姉を探してます
お父さんは、前王様からかなりひどい待遇だったらしい。勇者だというのになんて有様なのだろう。
理由はおじいちゃんが王様をこき使ったせいで、息子の自分に飛び火が来ただとかなんとか。
それに比べれば、今の王様はとても親切だ。とても、そんな人の血を受け継いだようには見えない。
理知的で、顔も端正だし。
さすがに、自分の父親と年が近い人を好きになるとかはないけど。
でも、よくよく考えれば、うちの両親は若すぎな気がする。
周りの親たちは40過ぎが大半なのに、いまだに30半ばってどんだけ早く私を産んだのよ。
言ってなかったが、あともう一人妹がいる。ただいま9歳。
離れるわけにはいかないとお父さんが言ってたのはそういうことだ。
ただ、うちの家族より誰より懐いていたのが、この隣にいるアリスさんだったので、若干ニートの気質が見え隠れしている。
妹の行く末が心配だ。
「リリアちゃん。人の顔を見てため息つかないでよ」
「すいません。さすがに失礼でしたよね。今度からは見えないようにやります」
「公言するのもどうなのかな……」
若作りをしているのか、元々童顔なのか分からないけど、少なくとも30台に乗った人とは思えない顔の造形をしている。
私と歩いていれば、この人の方が背が低いのでまたも姉として私が扱われるのだ。
なんで周りにロリしかいない!
しかも年齢詐欺‼︎
「怖い顔してどうしたの?」
「いえ。ただ、こうして姉の写真を持ってきたのはいいんですが、これで『姉を探してるんですが、知りませんか?』って聞いたところで『姉?君の方がじゃなくて?』って聞かれるに決まってるじゃないですか!なんで年相応に成長してくれないんですか!」
「ロロちゃんは魔王とエルフの子供だから私たちと成長曲線が違うか、今が全盛期の姿だから、死ぬまでそれを保ち続けるかの話なんだよ。でも、私は若作りなんだよ。徐々にシワが目立ってくるんだよ……婚期逃したなんて言われないように相手を見つけに行くんだよ……」
なら、なぜ紹介された時に嫁に行かなかったのかという話にもなるのだが、アリスさんは私の父さんが好きだったらしい。
話を聞けば、お母さんがいたから身を引いたって話だけど、旅から戻ってニート生活をしてたら色々やる気をなくしたとのことだ。
一念発起して、こうして出歩いてるのはいいことではあるのだろう。
……なんで親近くほどの歳も離れた人のことをまだ学生でもあり思春期の私が心配しなければならないのだろう。姉があんなんだし、頼れたのがお母さんと王様しかいないのはどうかと思う。
いや、まあ、お父さんとお姉ちゃんが嫌いとかいう話ではないんだけど。
「アリスさん。お姉ちゃんが行ったのはどこなんですか?」
「たぶん……魔法使いの国じゃないかな。ロロちゃんの親友がいるところだから」
「魔法使いの国……」
随分遠いところだ。今でこそ線路が開通して1日かければ着くようになったけど、今現在、その線路は地殻変動だとか、自然災害だとかで壊れてるらしいのだ。
なんだよ、私が旅に出るなんて言ったからかこの野郎。
「はぁ……歩いて行くなら一ヶ月ぐらいは覚悟しないといけないですよね」
「旅なんだからいいじゃない。リリアちゃんも学校に退屈してたんでしょ?」
「まあ……そうですけど。女二人旅は安心な面もありますけど、不安な面もありますね」
「私が権力使って脅しをかけるから暴漢に襲われても大丈夫」
「うちの国も随分偉くなったものだよね……」
「じゃあシチュエーションをしてみよう」
「余程の限り自分一人でも撃退できると思います」
「そう言わずに。リリアちゃんのお父さんみたいな屈強な人が出てきたらリリアちゃんだけじゃどうしよもないよ」
「お父さんは魔法を使えないから私でも勝てると思う」
「そこは置いておいて、隙を突かれてこう羽交い締めにされたとしよう」
「う……ん……ちょっ……どさくさに紛れて胸を揉まないでよ」
「もう少し大きさがあると好ましいけど、リリアちゃんは胸まで大きくなったらそれこそひんしゅく買うからこのままがいいかも」
「大きなお世話だよ!いいよ!そんな脂肪の塊が胸に乗っかってなくても支障はないし!」
「好きになった人が巨乳好きだったらどうするの?」
「そんな人はこっちから願い下げだよ……」
そんな胸にしか人の価値を見出してないようなやつは私の眼中にない。
でも……
「やっぱり、信頼のおける男の人はいた方がいいですね。私のことはアウトオブ眼中だとなお可です」
「なるほど。私とイチャイチャしてればいいと」
「むしろ婚期を逃しかけてる人が早く幸せになってください。こっちの胃が痛いです」
「流石リリアちゃん!私のおっぱい揉まさせてあげる!」
「いらないです……」
「ついでだしリリアちゃんの下着も確認しておくか」
「しなくていいです!スカートめくらないでください!」
そういや、お父さんからアリスさんは女の子の方が好きなんじゃないのかという話を聞いた。この人が結婚できない一端はそこにあるのではないだろうか。
「白か〜。思春期なんだからもう少し色っぽいの履いても……」
「はあ……はあ……」
思い切り蹴り飛ばしていた。
私は悪くない。私は悪くない。
「痛いです……でも年を考えればそれでいいのかもしれないです……ごちそうさまです。今日はこれをおかずにご飯食べます」
「忘れてくださいー‼︎」
杖で我が国の姫をタコ殴りにしながら懇願していた。
もうヤダ……この人。
どこか着いたらもう少し可愛いの探してこよう……。
気絶した姫を放置して、近くの国へと覚束ない足で歩き出した。
出たばかりなのに、不安しかなかった。
絶対人選を間違えた。どこかついたら頼れる仲間探そう。