宮1
「『シルホード』、お前の言うとおりに
別邸に伝えてやったぞ」
スクラメンテ公は、いかにもめんどくさそうに
寝台の上で瞳を閉じている、
摂政殿下『アルト<大いなるもの>』王子
の後見にして、宰相である兄シルホード大公
ルナーレ・テッラ・フィエル=シルホードへと、
声を掛けた。
「『スクラメンテ公』、
アルボ・アルテリズモ・アウルグラフスィ、
私は、
ルナーレ・テッラ・フィエル
=『シルホード大公』・・・
摂政殿下、の宰相を努める
『シルホード宰相』だ!
きちんと、敬意を払ってもらおうか」
床に付いているというのに、しっかりと、
スクラメンテ公の態度に小言を言うと、
シルホード大公は、
不機嫌そうな表情で、一つため息をついた。
「いつまでも子どもでは無いのだ、
『公』と呼ばれる身であるからには、
好きと嫌いだけで、人との付き合いを
してはならんのだぞ、
『スクラメンテ公』・・・」
まだまだ続きそうな兄、
シルホード大公の言葉に
スクラメンテ公は、自分の耳を両手で
塞いで聞こえないフリをする。
「その態度が、まだまだ子どもだと言うのだ、
・ ・・まあ良い・・・
恐らく、我が養い子、
『プレーチェ』と共に、
そなたの、家出をしてきた子
『コルテ<宮>』も此処に来るであろう」
シルホード大公の言葉に、
自分の息子であるはずなのに
どこか恋する人が来るかのような
表情をする弟、スクラメンテ公の様子を
しばらく見ていたが、
シルホード大公、ルナーレ・テッラは、
疲れたように瞳を閉じた。
「・・・私も、アルボの事を言えない・・・」
小さくシルホード大公、
ルナーレ・テッラ・フィエル=
シルホードは、呟いた。