三玉2
「アル!・・・・・アルト、待って下さい!」
茶褐色の髪と、赤茶の瞳の少年、
アルト<大いなるもの>王子のしばらく後に、
黒い髪の少女・・・・・いや、
黒い髪に深い緑の瞳の少年、
アルト<大いなるもの>王子の幼馴染で
従兄弟にであるデーモネ大公家の
シーン<異国の言葉で『月』>大公子と、
シーンにエスコートされる形で、
金茶の髪と明るい緑の瞳の少女、
シーン大公子と同じく、アルト<大いなるもの>王子の
幼馴染にして、従姉妹でもあるエリスがやって来た。
同じ年頃のこの仲良し幼馴染三人組のことを、
王宮はおろか国の民は、『王家の三玉』と呼んでいた。
「アル、君は、すぐに飛び出してゆくのだから・・・・。」
黒い髪の少年、シーン<異国の言葉で『月』>大公子は、
ため息をついて、すぐにプレーチェへと瞳を向けた。
「ねえ、シンちゃん、この子どうしたの?
大丈夫なの?こんなに小さい子なのに・・・?」
エリスは、仲の良いチェーロを見て
一瞬嬉しそうに微笑んだけれど、
すぐに、モヤモヤしたものにまとわりつかれている
プレーチェを見て、心配そうにそう言った。
「・・・チェーロ王女殿下、お久しぶりでございます。
再びまみえましたこと、真に光栄でございます。
きちんとしたご挨拶が出来ません事を
ご容赦下さいませ・・・」
丁重な態度でシーンは、チェーロにそう言うと、
エリスの方に振り返り、にっこり笑って、
安心させるようにこう言った。
「大丈夫ですよ、エリス、幸いここには、
兄上が、居て下さったようです。
それに、王宮内と言うこともあり、悪いものは集まって
来てはいない様ですよ。
・・・・ノッテ兄上、お久しぶりです。
お会いできることを楽しみにしておりました・・・・・・・
後で、ゆっくりお話しましょう。
・・・今は、これが、どういう状態なのか、
どうしてこんな状態になったのか、
僕達に出来ることはありますかどうか、
教えて頂けますか?」
ノッテは、黙って、
『王家の三玉』を見つめた。
行動的で、皆に愛される天性を持つアルト。
沈着冷静で、人を魅せる才能を持つシーン。
温かく周りを包む雰囲気と天使の容貌を持つエリス。
ノッテの身内達、
さて、どう手伝ってもらおうか・・・・・ノッテは、
そう、考えていた。




