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最後のガラパゴス。  作者: 坂戸樹水
3/5


 私が困惑していると、筧吾クンは怪訝する。


「どうしたの、箱野はこのサン」

「え!? ぁ、ぁの、ソレがその……えっと……」


 私が口籠もっていると、我が女子友がココぞとばかりに捲し立てるのです。


「音子ってば、まだガラケー何だよねぇ!」

「それも、最近の機能は片っ端から非対応なんだよねぇ!」

「ぢゃ、私達が連絡係になりましょ~~」


 うわぁあぁあぁあぁ!! 仲間ハズレ来たぁあぁあぁ!! ギャフン!!

コレか、コレなのか!? 

小学生が同じゲーム持って無いと一緒に遊べから、仕舞いには友達の輪から零れて行くドーナツ化現象ぉぉぉ!!

親の財布を泣かせている事に早く気づけ! 大人になれ、クソガキ共よ!!


 私が現実の荒波に踏んだり蹴ったりされているのを哀れむように、筧吾クンは苦笑。

そして 手元の鞄から紙とペンを出して、何やらサラサラと書き綴る。


「それじゃ予定が分かったら、箱野サンは俺に直接メールくれるんで良いかな?」

「え!?」

「コレ、俺のメアド」

「え!? ぁ、ありがとう!!」


 紙に書かれた筧吾クンのメールアドレス。

それを受け取れば、私の脳内は薔薇が咲き乱れる。


(ご、ご馳走様です!!

ガラパゴス!! 私とアナタの絆が今こうして形になった!! 見事な連係プレーよ!!)


 グループメッセージは集団会議。

予定を一斉送信するには便利な機能だけれど、2人きりにはなりにくいわ!

それに比べて、どうよ! 直メよ、直メ! 今時 珍しい真心いっぱいの直接メール!

テンプレだとしても、筧吾クンは私にだけ向けたメッセージを送信してくれるのよ!

どぉ!? コレが旧式の威力! 古き良きアンティーク舐めんじゃないわよ!


 我が女子友達は苦虫を潰したような顔をしている。ザマぁないわね、苦虫どもが。

良い? 試合に勝っても勝負に負けたら意味が無いのよ?

アナタ方は精々 便利な端末を使って、便利機能で便利に遣り取りをするが良いわ。

私達は手間隙かけて絆を強める。その他 大勢から一足先に脱却よ!!



(何だろ、清々しい…)



 私は手を振り去って行く筧吾クンの背を最後まで見送り、ガラパゴスを抱き締める。


(コレまで随分と恥をかかせて悪かったわね、ガラパゴス。

けれど、アナタの魅力は恙無く発揮されているわ。

その証拠にホラ、新人類達は私達 旧人類を羨ましそうに見ているじゃないの!)


 私は妖笑を浮かべ、髪を掻き上げる。


「大丈夫よ、コレ以上の抜け駆けはしませんから」

「「「今日ばかりはアンタのガラパゴスが憎らしい……」」」


 遂にガラパゴスをフルネームで呼ぶようになったわね?

私のガラパゴスは ただではやられない。

やられ○ら○り返す10倍返○だ!! {※念の為 伏せ字}


(ああ、飲み会が待ち遠しい! 1人で ゆっくり筧吾クンへのメールを打とう!)


 私は学食に女子友を残し、軽やかにスキップしながら ゆっくり出来る図書室へ。

そこに、前方不注意で飛び出して来る愚か者あり。

私は避けきれずに、ブチ当たる。



ドン!



「きゃぁ!!」

「ぅわ!」


 スポーーーン! と、私の手からガラパゴスが飛び立つ。



(ああ!! ガラパゴス!!)



 ガラパゴスは弧を描く。私は手を伸ばす。

もうコレ以上、ガラパゴスを傷つけてはならない。その一心で。



「っ、あ、あぁあぁあぁあぁ!!」



 私の努力も虚しく、ガラパゴスは開いている窓を飛び越え、一気にダイブ。

ココは3階よ、いくらガラパゴスだって、ただでは済まない……


「いやぁあぁあぁあぁあぁ!!」



―― ガシャン!!



……

……



(ああ、ガラパゴス……

3階の高さからだって、今アナタがどうなっているか何て事、私には お見通しなのよ……)


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