新しい日々3
しばらくすすり泣いていたチェーロを
寝かしつけたノッテは、真っ赤になった
チェーロの頬を撫ぜていた。
「お兄様・・・・」
ノッテが振り向くと妹のティーナが立っていた。
「ティーナ、眠れないのですか?
ここに居れるのももう少しだけです。
今のうちに休んでおきなさい・・・
またすぐに移動しなくてはならないのですから」
ノッテは、にっこり笑って、暗い表情の妹に
そう言った。
「・・・お兄様・・これから私達・・・」
ノッテは、ゆっくりチェーロを寝かせている
ベットから起き上がり、
そのふちに腰を掛けると、
呟く妹のティーナへと、手を伸ばした。
吸い込まれるようにノッテの胸に飛び込んだ
ティーナの髪に頬を埋めるとノッテは、
双子の妹の頬の涙の跡に気付かない振りを
しながら、それでいて、
誰にも見せないとでも言うように
まだ同じ体格の双子の妹の身体を慈しむように
めいいっぱい抱きしめた。
「とにかく、無事にここまで逃げられて
よかったですよ。
ティーナの綺麗な顔も
可愛いチェーロの顔もかすり傷や
火傷くらいはあるかもしれませんが、
花嫁になるのに差し障る程の傷がなくて
よかった。」
くすくす笑ってそんなことを言う兄のノッテに、
「・・・顔ですの?・・お兄様が気にする所は?
それに・・・もう・・私達・・花嫁にやる・・
おつもりですの?」
引っ込めたつもりだったのにまた再び
溢れ出てきた涙で、兄のノッテの胸を
熱く濡らしながらティーナもノッテの
冗談にのって、泣き笑いながら答えた。
「・・・・泣かないで・・
泣かないで下さい・・ティーナ・・。」
「・・泣いてません・・・私は
笑ってます・・お兄様が冗談ばかりだから」
笑顔で居て・・ティーナもチェーロも
掠れた声で兄のノッテがそういうのが、
ティーナの耳に届いた。
(どうして?・・なぜ、お兄様は泣かないの?
泣いていいのに・・・。
泣いていいのに泣かないのは、
泣くと挫けるから、
誇り高いお父様とお母さまの子だから、
泣いていると、チェーロを守れないから
だから、泣かないのね・・)
ティーナは、だったら自分も
これからは、泣かないでいよう・・
ノッテの胸でそう思った。