新しい日々4
「・・・・・そうしてチェーロと、
ティーナと私は王宮から追われて
生活することになったのです。」
馬車の車輪が小さな音を上げたと同時に
そこでノッテは、
いったん話を終わらせた。
ノッテが対面側に視線を落とすと、
プレーチェは、黒い瞳で
ノッテを静かに見上げていた。
チェーロは、クスクスと笑いながら
侍女長に言った。
「お従兄様<おにいさま>は、
凄く家事が下手だった、
お皿を何枚も割ってね。」
秘密を話すようにチェーロは、侍女長の方へ
顔を近づけて声を潜めた。
「逃亡中だったから・・・私は、
偉大な双王である両親の死に
関係すると思われて追われていたから、
どこにも助けを求められなかった。」
王族として暮らしてた生活とまるで違って、
何もかもを自分達でしなければいけなくて、
初めの方は、ティーナお従姉様に、お従兄様は、
『お兄様は、何もしないでいて下さい』
ってたびたび言われてたよ。
ティーナお従姉様も色々壊してたけどね。
苦しかったはずなのに、その頃を懐かしむような
表情でチェーロは微笑んだ。
「・・・公子様と、公女様が本当に
お好きなのですね」
侍女長の言葉ににっこり笑って
大きく頷いた後、思いついたように
でもね・・・と付け足して
チェーロは、膨れっ面になって、続ける。
「お従兄様は、チェーロを『王女』として
育てるのを止めなかった。
『いずれ、チェーロが王位につくんです』って
繰り返し言って、
出来うる限りの教育をさせようとしていた。」
チェーロは、思い出していた。
何度も傷ついて帰ってきたノッテを見て
泣いた事、
泣くたびに
(もう良い、王様にならなくても良いから、
お従兄様とお従姉様と一緒に居れれば良い)
と、思った事を、
「『もう良いよ、チェーロが、頑張るから、
頑張って守るから』
って、小さかった私なりに
真剣に考えて言ったけれど、
『でも、チェーロは、女の子です。
チェーロ達のことは、私が守ります。』って、
にーちゃ・・お従兄様は本気にして
くれなかったの」
思わず昔の言い方にもどってしまいそうに
なりながらチェーロは悔しそうにそう言った。
まあ・・
と言いながら侍女長は、いつの間にか
チェーロの後ろに回って
手際よく髪型と、ドレスの皴を直すと、
チェーロが、散らかしていた
花飾りを髪に挿していた。
たくさんの人が居なくなっていったよ
父様、母様や、伯父様達みたいに、
何時、お従兄様とお従姉様とも離されるか
分からないって、怯えていたよ。
そのうちに、私も、王位を望むようになった
王になったら、皆をきっと守れる・・・
離れないで居られる・・・・って・・