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第八章は不思議の国の巨人

第八章は不思議の国の巨人






僕は緊張していた。それ以外の周りの人達は実に愉快そうに前に進んでいく。

ユミさんもなんだか緊張している様に見えた。


「大丈夫なの、ユミさん」


僕達以外の人々は気楽に前に進んでいる。それを見て思う僕もきっと大丈夫なはずと。

しかし手ぶらで並んでいるのはどうやら僕達だけみたいだ。もし通行証とかお金が必要だったらどうしよう。


「大丈夫・・たぶん」


あれ、ユミさん自信ないの?僕はその場でずっこけそうになった。「やばいかも」


近づくにつれて巨人の大きさや身なりがはっきり見えてきた。

巨人の顔は鳥のくちばしみたいな異様な鼻で目は真赤。髪の毛は腰まで伸びていてモジャモジャになっている。肌の色は青色で血色悪いくせに、すこぶる筋肉質なやつだ。

トータルコーディネイトも最悪で腰布が一枚。


「神様。どうかユミさんが巨人の足元まで来たとき、なにとぞ上を見上げない様にお守り下さい」


なんて冗談の願いをかけている場合じゃない。僕は不安になってユミさんの顔を見る。


「大丈夫」の顔をユミさんがした。ちょうど僕達の前に猫人間の一行がいたが巨人は何も

言わずに門を通した。僕達はその一行に続いて中に入ろうとした。

なるべく気配を消して巨人を見ないように僕は下をみて歩いた。ユミさんも同じ感じだ。

何とか門をくぐれるかな。なんて思っていた時だった。


「まて、そこの二人」


低くていやな声が響いた。巨人だけあって本当によく響く。


「うぁあ、来た」


僕はゆっくりと巨人を見上げた。ひょっとしたら違う人に言っているのかもしれないし。

なんて甘い期待をしつつ僕が顔を上げると巨人の目はしっかり僕を見ていた。


「なんでしょうか」


僕より先にユミさんが口を開いた。事情を知らない僕をかばっていてくれている。

巨人はしばらく不振そうに僕達を見ていたが、「スー」っと息を吸い始めた。


「におうな」


低くていやな声の巨人が続けた。


「この世界と違う匂いだ、お前はどこから来た?」


「私達は人間の世界から来ました」


ユミさんが背筋を伸ばして堂々と答えている。「かっこいい。」


「娘。お前に聞いていない。少年に聞いているのだ」


そう言って巨人はユミさんを黙らせた。いよいよ僕の番みたいだ。

巨人は僕の方を見ている。僕も仕方なく巨人を見上げる。嘘をついてもしょうがないし

別につく必要も考えられない「正直に何でも話そう」覚悟が決まった。


「少年、お前も人間の世界から来たのか?」


巨人の眼は白目も黒目も無かった。ただ赤いだけだ。でもなんとなくその眼の奥に知性が

感じられる。何かを深く考えながら話しているみたいだった。


「はい人間の世界から来ました」


「名前は?」

「ヒロといいます」


僕は出来るだけ丁寧な言葉で巨人と話をした。

巨人は僕を見て少し考え込んだ。そしてゆっくりと口を開く。


「ヒロその名はだれが付けた」


「僕の父と母です」


その瞬間、まわりにいた見物人たちがいっせいに声をあげた。

その喚声に僕は少し驚いてあたりを見回した。「なんで?何がおかしいの」


「静まれ!」


巨人が一括する。その声の迫力にあたりは一瞬で静かになった。


「ここへ来た目的は」


「元の世界へ帰るための方法を見つけに来ました」


僕は真っ直ぐに巨人の目を見て話をした。今の僕にはそれぐらいしか出来ないからだ。

巨人は再び考え込んでいる様子だった。ちょっとした沈黙が続いた。


「私の名は門番のアロ」


巨人が再び口を開いた。何を言うのか、まわりの人々まで注目している。

当然ユミさんも巨人をじっと見つめている。巨人は話を続けた。


「アロとは忠誠を誓う者という意味だ」


「はい」


僕は真っ直ぐ答える


「この街の長は災いを好まぬ、お前たちは災いを持っているのか?」


「いいえ、持っていません」


「このアロの名に誓えるか?命をかけて」


「はい、誓います」


僕自身どこまで演技でどこまで本気だったのかわからない。でも話しているうちに巨人の

アロさんて実はいい人だという事に気が付いたんだ。


「そうか、よし許可する」


こうして僕達は晴れて街の中に入る事が出来た。

二人で城壁のトンネルみたいになっている門をくぐり街に入ってく。

僕は何度も振り返りアロさんの後ろ姿を眺めていた。


「かっこよかったわ、ヒロ君」


冗談なのか本気なのかユミさんが僕を褒めてくる。「うーん、こそばい」

まあ僕は褒められて伸びる子供だからこれぐらいがいいのかもしれない。


雑踏が見えてきた。なんだか活気のある街みたいだ「なんだかワクワクする」


僕達は街の中に入っていった。


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