それぞれの選択(2)
人生には岐路がある。
いつか選択して進まなければならないのだ。
先延ばしにしても、回り回ってそれはいつか選択するべきことなんだろう。
でも、その選択は間違いだったと後悔するかもしれない。
あの時にあっちを選んでおけば違った未来を送れたのかもしれない。
そう考えるのだろう。
でも、過去には戻れないのだから、選択した道を責任もって進んでいくしかない。
いつか、その選択が正しかったって思えるのかもしれないから。
「お姉ちゃん。これから国に帰るわけだけど、働く気ある?」
「そんな口調強めなくても……」
「これだって働いてなかったから飛び出したんでしょうが‼︎」
「リリアちゃん。どーどー」
「ティンクル君!これは由々しき問題なんだよ!アリスさんは腐ってもそこそこ有能だから、姫の役割をやればいいだけだけど、お姉ちゃんは本当に何もやることがないんだよ!」
「べ、ベビーシッターやるよ」
「今でもお世話されっぱなしの人が人のお世話できると思うなー!」
「じゃあー私は何をすればいいのさ⁉︎」
「逆ギレするな!だから、お母さんの店手伝えって昔から言われてたでしょ⁉︎」
「今更だよ!最近いい子が入ったからロロちゃん要らずだね〜とかほのぼの言われちゃったし!」
「どう考えても胡座かいてたお姉ちゃんが悪いでしょ!」
「どうしましょう。姉妹ゲンカが収まらないんですけど。アリスさん」
「好きにさせればいいよ。私も軽くリリアちゃんから貶された気がするけど、自業自得ですので」
こうやってアリスさんみたいに自分の非を認めればいいのに、私の姉は認めようとしないのだ。甘やかして育てすぎでしょうに。
人格形成は3歳の頃までに終わるとかいう話は聞きません。
ただ、お屋敷の前で喧嘩してたので、見かねてミーナさんが出てきた。
「ロロちゃん」
「どしたの?ミーナ」
「あんまり妹さんに迷惑かけちゃダメだよ。今からでも努力すればできることなんていくらでもあるんだから。努力って言っても1日、2日程度じゃダメだよ。一年はやらないと身につかないものかもしれないんだから。誰も努力せずにできるようにることなんてないんだよ」
「うう……ミーナは誰の味方なの?」
「私はロロちゃんの味方だよ。だからこそ、一人前になって欲しいんだよ。このままだと本当に妹さんに寄生してそうだし……」
「なら、私に育成指南してください」
「私はまだ子供がいるからウィナさんやソードさんに頼んでね」
「うわ〜やんわり断られた〜」
お姉ちゃんはしばらくはミーナさんに任せよう。
先にここに残ると言っていたアックスさんにお礼とか言っておかないと。
「アックスさん」
「リリアちゃんか。お世話になったね。しばらく俺はここにいるよ。ティンクルのことよろしくな」
「こちらこそ。ありがとうございました。頑張ってくださいね。……あんまり大したこと言えなくて申し訳ないですけど」
「いや、十分だよ。ま、兄貴分としてあいつが一人前になるところを見届けたかったんだけどな。今度会った時そうなってるように祈ってるよ」
「一人前……ですか。どうやってら一人前って認められるんでしょうね?」
「ま、俺も頑張るけど、きっと何十年経っても認められないかもしれない。ま、ティンクルに関してはリリアちゃんが認めてくれればそれでいいだろう」
「まだまだ頼りないですけどね」
「逆を言えばリリアちゃんが頼りになりすぎるんだけどな」
二人して笑いあう。
その様子を見てかティンクル君もこっちに来た。
「どうかしたの?」
「んー?内緒」
「そうだな。ま、こんないい彼女はお前にはもったいないって話だ」
「なんか絶対に違いそうな笑い方だったけど、深く聞いたら僕が傷つきそうだから聞かないでおく」
「そいつが懸命だな。ま、がんばれよティンクル」
「そっちもね。アックス」
拳をぶつけて、今度は3人で笑う。
新たな旅立ちみたいなものだ。笑いあって行けるのがそれが一番いい。
「それじゃ、そろそろ出発しようか。ミーナさん。ありがとうございました」
「いえいえ。私がもてなしたんじゃないですしね。ロロちゃん。リリアちゃんにあまり迷惑かけちゃダメだよ。リリアちゃんは思春期真っ盛りの乙女なんだから」
「乙女はお姉ちゃんに冷たくしないと思うの」
「お姉ちゃんが怠惰じゃなければ私も説教しません」
「アリス〜。アリスはどうするの?」
「あ〜うん。本格的に縁談の話があれば受けようかな……」
こっちはこっちで憂鬱そうだけど、なんとか前に進もうとしてる。
元々ポジティブな人なのであまり心配はすることはないだろう。いい人に当たればいいけど……。
最終的にはお屋敷の人がみんな出てきてくれて見送ってくれた。
四人になったパーティメンバーで手を振って、お屋敷を後にした。
何か忘れてるような気がしたけど、すぐに思い出せないということは些細なことだろうと思い、魔法使いの国を発った。




