ。・・・・すぐ心を乱しおって・・・・
馬鹿も弱者も、このルナーレ=シルホードには要らぬ
涙を見せるな・・・・何事があっても心を乱すな!
強くあれないのなら、せめてその残念な頭に
知識だけでも詰め込み、強者のフリをする事が
出来ないでどうする・・・愚図が!」
どこまでも通じ合えない養父子の様子に、
ため息をつきながらコルテが、
「・・・・・プレーチェは、まだ5歳だよ・・・・・かける言葉も
望むレベルも間違っているな・・・相変わらず・・。」
と、呟く言葉もプレーチェには聞こえず、
「・・・・叔父上!そんな言い方は!」
と、まともにアルトが、腹を立てる言葉も聞こえず、
捨てられることに怯えながらも
家に置き続けてくれている事にわずかな希望を持って、
ずっと耐えていたプレーチェは、『要らぬ』
の言葉に絶望して、
絶叫した。
『 』
常に強力な結界に守られている王宮が、
一瞬、震え、すぐに修復するのを魔力の比較的強い
多くの者が感じた。
外敵の攻撃かとざわめく中、チェーロは、嫌な予感に
駆け出した。
自分の怯えにとらわれている場合では無い。
そう思い、知らずノッテの手を引っ張って心がざわめく
直感が教える方へと走っていった。
引っ張られるノッテが少し慌てた様子で
来客に『失礼します』と声をかけた後に、
チェーロの乳母であった侍女長マイーサも、
一礼し、二人の後を追った。
たどり着いた先には、
台風でもあったように荒れた部屋と、床に倒れたアルト、
寝台で倒れこんだチェーロの恐怖の対象の
叔父シルホード大公ルナーレ、
そして、
泣きじゃくるプレーチェと、そんなプレーチェを
いくつもの細かい傷をつけながらも
抱きしめてあやしているコルテの姿があった。




