双王の物語0-1
「王よ~」
「我らが王~」
「ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>王バンザーイ!
アイェリーノ<風の妖精>王バンザーイ!」
青空のような青銀の髪と夜空のような漆黒の髪の双王が
王宮のテラスに姿を現す。
まさしく双王、表裏一体の存在だった。
二人の姿は、毅然と、そして、可憐に見える。
「我が同胞たちよ~我らがサフラ王家は、今、
長年敵対していたシルホード<風の精の剣>王家と・・・」
と、青銀の髪と赤い瞳のソラーレ・エーテレ
<太陽の天空>。
「デーモネ<守護の魔神>王家とが、再び一つになって、
あるべき元の姿へと戻ったのだ!!」
と、漆黒の髪と藍の瞳のアイェリーノ<風の妖精>。
「王よ~」
「双王~」
「我らが統一王~」
二人の言葉を聞いて、ますます民衆の声は、高まった。
待ちわびていた『真の王』強力な指導者の誕生であった。
先ほどの双王の言葉の後、暫くたって、まだ賑わっている民達から
離れた森の木の上に、二つの影があった。
そう、まさしく、今、民衆を賑わせている、双王の二人であった。
「疲れたな~。」
「うん・・・。」
「聞いたか?アイェリーノ<風の妖精>・・・俺達って、
双王で、統一王だってよ。」
「うん・・・。」
「・・・?・・・」
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>は、アイェリーノ<風の妖精>の顔を覗き込んだ。
アイェリーノの様子が何だか変だった。
何だか沈んだ顔をしている、
アイェリーノの夜を切り取ったような漆黒の髪が、
その、藍の瞳に影を作っている。
「俺達は、間違ってない!!」
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>の言葉に、
アイェリーノ<風の妖精>は、大きく目を見開き、
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>の方に顔を向ける。
「あのなぁ・・・俺達が、間違ってるかも・・・とか、思ったら、
今まで戦って来た奴らに悪いだろ~?」
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>は、アイェリーノ<風の妖精>に向かって、ニッと笑った。
フフフ・・・・突然、、アイェリーノ<風の妖精>が、
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>の顔を見て笑い出した。
「ソラーレの方が、よく、落ち込んでたくせに・・・。」
「そんなことないぜ~お前だって~」
アイェリーノ<風の妖精>の言葉に、
すぐにブーたれた顔でソラーレ・エーテレ<太陽の天空>が応じる。
しばらく、それを見て微笑んでいたアイェリーノ<風の妖精>が、
ふいにまた、暗い顔をした。
「ねえ・・・本当に、私は、『魔』なのかな・・・
何時まで怯えていたら良いのかな・・・・永遠?」
「・・・・大丈夫だ・・・
俺は、お前の中に、『魔』があるなんて
思わない・・・いつか皆も分かってくれるさ」
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>がそう言いながら、
アイェリーノの頭を撫ぜる。
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>と、アイェリーノ<風の妖精>は、
共に16歳。
出会った頃は、同じ背丈でだった二人だったが、いつの間にか、
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>は、
すくすくと背が伸び、逞しく凛々しくなってきて、
アイェリーノ<風の妖精>は、
体に丸みを帯び、柔らかく可憐になってきた。
今は、頭半分下にある、アイェリーノの横顔を見ながら、
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>は、考えていた。
俺は、どんな事があっても、例え、アイェリーノ<風の妖精>の力が
本当に、『魔』のものだとしても守ってやれるだろうか、
今と同じように隣に居てやれるだろうか?・・・・?・・・いや、
俺は、別に変わらない・・・・アイェリーノの中のモノが何だろうと、
これから、どうなろうとも、俺は、変わらずアイェリーノと居る。
ソラーレ・エーテレ<太陽の天空>は、
大事な片割れと共に居る事を改めて決意した。