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月夜の願い、闇夜の祈り  作者: のえる
52/59

実の子1

「う・・・・・う・・・・あ・・」


必死に自分を求めるプレーチェの手も瞳も涙からも


背中を向けシルホード大公ルナーレは・・・


プレーチェの養父にして、幼いプレーチェにとっての


絶対の人は、全身でプレーチェを否定していた。




「・・・・やっぱち・・・・ぼく・・・ぼく・・・・きらい・・・


ぼく・・・・とーたま・・に・・・しゅてやえるにょ・・・ぅ・・」


「・・・・きらいとか、捨てられるとか、言っているから


お前は弱いのだ。・・・・すぐ心を乱しおって・・・・


馬鹿も弱者も、このルナーレ=シルホードには要らぬ


涙を見せるな・・・・何事があっても心を乱すな!


強くあれないのなら、せめてその残念な頭に


知識だけでも詰め込み、強者のフリをする事が


出来ないでどうする・・・愚図が!」



どこまでも通じ合えない養父子の様子に、


ため息をつきながらコルテが、




「・・・・・プレーチェは、まだ5歳だよ・・・・・かける言葉も


望むレベルも間違っているな・・・相変わらず・・。」


と、呟く言葉もプレーチェには聞こえず、




「・・・・叔父上!そんな言い方は!」


と、まともにアルトが、腹を立てる言葉も聞こえず、


捨てられることに怯えながらも


家に置き続けてくれている事にわずかな希望を持って、


ずっと耐えていたプレーチェは、『要らぬ』


の言葉に絶望して、


絶叫した。




『      』







常に強力な結界に守られている王宮が、


一瞬、震え、すぐに修復するのを魔力の比較的強い


多くの者が感じた。


外敵の攻撃かとざわめく中、チェーロは、嫌な予感に


駆け出した。


自分の怯えにとらわれている場合では無い。


そう思い、知らずノッテの手を引っ張って心がざわめく


直感が教える方へと走っていった。


引っ張られるノッテが少し慌てた様子で


来客に『失礼します』と声をかけた後に、


チェーロの乳母であった侍女長マイーサも、


一礼し、二人の後を追った。




たどり着いた先には、


台風でもあったように荒れた部屋と、床に倒れたアルト、


寝台で倒れこんだチェーロの恐怖の対象の


叔父シルホード大公ルナーレ、


そして、


泣きじゃくるプレーチェと、そんなプレーチェを


いくつもの細かい傷をつけながらも


抱きしめてあやしているコルテの姿があった。

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