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最後のガラパゴス。  作者: 坂戸樹水
4/5


 ガラパゴスの機体は弾け飛んでいる。

ボディーから部品が露出している。もう、駄目だ……



「ガ、ガラパゴス……うぅ、うぅぅぅ……ガラパゴスぅうぅうぅうぅ!!」



 私は泣きながら叫び、その勢いのまま振り返る。

私にタックルしてきやがったクソ外道を、ガラパゴスと同じ目に遭わせてやらなきゃ気が済まない。そうでなきゃ、ガラパゴスが浮かばれない。

復讐よ、復讐! コイツに限っては100倍○しよ!! {※念の為 伏せ字}


「何してくれちゃってんのよッ、アン…… ―― タ……!!」

「は、箱野サン……ご、ごめん! 大丈夫だった!?」


 私は目の前で取り乱す男子生徒の姿に驚愕する。


(いやぁあぁあぁ!! 筧吾クーン!?

私ったら、私ったら、見境も無く筧吾クンに体当たりかます何て、何て駄目駄目な女なの!?)


 走って来たのはイケンメンの筧吾クンだった。

私、勢いとは言え酷い言葉を使ってしまった……筧吾クンは どう思っただろうか……

私が廊下に座り込むと、筧吾クンは窓の外に顔を出し、困り果てる。


「あぁ……流石に壊れてるよな……」

「!!」


 思い出すのは、今朝の事。

【必読】と書かれた携帯電話会社からの手紙には、今後は旧式携帯電話に対する故障や部品の取替え等に応じる事が出来なくなります、ってあったっけ……



(私の、ガラパゴス……)



 流石に顔面蒼白。

筧吾クンは『取ってくるから!』って、ガラパゴスを慌てて回収しに走る。

私も、行かなきゃ……



(迎えに、行ってあげなきゃ……)



 ガラパゴスは私の理解者だった。いつもそばにいてくれた。

それだけ私にとって掛け替えのない、必要不可欠な存在だったの。

ネットも見られるサイトが限りなく少なくなってしまたけど、そんなの幾らだって我慢できた。

だって、私だけだから……

忘れ去られていくガラパゴスの そばにいてあげられるのは……


 筧吾クンは大破したガラパゴスの小さな部品を丁寧に1つずつ拾い上げて、私の元に持ちって来てくれた。

あぁ、ガラパゴス……アナタの中身、初めて見たわ……


「ぁ、あの、その……箱野サン、本当にごめん、俺の不注意で……」

「ううん、、私が不用意にもスキップ踏んでたのが悪いの……」

「か、重ね重ねごめん、、楽しそうな所、水を差して……って、あのっ、

こうゆう言い方はアレ何だけど、、俺ね、今 使ってる新型が1番 手に馴染むって言うか、前の機種になるんだけど、使い勝手が すごく良くて気に入ってるんだ、」

「……」



(そう。そんなに そのスマホに魅力を感じているのね……

私なんて眼中に無いって、どうせならハッキリ言ってくれれば良いのに……)



「だからっ、箱野サンにもコレを薦めたいなって……俺と お揃いになっちゃうんだけど、」



(え?お揃い?)



「どうだろう? 今日これから買いに行かない? 勿論、弁償するからっ、」

「……今日? 今から? 買いに?」

「うん!」

「……2人で?」

「箱野サンさえ良ければ!」


 何かが私の中で浄化されて行く。

私は筧吾クンの掌の中で安らかになったガラパゴスを見つめる。



(ガラパゴス……もしかしてアナタ、まさか、この為に……?)



 ガラパゴスは悟っていたのかも知れない。

もう自分には部品が残されていないと……何れ消え去る運命なのだと……


(最後まで私との絆を……ガラパゴス!!)


「行きます」

「ん?」

「買いに。今から。2人で。お揃いの」

「ぁ、あぁ! 良かった!」


 私が頷くと、筧吾クンはホッとした満面の笑みを浮かべた。




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