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本サイト、初投稿になります。(他サイトにて重複投稿作品です)
まだ機能に慣れておりませんが、普段は書かないコメディーを頑張って書いてみました。
サラッと読んで頂けたら嬉しいです。
初心者ですのでアドバイス等も心からお待ちしております。
どうぞ宜しくお願い致します。
皆様の目に留まりますように…
私の目覚めを約束する物。それはガラパゴス。私の携帯電話。
私が寝坊しないように、アラームで起こしてくれる。
PiPiPiPi PiPiPiPi……
単調な音が良い。ファミコン時代の安っぽい音が良い。ノスタルジー。
「おはよう、ガラパゴス」
歯を磨きながらドアポストに手を突っ込む。
どうでも良いチラシばかりだけど……
「ん? 通信会社からの お知らせ? 何よ、コレ」
【必読】と封筒に書かれているので、取り敢えず読んでみる。
(えぇっと、なになに?)
【お客様に ご愛用頂いている旧式携帯電話の製造中止のお知らせです。
この度、当社は全機種をスマートフォンに切り替える事となり、
今後、旧式携帯電話に対する故障や部品の取替え等に応じる事が出来なくなります。
速やかに新型携帯電話に変更手続きを頂けますよう、何卒 宜しくお願い致します。
敬具】
「何、コレ……?」
(速やかにって……今すぐ あのクソ高いニュータイプに乗り換えろって?
少ない小遣いでローン組んで、とっとと買いに行けって?)
私は枕元で横たわっている携帯電話を手に取る。
「永遠に使えるわよ、この子はぁ!!」
*
「ギャハハハ!! だから言ってンだってぇ、音子ぉ。好い加減、新型に替えろって!
大体ソレ、グループメッセージもSNSにも接続できないんでしょぉ?
今時 有り得ないっつーの!」
「だいぶ傷んでるみたいだし、
あぁホラ、ヒビ入ってる~充電の差込口のフタも無くなってる~~
壊れてデータが飛んぢゃっても修理に出せないんなら、絶対 買い換えた方がイイですって」
「今さぁ、新機種ヤバくない!?
カラバリ多いしさぁ、私、買い換えちゃおうかなぁ!」
「アンタはこの前 替えたばっかりでしょ? 今は音子の旧式のさぁ、」
「―― お黙りになって……」
大学の学食でお菓子をつつきながら、我が女子友は好き勝手な事を言っている。
私が傷心の余りに声を淀ませると皆 静まり返るけど、流石にそれは引きすぎじゃない?
「私のガラパゴスは、まだまだ現役を続行できる!
私の不注意で傷物にしてしまったけれど、操作性には何の問題も無いし、
スタミナだって充分よ! 未だ2日にも渡る放置プレイにだって耐え忍ぶ!」
私が力説すると、煎餅をバリバリと食い散らかす鰐口強子サンが首を傾げる。
「ガラパゴス? 何それ?」
そ、それを知らずに、私のガラパゴスに悪態をつく何て……けしからん女ね!!
「ガラパゴス携帯電話! 略して【ガラケー】!」
「あぁ、ガラケーか。最初からそぉ言えばイイのに」
「な、何を言ってるの!? 人間の都合で勝手に略しておいて、とんだ言い草ね!
鰐口サン、アナタだったらどう!? 名前をワニキョウとかって略されたい!?」
「音子、頭ダイジョウブかぁ?」
「大丈夫? なのは アンタ方の方だ!」
私が不貞腐れると、隣の席でポッキーを食べ続ける前歯利子サンが楽しげに言う。
「音子チャンはね、自分のケータイに名前つけてんのよ。【ガラパゴス】って!」
「ぅわ。ネーミングセンス悪ぅです」
「な、何ですって!? ガラパゴスはね、
“独自の進化を遂げたガラパゴス諸島のような”と言う奥深い意味があって、生みの親に名付けられたのよ!? 猿尻赤美サン、アナタだったらどう!?
自分の名前、ネーミングセンス悪ぅです~~って言われても平気!?」
「音子サン、頭ヤバイですよ?」
あぁ、駄目だわ。
こんな世間知らずな友人に愚痴ったのが間違いだった。
新型携帯電話の誘惑に負けた敗者達にガラパゴスを理解する頭なんか無い。