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第九章は不思議な国の街の中

第九章は不思議な国の街の中





街の中は人であふれていて、すごい活気だった。

石畳の道路には色々な人々が行きかい、その両端には商店が所狭しと商店が並ぶ。

僕達はその人ごみを掻き分ける様にして前に進んだ。


「前にこの街に来た事があるの?」


ユミさんはまったく迷うこと無く前に進んでいる。でも巨人の「門番のアロ」を見たとき

あきらかに動揺していた。


「あるよ、何度もね」


ユミさんは淡々と答える。


「でも門番のアロの事は知らなかった。どうして」


この街の入り口は今日僕たちが通ったあの門だけだった。だったらユミさんはいったい、何処からこの街に入ったのだろう。


「難しいな、説明するの」


ユミさんは困った顔をした。簡単に僕には説明できないでいるらしい。


「簡単には言えないの?」


「うん、本当に簡単に言えば夢を見ている間に魂だけがここに来た。かな」


ますますもって僕には理解が出来なかった。でもユミさんと一緒にいればいつかこの意味

も理解出来るかもしれない。


「それで、どこへ行くの?」


「私をこの世界に導いてくれた先生が近くにいるの」


「先生?」


僕はとにかくユミさんに続いて進む事にした。

で、僕は進むたびに目を丸くしていた。街は色々な人々で賑わう。


「そうヒロ君にも会わしたいの、そうすれば帰る方法見つかると思う」


これは会うしかないでしょう。僕はすごく期待した。それと同時に元の世界では今頃

パパやママをはじめ色々な人が心配している事が気がかりになってきた。


僕達は街の中心の広場まで来た。広場は円形の公園になっていてその中心には大きな噴水

があった。噴水は石の彫刻の巨大な魚が何匹も口から水を垂れ流している。


「へえ、日本じゃ絶対に見られない景色だね。」


僕は噴水の魚達を見ながら感心する。どこかヨーロッパの建築みたいだ。

その後は二人で少し休みを取ってから再び「先生」の家を目指した。

僕もユミさんもお腹が空いていた。とっくにお昼は回っていたと思う。

でも二人ともお金を持っていなかったから、「先生」の家を目指すしか方法が無かった。


それから僕達は上り坂を進んで先生の家を探した。ここは坂道に無理やり家を建てている

みたいで、どの家も真っ直ぐに立っていない。そしてなんか貧相な家ばかりだ。


坂道が今度は階段になって僕達はますます疲れながら登っていく。


「もうじき?」


僕はお腹の虫と戦いながらユミさんに聞いた。「もうじき」

としかユミさんは答えてくれない。やっとの事で「先生」の家に着いた頃にはあたりは

真っ暗になっていた。


「やっと着いた」


僕は「先生」の家の前でへたり込んだ。

「先生いらっしゃいますか」


ユミさんが門のところから中に呼びかけた。「先生」の家は周りの家とは少し違っていて

一言で言うとインディアンのテントみたいな感じだ。

ユミさんが何度か呼び鈴を鳴らす。


「お留守だったら僕死んじゃうよ」


泣き言が僕の口から出てきた。このまま留守だったらどうしよう。

僕が心配していると誰かが玄関のドアを開けた。手にはランプを持っている。


「こんばんは」


ユミさんが挨拶している。僕は慌てて起き上がってユミさんの後ろに並んだ。

家の中から出てきたのは背の低いおばあちゃんでコロコロと太っている。

しばらくの間はユミさんを不振の目でみていたおばあちゃんだけどしばらくして

僕達を家の中に入れてくれたんだ。


「おじゃまします」


僕はユミさんに続いて家の中へおじゃました。ユミさんは又迷わず先生の部屋へ向った。

僕もそれに続こうとしたんだけど部屋の入り口でおばあちゃんに止められた。


「あんたは、ここで待っておいで」


しかたなく僕は入り口の前に止まり、ユミさんだけが部屋の中に入っていった。

おばあちゃんが僕の袖を引っ張った。


「ぼうや、お腹空いているんだろ。こっちへおいで」


最初はどうしようかと思ったけど僕はおばあちゃんに着いて行った。

別室に僕は連れて行かれた。大きなテーブルがあってそこに座れといわれた。


おばあちゃんは奥の部屋に入っていった。しばらくして奥の方からすごくいい匂い

が漂ってきた。


「お腹すいた」


僕はごちそうを期待しながら奥の部屋からおばあちゃんが出てくるのを待っている。



ユミさんは「先生」と話していた。先生とは痩せた老人で後に聞いた話では300歳をとっくに超えているお化けみたいな人らしい。

僕が「先生」と会う事は無かった。ユミさんがしばらく話し込んでいる間壁伝いに何度か

ユミさんの興奮した言葉が聞こえてきた。


「トラブルかな」なんて考えていたらおばあちゃんが何かを僕のテーブルの前に

「どん」と置いていった。「クッキーだ」


「それは無謀です」「私には出来ません」その二言だけ僕には理解出来た。

僕は「何か揉めているのかな」と思いつつクッキーをたいらげた。


「これもお食べ」


おばあちゃんが山羊のミルクとぶ厚く切った生のハムを僕は美味しくいただく。


「やはりお前さんの名前はヒロって言うのだね」


「ふっぁい「ハイ」」僕は口の中に食べ物を詰めたまま返事をした。


おばあちゃんがキノコのパイを僕の目の前に置く、僕は夢中で食べる、天国だ。


ユミさんが部屋から出て来た。何かを思いつめている様子だ。


「ヒロ君」


「はい」


ユミさんの迫力に背筋が伸びる。


「明日、迷宮の館に行くわよ、覚悟しといて」


「ハイ」


僕はなんだか理解出来ず、とりあえず返事だけは元気にやっておいた。


「先生は子供だけであそこに行けといったのかい?」


心配そうにおばあちゃんが僕達を見つめる。


「はい先生はそうおっしゃいました」


ユミさんはそう言うと席に着いて、食事を取り始めた。苛立っているのだろう、すごい勢いでたいらげてる。


おばあちゃんは今度は何も言わずユミさんを静かに見守った。


「迷宮の館」


あんまりいい響きの名前じゃないな。僕はいやな予感に襲われた。



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