『私』の王女2
「兄ちゃぅー。」
心配そうにノッテの寝かされた寝室を
覗き込んだチェーロを見て、
ノッテは、苦笑する。
「チェーロですか、・・・
大丈夫ですよ・・平気ですから」
「本当に大丈夫なの?
兄ちゃは、しいたけのようなもやしだから
あまり戦った事ないでしょう?」
潤んだ瞳のままにすがり付いてくる
少女の色香をほんの少し身に着けてきた・・
のかも知れないチェーロの可愛い仕草と、
それに合わないあまりの言葉にノッテは、
「兄ちゃでは無いでしょう?それに、
『しいたけのようなもやし』って何です・・?
参考までに・・・。」
すかさず訂正と、質問をしてきた。
「えっと・・じゃ、お従兄様・・・、
本ばかり読んで運動しない人を『もやしっ子』
って呼ぶらしいのと、頭でっかちみたいな
事・・から・・?」
恐る恐る答えたチェーロにノッテは、
頭を抱えたくなった。
「確かに、身体で動くより先に頭で
考えてるかも知れない、頭脳派プレーが好きな方
ですけど・・・」
チェーロの少し破天荒な言葉に、
ノッテは、落ち込んでしまったようだった。
(・・・お従兄様、ちゃんと分かっているよ、
本当は、お従兄様は、頭も剣術も凄いんだって、
綺麗で、何でも出来る人だって、
チェーロの傍に居てくれるのに
勿体無い人だって)
「・・・好き・・だよ・・お従兄様・・」
チェーロの言葉に少しショックを感じて
ブツブツ言っているノッテを見ながら
チェーロは、ノッテに聞こえないように
小さく呟いた。
そのまま俯いてしまったチェーロに、
どうとったのか、ノッテが、小さい頃から
良くしてくれた様にチェーロの
頭の上をポンポンと叩いて言った。
「私は、幸せなんですよ、
貴女を、心底大切に想える。
他のどんな思惑も無く純粋に貴女を想い、
貴女を、貴女達を守ってあげたいと思える、
それが、私にとってどれだけ大事で
幸せである事か・・・」
愛しいものを見るような温かい瞳で
チェーロを見つめるノッテに、
嬉しさと同時にチェーロは、切なさを感じた。
(この人は、全てを捨ててくれるの
可愛い<妹>である私の為に
全てを捧げてくれるの)
それが、切なくて苦しくて、
哀しかった。