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百合の勇者  作者: otsk
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姉妹の攻防(3)

 腹ごしらえを済ませて、開始30分前にフィールドに立っていた。

 状態の確認をするほど殊勝な心構えをしていない。だけど、早めに来ておけば、お姉ちゃんが来たのをすぐに確認できると思ったからだ。

 ギリギリに来るか、そもそも来なかったら意味なんてないんだけど。

 流石に一人でいるのも不安、というか一人でいることがなかったから、一人きりに違和感を感じていた。

 だから、アックスさんにも無理を言って一緒に来てもらった。ただの用心棒みたいなものだけど。根本的に私はアリスさんから離れたかっただけな気がする。

 あの人と出来る限り一緒にいなければ被害にあうこともない。

 ここでバトルしてるよりよほど怖いのだ。私の身持ちが危ない気がする。

 もう、いっそのことアックスさんに頼んでみよう。


「アックスさん。頼みがあるんですけど……」


「さすがにトーナメントをいじるとかは無理だけど」


「いや、そんなことは頼まないし、頼む必要性がないです。アリスさんのことなんですけど……」


「リリアちゃんは、大丈夫って言ってなかった?」


「暴走したら押さえこめる自信がないです。あの人、結婚してないんでよかったらですけどもらってもらえませんか?」


「ぼくが?」


「ええ」


「綺麗な人だとは思うけど、どうにも脈がなさそうだったんだけど……」


「無理矢理にでも作るべきです!あの人、私の国の姫なんで玉の輿ですよ!」


「逆玉じゃないか!なんか情けなくないか⁉︎」


「いや、でも美味しい話ではあると思いますよ。あの人、偉い人、偉い人の求婚を拒み続けた結果が今なんで、早急に相手を探してるんです。アックスさん、若いですし将来性ありますから是非に」


「……なんか押し付けられてる感がものすごいんだけど、ぼくが勘ぐりすぎなのか?」


「勘ぐりすぎなだけです。相手が早く見つかることに越したことはないです。あと、私は姉の相手も探さないといけないので」


 30にもなって何をやってるんだか。嫁の貰い手探しを10以上年下の私が斡旋してるとは。出来てる気はしないけど。アリスさんはともかく、お姉ちゃんは相手が見つかりそうにもないのが現状である。

 ロリコンを見つけるしかないのか?

 でも、そんな人を相手には……。


「なんか難しい顔してるけど、他にも何かあったのか?」


「……ちくしょう。お父さんがロリコンだった……。泣ける」


「ああ、親の性癖を知ってしまうのは確かに泣けるよね。って、何の話?」


「いや、お姉ちゃんを相手してもらうにはまず相手がロリコンだという仮定をしてみたんですけど、私のお姉ちゃんは養子なんです。お父さんが旅の途中で拾って、途中までお母さんとどちらと結婚するか揺れてたとかいうぐらいですから、お父さんはロリコンだった、という結論に」


「お母さんは?」


「お母さんは、まあ、言われれば童顔ですけど、年相応と言いますか、背も平均的ですし、お父さんがロリコンだと言われる筋合いはな……きにしもあらず」


「いや、だから自分の親を捕まえてロリコン扱いするのはやめてあげなさい。可哀想だろ」


「お母さんを選んでなかったらガチロリコンでしたからね。本当に救いようがなくなります。勇者だからって許されないです」


「君はお父さんを尊敬してるんじゃなかったのか?」


「それとこれとは話が別になります。でも、まあ今までこれといって問題を起こしてないので、今のところは大丈夫だと思います。それで、決意は固まりましたか?」


「なんの?」


「アリスさんとの結婚です」


「脈絡がなさすぎて思考がショートしかけてるよ……」


「ただ、あの人も私のお父さんが好きだったらしくて、だから余計に遅れてるんだと思いますけど……今のあの人に選りすぐる権利はないです。さあ、どうですか?」


「いや、さあ、と言われても……」


「あの……もしかして、もうお相手がいたんですか?それともこっちの人ですか」


「後者はない。前者も特にはいないけど……やっぱり、結婚をするなら、ぼくが自分で養ってあげたいんだ。玉の輿だとどうにもね……」


「いざとなればあの人を勘当する手もあります。あの人のお兄さんは平気でやりかねないですけど、いかがですか?」


「妙に押してくるね……自分の身の安全の確保がじんじん伝わってくるよ」


「さて、何のことでしょう?」


 身の安全も確かにあるが、早いところ結婚をして欲しいって思っている。王様もそれを望んでいることだろう。そうそう相手が見つかるものだとも思わないし、アリスさんもああ見えて奥手なのだ。元々というより、現在も王族ということも相まって一般人との距離のつかみ方が分かってないというか、遠巻きに見るだけで自分から近づこうとしない。

 だから、こっちから近づける他ないのだ。

 他人に依存しやすい性格なのかもしれない。

 だったら、そろそろ私からの依存をやめて欲しいものだ。そう、うまくいくわけもないのだけど。

 姉の暴走すら止められないのに、近くにいる人の、分かっている望みすらも叶えてあげられない。

 いや、本当にあの人の望みはそれで合っているのかな?どこか違うから空回りしてるのかもしれない。かといって、それ以外の望みも知りはしない。

 なら、どうする?でも、やることは変わらない。

 私は、フィールドに提示された電光掲示板を見る。


 一回戦。


 リリア・ブレイバーvsロロ・ブレイバー


 まずは、姉に勝つことで私ができる範囲のことを見極めるとしよう。

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