『私』の王女3
傷ついたノッテの様子を見に行った後、
チェーロは、倉庫で、自らクスリと食料の
チェックをしていた
ノッテの双子の妹でチェーロの従姉である、
ティーナの元へと駆けていった。
ノッテに、少し甘えた幼い様子で
接していたのとはまるで違う表情、
哀しくて、切ないのを押さえている表情へと
変わって、チェーロは、
ティーナの胸に、飛び込んでいった。
「お従姉様・・・・私・・」
従姉のティーナは、
チェーロが飛び込んできた驚きで
思わず落としてしまった紙と筆を
拾って近くの棚に置くと、何も言わずに
そっと優しくチェーロを抱きしめてくれた。
「チェーロは、お兄様に恋しているのね、
辛いわね、辛くて苦しいわね・・・」
従姉のティーナは、いつも気持ちを
理解して包み込んでくれた。
従兄と従姉にチェーロは、守られてばかりいた。
「チェーロ・・・・お兄様は・・
お兄様はね・・本当に愛して婚約者を・・」
苦い表情でそんな風に言うティーナのことを、
チェーロは、首を傾げて見上げた。
「・・チェーロ、可愛い貴女、
可愛い私達の従妹・・・・
お兄様の、貴女への想いはそうでは・・・
本当は、それだけではきっと無い・・・。」
躊躇いながらも吐き出すようにそう言う、
ティーナの声と、表情にチェーロは、
少し切なそうににっこりと微笑む
「ありがとう・・・・ありがとうね、
従姉ちゃ、やさしいね。・・・
でもね、従兄ちゃにとって、
チェーロは、・・・『未来の王』
なんだよ。」
首を振って否定する従姉のティーナを
哀しげに見ながらチェーロは、続ける。
「でも、私も、『王様』になりたいと
思ってる・・従兄ちゃの云う事を
よく聞く、甘えん坊で無邪気な『幼い王様』、
でも、大切な人を守りきれる『王様』に、
チェーロは、なりたいよ」
そこで、侍女長が空になったカップに
注ぎ足してくれたミルクを飲みながら
年齢より随分幼く見えるものの
19歳になったチェーロは今までの哀しい表情を
打ち消すようににっこりと明るく笑った。
「それからすぐだったかな・・・
お従兄様が、私達を逃がす為に
囮として、城に残っちゃったのは・・・・
お従兄様はね、一度捕まっちゃったんだよ
その時、敵になってた
シルホード大公ルナーレ叔父様にね。」
でも、その時の事をどうしても
私は、思い出せない・・・
チェーロは、そう言って、窓から空を見上げた。