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百合の勇者  作者: otsk
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正直不安です

 夜になりました。

 ティンクル君ではなく、アリスさんを縛り付けておくとかいう、謎な事態があったわけですが、理由は言わずもがななわけです。

 寝る格好はジャージとかいう色気の欠片もない格好だけど……。

 いや、旅に色気求めてどうするんだろう。

 男の子が一緒だから、そういう思考に微妙に寄ってるのだろうか。


「だー!誰がレズビアンじゃあー‼︎」


「だ、誰も言ってないよ」


「ゴメン……なんかテンションがおかしくなってるみたい」


「でも、よかったよ。旅の仲間ができて」


「こっちも見張り役が出来たからwin-winだし気にしなくていいよ」


「リリアちゃん、私はいつまでこの状態なのかな?」


「夜が明けるまでそうしておいてください」


 まだ縛り付けておいた。

 一応、お風呂に入る際には外したんだけど、なぜか自分から再び拘束されました。

 何がしたいのだろうか。反省の意でも示してるのだろうか。


「リリアちゃん。本当に一緒の部屋でいいの?」


「私みたいな色気のない子じゃ、起こることも起こらないよ……」


「リリアちゃん、可愛いと思うけど……」


「こらー!そこ口説くんじゃない!」


「そんなつもりは……」


 もうあの人は口も塞いでおいたほうがいいのだろうか。ろくに会話もできないような気もしてきた。

 ただ、そこまでするとさすがに犯罪臭がするし、それと私の周りの人は過保護な人が多いのだ。

 初恋もまだとか言ったけど、そのあたりに要因がある気がする。

 初恋がまだということは、裏を返せばそういうことに免疫があまりないとも言える。

 だから、セクハラに対する嫌悪感が大きい。

 自宅の場合はお母さんもお父さんもいたからアリスさんが特にちょっかいをかけてくることはなかったけど、いなくなったからタガが外れたようだ。

 すぐに監視できる人が見つかってよかった。


「ふああ。そろそろ眠たいね。電気消していい?」


「あ、せめて布団に入ってから」


 いそいそと潜り込んで、アリスさんにはソファに寝転んでもらうことにした。国の王様以外のお偉いさんが見たら、私は国家反逆罪だろうな。姫に何してるんだという話で。

 どう考えてもあちらが悪いんですけどね。そんな人と一緒に置かないでもらいたい。今からでも一度国に戻って、王様と交換したいぐらいだ。

 今更後悔しても遅いな。

 もう寝よう。暗くなったし、私も疲れた。でも……


「なんか……正直不安だ……」


 時間はよく分からないけど、お昼寝たにも関わらず、枕に顔を埋めて私はまた眠りに落ちた。


 ーーーーーーーーーーーーー


「う〜」


 なんだか寝苦しくて夜中だというのに目覚めてしまった。

 原因は夢ではない。物理的に何か締め付けられてるような……。


「んにゃ〜」


「あれからどうやって抜け出したのよ……」


 手首を縛っておいたのに、それを解いたのか、私が寝ていたベッドに潜り込んで来ていた。

 はあ……移動させても起きるだろうし、どうしたものやら。

 私が移動するか……。

 あまりソファで寝るのも体痛めそうだけど。

 ごそごそしている音に気づいたのか、ティンクル君のほうが体を起こしていた。


「あ……ごめん。起こしちゃった?」


「どうしたの?寝れない?」


「だ、大丈夫大丈夫。ちょっとトイレに行きたくなっただけだから、ティンクル君はそのまま寝てていいよ」


「……追い出されたようだね」


「う……」


 なんでこう無駄に鋭いのだろうか。

 下手にごまかすものじゃないな。


「いいよ。僕のところのベッド使って。さすがに女の子がそこで寝ようとしてるのを見て見ぬふりをするようなことはしないよ」


「で、でもティンクル君が借りてるんだから、私たちのほうがガマンしないと……」


「気にすることないよ。そんなところで寝て風邪を引かれたらそれこそ、こちらが申し訳ないし」


「……優しいんだね」


「普通の女の子には優しくしないと」


「普通……か」


「何かおかしいかい?」


「ううん。ありがと。じゃ、一緒に寝よっか。私は寝顔を見られるぐらい恥ずかしくないから。……お触りはNGだよ」


「そんな度胸があるのなら、僕はこうして旅に出てないと思うんだ」


「ふふ。そうだね。じゃ失礼」


「ぼ、僕は向こう向いて寝てるから」


「じぃ〜」


「いや、そんな効果音付きで視線を向けられると気になって寝れないんだけど。ただでさえ……」


「ただでさえ?」


「何でもない。おやすみ」


 ティンクル君はそのまま寝てしまったようだ。

 男……だよね?

 何度同じ疑問を抱くのかよくわからない。

 ただ、触って確認するわけにもいかない。

 しかし、男臭いというわけでもない。

 妙に安心感を覚える匂いだ。

 べ、別に興奮してるわけじゃないやい!

 ……寝よう。何をしてるんだ私は。

 とりあえず、あまり迷惑にならないようになるべく端によってから眠りに再びついた。

 あんだけ寝たくせによー寝れるもんだ。しかも男の子の隣で。

 意外に神経が図太いんだなと感心するとともに、逆にまた不安を覚えていた。




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