新しい日々2
「父上・・・母上・・・」
呻く様な小さな声にチェーロは、目が覚めた。
ここは何処なのだろうか?
不思議に思う、チェーロの瞳に映ったのは、
蜘蛛の巣の張った
黄色い天井と、窓辺に掛かったボロボロの
カーテン、それと、ボロボロのベットで
チェーロの身体を抱き寄せて眠っている
ノッテだった。
「ここ・・・どこ?」
チェーロの声に、目を閉じているだけ
だったのか、直ぐに瞳を開き
少し身体を離して、ノッテが、
チェーロの顔を覗き込む。
「・・チェーロ・・?目が覚めたのですか?
ここは、王宮の近くにある森の小屋ですよ。
この様子を見ると、随分前から、
誰も人が来てなかったみたいですね。」
こんな状況だと言うのに、にっこり微笑んで
チェーロにそう言うノッテに、
チェーロは怪訝そうに首を傾げる。
(にーたまと二人だけ?)
「ねえ、にーたま、ねーたまは?
とーたまと、かーたまも、
おじたまとおばたまも此処には居ないの・・?」
何も分からない状況で、不安になった
チェーロが、じわりと瞳を潤ませながら
ノッテに聞く。
そんなチェーロの様子にノッテは、
不意に顔をゆがませると
思わずチェーロを
力を入れて抱きしめてしまった。
「にーたま、くるしーよ
どうしたの?にーたま・・・
何か苦しいことあったの?」
「・・何も・・・何もありません、
チェーロは、気にしなくても良いんです。
ティーナも、一緒ですよ。」
ノッテの苦しい表情に、
少しだけ掠れた頭の上の声に
どうしたのかと、何があったのか知りたくて
何度も聞くチェーロに、
ノッテは、何も無い、気にしなくても
良いと、そればかりを繰り返して、
「でも、気になるの、不安なのにーたま
にーたま、何か苦しいことが
あったのでしょ?
哀しい事、にーたま、ねーたま、
おじたまや、おばたまや、
それから、とーたま、かーたま、
『アルト』にもあったのでしょ?」
潤んで頬に零れそうになる涙を
一生懸命に堪えて、
ノッテを見上げるチェーロに、
「チェーロ、君は、本当に可愛いですね
とても、とても可愛らしい・・。」
にーさまが居るから、
守るから、不安にならなくてよいのですよ
ノッテは、そう言って、チェーロの滲み出した
涙をそっと、右手の人差し指で拭った。