プレーチェの心1
月の女神に愛されし国サフラ巫子王国、
その王国の国王として同時に即位した双王
二つに別れた王家を統一した偉大な二人の王には、
それぞれ兄弟がいた。
ソラーレ王には、二人の弟、
アイェリーノ王には、二人の兄。
ソラーレ王のすぐ下の弟は、出身のシルホード王家を
母体にシルホード大公家を名乗る。
即ち、ルナーレ・テッラ・フィエル=シルホード大公である。
養い子プレーチェは、
シルホード大公家、唯一の子で
(本当は、双王ソラーレ、アイェリーノの直系の孫で)ある。
プレーチェは、広くて綺麗なベットの上で
ようやく目を開いた。
「・・・・・・・?」
ぼんやり天井を見上げてゆっくりと
ここはどこなのか、どうして此処にいるのか考えてみる。
プレーチェは、年齢よりも小さく幼い手を
そっと自分の胸元に持って行き、服の上から
僅かな膨らみを確認して(無表情で)内心ホッする。
「・・・・・と・・・・た・・・・・」
養父であるシルホード大公、
ルナーレ・テッラ・フィエル=シルホードを呼びかけて
プレーチェは、小さな手のひらで自分の口を塞ぐ。
だって、養父様<とーたま>に禁じられているから。
急いで周りに誰も居ないのを確認して、嗚咽を漏らす。
「・・・・だれ・・・聞・・無いね・・・?」
ボロポロこぼれ落ちる涙を安心して零して、
お祖母様の呪いがかかっているから、
人に聞かれてはいけない声を発する。
「・・・・・ぼ・・・・く・・・・・と・・・たま・・・に、
捨てられるのかな・・・・?」
胸が、哀しくて、苦しくて仕方がない、
とてもとーたまが大好きなのに、
厳しくて、ちっともプレーチェを見てくれないけれど、
大好きなとーたま。
全然触れさせても、触れてもくれないけれど、
大好きで、こっちを見て欲しいといつも願っている、
とーたま。
「・・・・・!・・・・だめ・・・・なんにも・・・・思っちゃ・・・
悪いの・・・・来るから・・・・・。」
感情の乱れが激しくなるのを感じて、
とーたまに投げ渡された胸元の飾りを
服の上から押さえて耐える。
人知れずプレーチェの身体に刻みつけられた印が、
首輪よりは少し大きく、ペンダントというには、
少し小さい輪の先に付いた、胸元の飾りを術の核にして、
プレーチェの中で暴れる力と、
プレーチェの存在を嗅ぎ取って来る、
姿なきモノに反応する。
「・・・・こ・・・る・・・ちゃ・・・・
コルちゃ・・・・・来て・・・たしゅけて・・・・」
プレーチェは、とーたまに唯一話しても遊んでも良いと
許されている、
(プレーチェの中ではとーたま大好き仲間の)
コルテに助けを求めた。




