調査兵団(2)
「却下だ」
「「え〜」」
頼み込んだが、すぐに無下にされた。
「ケチンボ」
「ろくでなし」
「陰険野郎め」
「それが初対面の大人に対する言葉か?ああん?」
若干青筋走ってるようにも見えるけど、気にしない。
「なんでダメなんですか。理由も言わずに却下されても、はい、そうですかって引き下がれませんよ」
「君はソード君にそっくりだね……さすがに親子か」
どこが似てるんだろう。お父さんは尊敬してるけど、似てるって言われたら全力で否定したい。お母さんだったら大歓迎である。
頼み込んでる相手というのは、カルマ・ヴィランさん。
ミーナさんの旦那さんで、職業……何だっけ?
「珍しい石を探してる人?」
「あれば持って帰るけど、別にそれを主として仕事をしてるわけじゃない」
「それはともかくとして理由言ってください」
「人は足りてる。お遊びじゃないんだから、それにソード君とウィナちゃんの子を危険な目に会わせるわけにはいかない」
「女だからってバカにしないでください。いざとなれば守ってくれる人もいますから」
「……君かな?」
「は、はい」
「……どうにも不安だが……それで、アックス君だっけ?君がメインで頼んでるんだよね?」
「本当は俺一人の予定だったんですが……」
なんで付いてきたんだ、と言わんがばかりに睨まれる。
目を逸らして、特に理由はないみたいな意思表示をしておく。
まあ、実際のところそんなに理由はないのだ。出会ってからというものの、そう大して一緒に行動をしてなかったから、単純にアックスさんがどんな人か気になるだけである。
「俺が今、最高指揮官だ。デスク仕事だったリーチェルさんの代わりに足となってやってたのが、いつの間にやら大部隊になっちまった。こんな仕事だから男しかいない。だから、リリアちゃんを連れて行くのは賛成できない」
「いいです。私、ティンクル君と一緒にいますから」
「火に油を注ぎかねないんだがな……」
「ちなみに今、どれぐらいの人がいますか?」
「15はいるか……そもそも、君達2人にそんなやる気があるようには見えん」
「私、戦力になりますよ〜」
「何のだ。こんなところで押し問答してても答えは変わらん。アックス君だけなら、連れて行っても構わないが。将来、こういうことをやってみたいと言うのならば、なかなか就く人が少ない職業でもあるからね」
「あの〜、で、結局何してるんですか?」
「気本的には、発掘作業だね」
「何の?」
「さて、なんと言ったらいいか……ま、いわゆる海中都市ってやつだ」
「海中都市?……あったとして、人が生きていけるんですか?そもそも水圧とかも問題だし、空気だってないですし」
「……そういえば、リリアちゃんは勇者だったソード君の娘さんだったね。なるほど……」
「あの……何か?」
「連れて行かないという話をなかったことにしよう。そこの彼氏君か?俺からも厳重に言っておくが、守るのは君がするんだ。いいね」
「は、はい!」
「出発は2日後だ。やることは現地に着いてから説明する。最低でも一週間は帰れないと思っておけ」
「……あの」
「なんだ?別にやめると言っても止めはしないぞ」
「アリスさんとお姉ちゃんどうしましょう」
「……仕方ない。連れて行こう。どうせ、まだ旅を続けるのだろう?」
「ええ。……もう、何が目的かも分かんないですけど」
「もしかしたら、それが見つかるかもしれない。まあ、かく言う俺も、何の目的もなしに、ただ、自分の国から出て行きたくて旅に出たこともある。こうして、ここで結婚して、仕事ができてるんだからどこかに立ち寄ることで何かしらイベントがあるのかもしれない。それがあるかどうか、君たちの運と行動次第だけどね。さて、まだやることが残ってるから出てった出てった」
私たちはそのまま追い出された。
三人、カルマさんの書斎前に立ち尽くす。
なんとなく言われた内容に頭が追いついてないような状態だ。
そして、アックスさんが口を開く。
「お前らは一体何がしたいんだ?」
「アックスの手助けだよ」
「いらんわそんなもん。大体、リリアちゃん一人満足にさせられてない奴にどうこうされたくないっつーの」
「いやいや。正直な話は私の進言ですから。まあ、私が満足できてるかどうかなんて、結局、死ぬまでわかりっこないですし」
「リリアちゃん……本当に15歳?」
「こんなあどけない少女捕まえて、年齢詐欺を疑うとは」
「いや、そうじゃないんだけだと……まあ、そうなるか……」
渋々といった感じだが、納得してくれた……のかな?
まあ、どこで納得をしたのかは置いておくことにする。
そうこうしているうちにばあやさんにご飯を呼ばれたので、三人で向かうことにした。
2日後か……一体、何をするんだろう。
結局、具体的なことは何も聞かずじまいだった。私が気にしてもしょうがないか。
とりあえず、ここに調査兵団の結成だ。
そんな大それたものでもないか。それでも、ちょっとしたお仕事っぽいことに少し心が躍っていた。




