双王の物語0-2
森が見えた。
森の中で、誰かが居る。
青空のような青銀色の髪の人と、
夜空のような漆黒の髪の人と・・・・
これが、自分の見る夢だという事は、分かっていたが、
幼子・・プレーチェ<祈り>には、見えるものが、何なのか、
よく分からなかった。
二つの人影は、寄り添っていた。
プレーチェは、青銀の髪と漆黒の髪の人達が、
テラスで、沢山の人達に騒がれているのを
前も夢で見たことがあるなと、
ぼんやり思い出した。
同じ人物らしい人影は、
その頃から数年の時が過ぎた姿のようだった。
アイェリーノ<風の妖精>は、そっと、
青銀の髪を靡かせるソラーレ・エーテレ
<太陽の天空>を見る。
女になりたい、ただの女になりたい・・・・
日に日にその想いは、
積もってゆく。
双王と呼ばれる二人がそれでも、全然違う成長
を歩み始めているのだと
気付いたのは、いつだったか・・。
ソラーレが、男の子に、そして、男の人に
変わっていっていたのを、
気付かなかった。
アイェリーノが、女の子に、そして、
女になっていっていたのを
気付かなかった。
突然、気付いて、違うものになって、
離れてゆくのが急に怖くなった。
(でも、全てが、対称だから、一緒なんだね。
抜け出して、此処に来るしか、二人で会えない
けれど・・・)
アイェリーノは、ソラーレの横顔を見ながら、
小さく微笑んで、
少し高くなってしまったソラーレの肩に、
そっと、頭を置いた。
ソラーレの長い、青銀の髪と、アイェリーノの
長い、漆黒の髪が、
混じり合う。
青銀と漆黒、赤と藍 光と闇のように、
昼と夜のように
「「ずっと・・・一緒に居よう・・・」」
どちらからとも無くそう言って、手を握り合う。
「他の奴だったら、馬鹿らしいけどな・・。」
苦笑しながら、ソラーレがそう言う。
「・・・もう・・・離れられないよ、心が、身体が・・・
ずっと・・引き合ってる。」
アイェリーノもそう言い、続けて、
少し、恥ずかしげに声を小さくして
ソラーレに囁く。
「アイェリーノは、皆をだまし・・
手を血で染めて、・・それでも、
みんなを導く王でなければ
いけなかったのに・・・ソラーレに恋をした。
心が求めるまま、ソラーレの子をこの身に、
宿してしまった。
愛し合ってしまった。・・・でも、嬉しいよ・・
だって、ソラーレがずっと一緒だから。」
ソラーレもアイェリーノに囁く。
「俺は、後悔なんかしない。・・・騙したのも、
血で染めたのも、
俺も一緒だ。
アイェリーノを好きになっちまったのも、
一緒だ。
これまでだって、これからだって、
ずっとどんなことでも一緒だ。」
プレーチェ<祈り>の意識は、二人から
遠ざかっていった。
そして、二人のこの誓いが、本当に、
永遠に破られる事が無かった事を
何故か、プレーチェは、知っていた。