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完璧主義少年と死神様  作者: 乃石 詩音
第三章 戦いの日々
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少年は再会を嫌がり、やがて馬車は目的地へと到着する

 ツイッター始めました。更新情報も呟いてます。(前書きに言うことではないんですが、活動報告は読まれている気がしなかったので、ここに書きます)他は、二次元大好きな高校生のつぶやきですが、腐ってはいませんので、安心してください。

「ったく、何なんだよ。急に止まりやがって」

三人が乗っていた馬車の前方を走っていた馬車に乗っていたギルベルトとフィニラムも、既に降りてきていた。停まった馬車の前方には、俐斗には、いやこの場全員に見覚えのある黒い影。

――嫌だ、これが現実だと思いたくない。

「ぎ、ギルベルトさんあれは……」

そう言って、フィニラムが指した先には……。

「元死天皇のトップ、アラフィスタですよ!?」

裏切りの死神アラフィスタがいた。

「本当、君たちはおもしろいねえ。こんなに予定通りにいくとは思って無かったよ」

「リーダーの命令だ! 第百八十八部隊総員構え!」

ギルベルトさんが叫んだ。皆は口ぐちにあの呪文を唱える。

「おやおや、今回は戦いに来たんじゃないんだけどねえ。それに君たちは、魔物討伐隊であって、死神討伐隊ではないだろう?」

俐斗たちは、構えてはいるが、攻撃はできない。なんたって、リーダーの命令がないからだ。それに、今アラフィスタが言った通りでもある。しかし、一触触発状態だ。俐斗と由良は、戦いの場の空気というものを初めて知った。

「今回はねえ、お二人さんの誤解を解きに来てあげたんだ。そろそろボロが出始めているころだと思ってねえ。隠しきるのは難しいだろう? すぐに限界がくるさ」

全てを見透かしたような口調。太陽に照らされて鈍く光る紫色の目さえもまるで武器ように二人に襲いかかる。逃げ出したくなって、足が震える。

「なんのことだ! この新人が何か隠しているってことか?」

「そうだよ。でもお二人さんは何も悪くない。その子たちは禁忌には触れていない。お二人さんは、私たちによって、この世界に転異させられた。そういうことさ」

「そういうことでしたか。死天皇をやめて何をやっているのかと思えば、禁忌に手をだしていたのですね」

――収集がつかなくなりそうな雰囲気だな。一体、どうしてくれるんだ。しかし、今回はアラフィスタに助けられてしまったようだ。もしあのまま馬車が走り続けていれば、俺達はクロウディアに、迫力で殺されていたかもしれない。

「俐斗、由良。ああ、この世界での名前は、リト・シュタルク、ユラ・フォールだったねえ。会うべきその時にまた会おう」

アラフィスタはとんでもない爆弾を置いて、風のようにどこかへ消えてしまった。

「おい、新人。どういうことだ?」

「全ては、さっきアラフィスタが言っていた通りだ」

「現死天皇のトップ、ロレンスといた訳は?」

「拾われたんだ。この世界に来た時に。俺が違う世界に来てしまったと気付いたのは、ロレンスの屋敷の中だった」

「私も、心優しいこの世界の住人に拾われました。彼もまた、死神でしたが」

「そういうことですか。全てのつじつまが合いました」

「色々と、大変だったんだね。シュタルクさん、フォールさん。何かあったら、言ってね。できる限り助けてあげるから!」

「ま、そういうことだ。俺も悪かったな。今後はもう少し態度を改めるよう、気をつける」

はあ、これで、少しは過ごしやすくなったか、と二人は安堵のため息をもらした。

カタコト揺れる馬車のなか。その空気は、明らかに最初と違っていた。

「そろそろお昼時ですね」

由良は、だんだん変わってゆく景色を眺めながら言った。

「そうですね」

とてもにこやかなリヒト。まるで別人なのではないかと問いたくなるくらいだ。

「でも、もう少しで到着する予定ですから、辛抱してください」

「はい」

――俺だけだろうか。この笑顔が、儀礼的に見えるのは。商人だから、と言うだけでは片付かないくらいに、胡散臭い笑顔。裏があるような、そんな気がする。考え過ぎだろうか。


「はあ~、つきましたね、皆さん!」

由良は、体を伸ばして深呼吸をした。

「はい、長旅お疲れさまでした。しかし、戦いがこの後残っていますよ。私の戦略を聞いてください」

一行が着いたのは、山がすぐ近くにそびえる町。

「あれが、かるとっふぃ……、噛んだ。カルトッフェルン山脈か」

「そうですよ」

天気は良好。俐斗は、町を見回した。そこそこの人でにぎわっている。

――確かにここが魔物に襲われたら、被害は大きいな。

「ねえ、シュタルクさん、フォールさん大丈夫でしたか?」

そっと、耳打ちをするフィニラム。

「え、何がですか?」

「何もなかったんですね、安心しました」

心底良かったと、というようなアンドレア。二人には、話が全く見えず、一体何の事だか分らない。思い当たる事と言えば、転移云々の話ぐらいだろうか。

「おい、そこの二人。ちゃんと、戦略は聞いておけ。アンドレアは力がないし、シュタルクは初めての出陣だし、新人は女だろ。それになんたって、初めての討伐だからな」

「もしかして、ちゃんと私の話を聞いていなかったんですか?」

リヒトはまた、メガネの奥で赤い目を光らせていた。

「と、いうわけで、まずはお昼ご飯を食べましょう。丁度お昼どきって言う時間からはずれていますし、お店の中もそこまで混んでいないでしょう」

「腹が減っては戦は出来ぬって言うしね」

「ああ、俺も腹減った」

俐斗もお腹が空いていた。これに関しては、満場一致だ。

「ここら辺は、芋料理が有名ですよ。なんたって、カルトッフェルンですからね、山脈の名前が」

「カルトッフェルンって、どういう意味なんですか?」

由良が訊ねた。

「ジャガイモ、という意味ですよ」

「なんか、恰好つかないですね」

広場には、五人の笑い声が響いた。 



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