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百合の勇者  作者: otsk
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はい。私が勇者です

 魔王がいなくなってから15年。

 世界は近代化が進み、今や剣は前時代的なもののとなりつつあった。

 だが、私の父親が使っていた剣は由緒正しいものらしく(その割には、扱いが雑だった気がするけど)見た目から、何かとてつもないオーラを放っていた。

 まあ、魔法が栄えて、それを技術に応用しているのに、今更何か戦うでもないのに、剣なんて不要なものだ。

 そもそも、女である私には余程縁遠いだろう。

 だけど、昔の名残なのか、剣術の授業は必修なのだ。

 そりゃあね、自衛はできた方がいいと思うよ?頼りになるものはなんでも使っていかなくちゃ。


「一本。そこまで」


 先生が間に入って、試合を止める。

 一本、と言ったものの、その間にかなりのダメージを相手は負っていた。

 私が負わせたのだけど。

 勇者である父と魔法使いである母から血を受け継いで生まれた私は、両刀とでも言えばいいのだろうか、余程、良いところだけ受け継いで生まれたのか学校では敵はいなかった。


(退屈だな……)


 優秀過ぎるのも考えものだ。

 自分で言うのもなんだけど、お母さんの魔法と頭脳を受け継いで、お父さんの剣術と力を受け継いだのだ。

 これで弱かったら、流石に名折れだろう。

 人は天才と呼ぶけど。

 これでも努力は重ねているのだ。


「リリア〜おかえり〜」


 手を振って私を迎える小さな影があった。

 私が帰る時間になるとこうしていつも迎えに来てくれる。

 小さいけれど、私の大好きなお姉ちゃん。

 ただ、年が15も離れてる。

 そのくせに、容姿はその15年前とほとんど変わらないという、年齢詐欺もいいところな姉だ。


「ロロ姉ちゃん。お仕事はどうしたの?」


「あはは」


「笑って誤魔化さない」


「うう。妹が冷たいよ。私はリリアと一緒に帰りたいだけなんだよ」


「また、お母さんに追い出されたの?」


「試供品使ってパフォーマンスしてただけなのに」


「いつまでも子供みたいなことしないでよ」


「近所の子供に大人気だよ。まあ、盛り上がり過ぎてバレてこうして追い出されたのだけどね……」


 つくづく残念な姉である。

 いわく、魔王らしいのだけど、とてもその面影は残されていない。

 やんちゃな私たちと変わらない人間にしか見えないのだけど。


「じゃ、飛んで帰りましょうか」


「待って。お姉ちゃんだけ帰るつもり?」


「やだな〜ちゃんと抱えてくから」


「そういう問題じゃない!」


 そもそも飛んでる時点で大騒ぎなのに。この姉はそれに懲りる様子はない。

 かつては伝説の生徒会長としてまで名を馳せたそうで、わざわざ歴代生徒会長の顔写真を載せるようにしたそうだ。

 その写真は姉はやたらに写真写りが良くて、確かに15年前のものなんだけど、今も全く変わらない、無垢でもちもちの肌を保っている。

 同じ15歳で私は肌に気を使い始めているというのに、これが魔王の力か……!


「リリア?何をそんな恨めしそうに私を見てるの?」


「見ててください!いつかその肌がシワシワになっちゃうんですから!」


「な、なんの話⁉︎……ほう、リリアもお年頃ということか。気になる子でもいるのかね?お父さんには内緒にしておくから、お姉ちゃんに話してみなさい」


「私より弱い人に興味ないです」


「強すぎるのも困ったもんだ。完璧主義は疲れるよ?」


「完璧主義……というより、根本的に物足りないんです。私にあってないというか……」


「この国最高峰の学校なんだけどなぁ。私が通ってた時より、ずっと出世したもんだよ」


 私立スターライト学園。

 現王様のスター・グラスフィールドの名にあやかって付けたそうだ。

 そこはどうでもいいのだが、あまり蔑ろにすると、父さんも母さんもうるさいので、敬意は称しておく。

 あの人はあの人でかなりの完璧主義な気がするけど、それは妹が自堕落だからという噂を父さんから聞いた記憶がある。

 それでいて、そのアリスさんも普通は優秀だということで、まあ、都合よく世界は回ってるということだ。

 私もお世話になってるので、あまり悪いことは言うまい。

 王族と関わりのある一般庶民って何なんだろう。


「リリア〜難しい顔してちゃ、可愛い顔が台無しだよ?」


「お姉ちゃんほど能天気に生きてないんです」


「なんてこと言うのかしらこの子はも〜。分かった。お姉ちゃん、起業しちゃう。明日から!」


 今日からじゃないんだ、というツッコミは避けておいて、意気揚々と姉はスキップで家へと向かっていく。

 ……起業するっていっても、何をする気なんだろう。

 若干嫌な予感もしたが、同時におばあちゃんの経営する店のアルバイトから脱却できるのではないかと期待を抱いた。

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