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百合の勇者  作者: otsk
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ドラゴンに会いに行こう

 私とティンクル君が仲良くしていると、大概、邪魔が入るのだが、この人もいい加減に私離れをしないのだろうか。

 旅を始めたばかりでそんなすぐに見つかるものだとは思ってないけど。

 退屈はしないが鬱陶しいのも確かである。


「リリアちゃん。行き先とか決めてるの?」


「いや……特にないですけど、アリスさん、どこか行くあてがあるんですか?」


「せっかく、モンスターと友好を深めようってことだから、話せるモンスターがいいと思うんだよお姉ちゃんは」


「随分年の離れた姉ですね」


「ロロちゃんと便宜上は二つしか変わらないし!」


「便宜上?」


「なんでもない」


 ティンクル君が反応したが、どうやら姉の正式な年齢は分からないらしい。

 父さんが拾った時に120歳とか訳のわからないこと言ってたらしいけど、どう見ても見えないしややこしいために12歳に下方修正したとか。

 実年齢はお姉ちゃんの本当の父親の魔王に聞く予定だったのだが、聞く前に討たれてしまったので、結局謎のままだとか。

 あの姉、本当に何歳なんだろう。


「お姉ちゃんはともかく、アリスさんは歳をとらないとおかしいです。なんで未だにそんな瑞々しい肌を保ってるんですか」


「ストレスフリーだからだよ。抱え込むと兄さんみたいに若ハゲが進行するんだよ。ティンクル君も気をつけてね」


「いや、王様ハゲてないですし嘘つくのはやめてください」


「おかしいな。最近生え際気にしてると思ったんだけど」


「戻ったら王様に言っておきますからね」


「兄さん余計に気にするからここは黙っておいてあげるのが優しさなんだよ」


「アリスさんが言ってると悪意しか感じないんですけど……」


 自分の兄をなんだと思ってるのだろうか。

 臑齧りするための存在だとか考えてそう。

 王様のために早く、この人の結婚相手を見つけてあげないと王様が可哀想だ。

 一番妹に迷惑かけられてる王様って何なんだろう。


「よし、兄さんのためにも相手探しだよ」


「あれ?目的ずれてません?」


「なんだっけ?」


「モンスターに会うって話ですよ……」


「おう、そうだった。そうだった。ここから西の方角に行った方にね、ちょっとした洞窟があるんだよ。そこに私たちを助けてくれたドラゴンがいるの」


「ドラゴン?」


「(私が以前に怒らせたことは黙っておこう)」


「なんか言いました?」


「ううん。まあ、今もいるか分からないけど、行ってみる価値はあると思うよ。一応、私のことは知ってると思うし」


「お父さんでもお母さんでもなく、アリスさんという点に果てしない不安を覚えるんですけど……」


「なんてことを言うのかしらこの子」


 この話も聞いた記憶がある。

 お父さんとお母さんが旅を始めたばかりの時ぐらいに訪れて、一緒に旅をしていた人がボコボコにしたとか。

 ちゃんと盛らずに自分はその時役立たずだったとか言っていたあたりは、お父さんは信用に足るのだと思う。

 アリスさんは、国から近いこともあり、お父さんに連れてってもらったそうだ。その時はあくまで戦闘よりは顔合わせみたいな意味合いだったらしいけど。

 二度目の邂逅は、魔王城が空中で崩壊した際に、お父さんの元パーティメンバーの人が連れてきたらしい。

 だから、一人でドラゴンを手玉にとるって、実力がおかしい気がする。

 そんなにそのドラゴンが弱いのかと尋ねたくなるが、元パーティメンバーの二人がおかしかっただけだとか。

 お父さんより力のゴリ押しで強かったのはその2人を除いて知らないと言うぐらいだし。

 あ、あとおじいちゃんぐらい。

 私が小学校に上がったぐらいに初めて存在を知った。

 お父さんが行くことを渋っていたらしい。

 そんなに悪い人には見えなかったが、色々あるのだろう。

 おじいちゃんのせいで学校に行けなかったとか愚痴ってたし。

 お父さんのためには一切援助しないが、お母さんと私のためならいくらでもしてやろうとか言ってたけど、今のところどうなんだろうか。

 私が見たときはただの農家だったような気がするんだけど。


「アリスさん」


「ん?」


「私のおじいちゃん知ってますよね?」


「ソード君のお父さんね。知ってるよ。農家だから、時々、城に野菜を献上してくれるんだよ。ナスだけは持ってこないでって言ってるから、それだけを避けて持ってきてくれるあたり、あの人はいい人だよ」


 この人のいい人の基準もずれてる気がする。

 姫よ、30過ぎて未だにナス嫌いなのか。食えよ。

 私も好んで食べないけど。

 ……だから、胸の成長が悪いとかは思いたくない。

 だって、あれはたんぱく質だし、脂肪だし。

 大きくても肩凝るらしいし。

 ソースは横の人。

 この人だけは私より年下の時から発達具合が凄かったらしいとのお母さん談。


「半分とは言わずとも、三分の一私に渡しても文句は言われないです……!」


「何の話?」


「何でもないです。西の方ですね。どれぐらいかかりそうですか?」


「そうだねぇ。まあ、1日2日で着くと思うよ。その間は野宿かなあ」


「お姫様が野宿なんていいんですか?」


「前の旅もそうしてたしね。文句は言ってられないよ。これなら合法的にリリアちゃんと一緒に寝られるし、ハアハア」


「私を一人にするか、ティンクル君と一緒のところにするか選んでください」


「すでに私のことは除外だー。信用が地に落ちたどころか、マイナスだー」


「分かってるでしょう」


「どうやったら好感度戻せますかね?」


「戻る戻らない以前に元の評価を気にしてください」


「ロロちゃんぐらいはあったよね!」


「姉の五分の一ぐらいです」


「ぐはっ」


 親族はあまり好まない人が多いそうだが、姉のことは私は好きである。

 好きでなかったら、こうして追いかけて旅に出たりもしないだろう。

 だからこそ、あまり危険なことをして欲しくないのだが。


「とりあえず、ドラゴンに会いに行きましょう。ほら、そこで傷ついてないで、早く起き上がる」


「姫を冒涜してるよ。一国民にあるまじき行為だよ」


「王様なら、間違いなくあなたが悪いと言いますので、何も問題ないです」


「……せめて、ご機嫌とりぐらいに道案内ぐらいはします。こっちです……」


 もうガイドでいいんじゃないだろうか。

 この人、記憶力はいいから、行ったところならそうそう迷わずに行けるだろう。

 それでも、やはり不安は残るが、今更気にしても仕方ないので、私たちはその案内に従うことにした。


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