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完璧主義少年と死神様  作者: 乃石 詩音
第三章 戦いの日々
18/24

ギルベルトが昔話をし、感情の嵐が部屋を吹き抜ける

今まで読んでくれた皆様にお知らせです。タイトルを読んでいただければわかるかとは思いますが、主人公の性別を変えたり、新たなキャラを増やすなど、大幅な書き換えを行いました。ですが、話の流れは、そんなに変えてはいないので、気になるかただけ読み返す形で大丈夫かと思います。もし、読み返すのが面倒、でも知りたい、という方がいれば、コメントで聞いてください。

変更点

主人公  元島俐斗 リト・アテネス(男)→ 元島俐斗 リト・シュタルク

友人   琴葉(女)→  臼井珀(男)

新キャラ 花乃木由良 ユラ・フォール(女)

俐斗と珀の過去の話や、由良と珀が異世界に来た話も新しく閑話として更新しております。よろしければ、そちらも是非。

ぱあっとした光が、青毛のファングに向かって一直線に進んで行った。しかし、由良の全身からは力が抜け、ヘナヘナとその場に崩れ落ちてしまった。

「ちゃんと、倒せたのかな……」

「フォールさん!」

由良の意思は、そこで途切れた。

 「あれ、ここは……?」

「ここは、騎士団本部だ。それより、大丈夫か?!」

「          ?!」

声が聞こえた方を見ると、俐斗と、クロウディアがいるのが分かった。しかし、俐斗の言葉はわかっても、リヒトの言葉を聞きとることが出来ない由良。

――なんで?

「      ?」

「どうした。まだ、具合が悪い所でもあるのか?」

由良に聞こえているクロウディアの言葉は、由良が全く聞いたことも無い言語だった。

「クロウディアさん、ふざけないでください」

そんなことを言ったが、由良は知っていた。リヒトが、ふざけるような人ではないと。

「おい、もしかしてお前……」

由良は、俐斗の言おうとしていることを察した。

「そう、元島君。私、クロウディアさんの言っている言葉が聞き取れないの」

俐斗は、リヒトにその旨を伝えた。

「きっと、魔力が足りなくなってしまったのですね。別世界から来た人は、その人自身に宿っているわずかな魔力で、言葉を自動的に翻訳するらしいのですが……」

「高度な魔法を使って、魔力が足りなくなってしまったってわけか」

俐斗は由良を見やった。

「馬鹿だな、お前」

常に学年トップの人に馬鹿と言われれば、返す言葉もない。由良は反論できなかった。

「何を言うんですか、シュタルクさん。フォールさんはただ、隊員として貢献したまでですよ」

「それにしても、だ。猪突猛進に行動するのは、ただの馬鹿だろ?」

「に、二回も言わなくたって良いじゃないですか?」

今まで、誰かと特別に親しかったわけでもない由良は、口論で勝つ術を持ち合わせていなかった。

「ああ、すまん。悪気はさらっさら無い」

由良は、やるせない思いをシーツを握りしめる、ということでどうにか鎮めようと思った。その時、部屋のドアが開いた。部屋に入ってきたのは、ギルベルトとフィニラムだった。テトリーの顔は、いつもは表情を見せない人とは思えないほどに、焦っているのがよく分かる。

「おい、大丈夫なのか」

「ああ、命に別状はない。ただ、魔力を使い切ってしまったらしくてな。しばらく俺がいないと、この世界の奴らと会話が成り立たない」

ギルベルトは、全ての息を吐き切る勢いで、安堵のため息をついた。

「良かった。また、俺のそばで誰かが魔物に殺されるかと……」

「前に、何かあったのか。そう言えば、魔物に復讐する、とか言ってたな」

俐斗の質問に反応したギルベルトは、力の抜けていた手を強く握りしめた。

「俺の両親と妹は、魔物と貴族に殺されたんだ。あれは、七年ぐらい前のことになるが……」

貴族に殺された、という言葉に、フィニラムは顔を曇らせる。

「あの日、俺たちは町に出かけていた。魔物もそんなに出現しない平和な町だった。でも、何の気まぐれか、その日魔物は現れた。偵察に来ていた貴族は真っ先に逃げた。良い剣を持っているのにも関わらずにな。親父は先陣切って魔物に立ち向かったが、死んだ。母親は妹をかばいながら逃げていたが魔物に殺された。残された俺はどうにか逃げ延びながら騎士団の助けを待っていた。騎士団の助けが来た時には既にたくさんの死者が出ていた。その時から俺は貴族を嫌っているし、魔物に復讐するって決めたんだ」

ギルベルトは、どうにかこうにか憎しみと、怒りと、悲しみの感情を抑えながら最後まで話した。

「それは大変だったな」

「もしかして、その話はファラスデンの悲劇ではありませんか? その町にいた一般人は唯一十代の男の子だけが生き残った、という。その子はテトリーさんのことだったのですね」

「まあ、そう大げさに言われることもあるが、俺はただ何も守れなかった無能な奴だ」

ギルベルトは、自嘲気味に笑った。

部屋には、思い沈黙が流れた。誰もが、ギルベルトに何を言ったらいいかわからずにいた。しかし、おずおずと口を開いたのは、由良だった。

「ねえ、元島君。なんかテトリーさんが長々と話していたようだけど、何を話していたの?」

俐斗は、ため息をついて、さも仕方なさそうに、もう一度同じことを語りだした。

「……そうだったの。テトリーさんは、勘違いをしている」

「は?」

「だって、魔物に対する憎しみや怒りは結果的に魔物を倒してやろう、という思いにつながっているでしょ? それは、絶対誰かを助けている。だからテトリーさんは、誰も守れない無能なんかじゃない」

俐斗は、すかさず、それをギルベルトに伝えた。

「そう、か」

ギルベルトは笑った。それはさっきとは違う自身を嘲るような笑いでは無かった。

「ありがとな、新人。俺は、またお前に助けられた」



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