表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧主義少年と死神様  作者: 乃石 詩音
第二章 君臨する騎士団
11/24

別世界に疲れた少年に、驚きの花束が贈られる

「おはようございます」

例の、高くそびえるフェンスの前にはフィニラムと、ギルベルトがいた。

「まだ、門番をやらされているのか?」

「今日の午前十時までは門番ですよ。十時一分ゼロ秒からは、魔物討伐第百八十八部隊の隊員です」

フィニラムは、淡い金髪の髪の毛をフワリと揺らして、はにかみながら答えた。それに対してギルベルトは一昨日と変わらず無表情で、ぶっきらぼうで、愛想のかけらもない。それは俐斗にも言えることなのだが。

 俐斗は、騎士団本部を見上げてみてみた。

――他の建物とはくらぶべくもないほどの大きさを誇るこの場所には、魔物をたおすための全てがそろっている……はず。別に俺は、魔物には何か恨みがあるわけでもない。むしろやってみたい事見つかったきっかけだし、感謝すらしているかもしれない。

「何をボーッとしているんだ、新人。今日から任務はあるんだ。そんなところで立ちどまっている暇はない。さっさと行くぞ」

ギルベルトは、巨大なフェンスの鍵を開け、急かした。いつの間にかフィニラムも居なくなっている。

「これから軽くトレーニングをしたら、魔物がちらほら出現する地区へ出る。俺達はそれなりに期待されている。気を引き締めろ」

――は? 俺たちが期待されている、だって? 昨日のあの様子からどう推測したら、そうなるというのだろう。それは、かなり自己評価が高すぎやしないだろうか。

「そのような態度には見えませんでしたが?」

昨日のあの対応からして、期待されているようには全く思えない。

「ファルドフ様の、昨日の様子は、他の部隊と比べればまだマシな方なんだよ」

いちいち説明するのがさも面倒だ、とでもいうかのようにしてギルベルトは言った。何故、騎士団の隊員はそんなにも期待されていないのだろうか? 人が生きる上で害となる魔物を倒す。それが、騎士団員に与えられた使命であり、義務。それが、思うようにできていない、ということだろうか。

「何故そんなにも、俺たち隊員は低く見られているんだ?」

「さあ、何でだろうな。俺には分からねえよ、お偉いさんの考えていることなんて」

――騎士団の上層部は何かを企んでいるのか。

「僕もね、分からないんだ。でも、多分……きっと、死神討伐隊と関係しているっていう話を聞いたことがあるよ」

――ここで、死神討伐隊の名前を聞く事になろうとは。

「あくまでも、噂だけどね」

「ふん、下らねえな」

 騎士団本部の建物の中に入って、しばらく廊下を歩く一行。たどり着いた部屋の前には、リヒトが待っていた。

「今日からよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

リヒトは、相変わらずの重低音で答えた。

「一応、今日の魔物討伐作戦の戦略を練っておきました」

「おう、ありがとうよ」

ギルベルトはこの部隊の部隊長か何かなのだろうか、と、俐斗は推測した。リヒトから、資料を受け取った。

「今日は、カルトッフェルン山脈近くの地方へ出向くことになりますので、一泊することになります。経費で落とせますが、なるべく格安の宿を探しておきました」

――カルトッフェルン山脈? 舌かみそうな名前だな。

「やっぱりクロウディアさんは、すごいね。同じ部隊になって心強いよ」

「お褒め頂き、光栄です」

「ほら、メンバーも揃ったし、トレーニングに行くぞ」

「待って下さい」

「なんだ?」

「実は、今日の朝に突然メンバーの追加を言い渡されたのです」

――っていうことは、まだ、揃っていないっていうことか。

リヒトの陰から現れたのは、女性だった。

――女か。

フィニラムを女性だと勘違いしていた俐斗だったが、いましがた現れた子に限っては、間違えようがなかった。なんたってその子は……。

「花乃木……。何でこんなところにいるんだ……?」

俐斗のクラスメイトだったのだから。

「色々あってね。本当に元島君がいるなんて、びっくりした」

事情を飲みこめない他の三人は、ただ唖然としている他無かった。

 花乃木由良は、俐斗の記憶と変わらない黒髪のストレートを揺らしながら、恥ずかしげに言った。

「どうも、ユラ・フォールです。魔法しか使え無い無能ですが……、よろしくお願いします」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ