第二十四章は不思議な国の街の危機
すいませんお待たせしました。
二週間ぶりの投稿です。
第二十四章は不思議な国の街の危機
アロが空を見上げた時にはもう岩石はすぐ近くまで来ていた。
瞬時の判断がアロに求められた。
アロは自分の持っていた岩石を力一杯に放り投げた。
岩石は街の外側の森に落ちた。
巨大な轟音がこだまする。
「くそう」
アロが歯をギリギリ言わせながら毒づく。
岩石を投げる際に足に力がどうしても入ってしまう。
そのために結界が崩れ始めているのだ。
大小のひび割れがアロの足元から広がった。
そこへ次の巨大な岩石が落ちてくる。
「うぉぉぉぉぉぉ」
アロは咆哮を上げて岩石を受け止めた。
「ズシン!」と音が響く。
骸骨の鳥人も警備兵の鳥人も全てがアロに注目した。
時が凍りついた。
結界のひび割れがさらに広がった。
アロが支えた岩石の重さとアロ自身の重さで結界は崩落寸前だった。
「くそう・・・・・・」
アロは同じ言葉を小さく口にした。それはアロの敗北を意味している。
アロの足元から無数の割れ目が広がっていく。
そして結界の崩落が始まった。
ガラスの様に破片となって次々と街の中に落ちていく。
アロも同様に足元が崩れ巨大な岩石を抱えたまま街の中に落ちていった。
凄まじい轟音が立ち上がり砂煙が街中の路地を駆け抜けていく。
僕は衝撃で担架から転げ落ちた。
「痛い・・・」
思うだけで身体では表現出来ない。
「ヒロ君!」
ユミさんの声が聞こえる。僕を助け起こしてくれている。
鳥の羽の音が聞こえて来る。
「しまった、奴らに進入された」
鳥の顔の警備兵が叫んでいる。
「何が起こっているんだ?」
僕は心配になってもう一度自分の身体から魂で抜け出そうとした。
その時またあの声が聞こえてきた。
{ ダカラ、マテッて・・おいらの話を聞けよ・・・}
今度ははっきりした声だ。
「いったい誰なんだ、さっきから!」
僕は叫んだ、さっきから何度も聞こえて来る声だ。
{ 助けてやる。ハナシヲ・・・キケ・・・}
「助けてくれる。どうやって?」
僕は考えた。言葉通りなら願っても無い事だけど「闇の狼」の罠かもしれない。
慎重に言葉を返した。
「どうやって?僕は大怪我で身動きがとれない身体なんだぞ」
しばらくの間、黙っている。返事がない。
そして今度はさっきよりも、もっと鮮明に声が聞こえてきた。
「ホントウニ・・・動けないのか?」
「本当さ、闇の狼の爪で身体を切り裂かれた」
「サッキ…ソラヲ・・飛んでいたじゃ・・・ナイカ・・・」
「魂だけでね」
「・・・・・・・・」
明らかに動揺している。僕の怪我が想定外だった様子だ。
「しかた・・・ガナイ・・」
僕は次の言葉を待った。
実の所内心焦っていた。だって周辺から悲鳴や怒号が聞こえて来る。
担架に乗せられている僕は周りの人に迷惑を掛けているだけなんだから。
だから声の主が本当に力を貸してくれるなら願ってもないチャンスだ。
「おいらの・・・命を・・オマエに・・やる」
ありがとう。と、いいかけて僕は見えない目を丸くした。
「命って・・あなた」
「馬鹿じゃないんですか」と言い掛けてやめた。
まず話を聞いてみないと先が分からない。
「ナアニ・・全部じゃ・・ない」
それを聞いて安心した。人の命を奪ってまで治りたいとは思わないから。
「僕はそれで動けるの」
「ウゴケル・・スコシ・・の間ハ・・」
少しだけども光が見えてきた。僕が肉体のまま動く事が出来る。
「おいら・・ヲ・・探してくれ・・」
「探すって何処にいるの?」
「オイラノ・・命が・・教えてクレル」
「見つけたら何をすればいいんだ」
「名前・・ヲ・・付けてくれ・・」
「名前?」
僕は一瞬考えてしまった。「僕が名付け親?」猫とインコの名前ぐらいしか僕の人生経験では名前を考えた事がない。あっ後 教室の金魚も。
「ソウダ・・意味のある・・名前・・最高のブキにナル・・・」
僕にはその名前が検討もつかないけど、今はやるしかない。
「わかった約束する」
「ヨシ・・契約成立・・おいらの・・イノチ・・送る・・時間が・・ナイ・・急げ・・」
それから直ぐに僕の身体が軽くなった、ためしに傷口を恐る恐る触ってみる。
痛くない!
「やった」
閉じている目を開いてみる。完全ではないけど薄っすらとなら周りが認識できる。
僕は起き上がった。さらに周りを観察する。
骸骨の鳥人達は沢山街に入り込んで飛び回っている。
火を付けたり槍で人々を追い回していた。
街中の人々が逃げまといパニック状況だ。
その中心には巨大な岩石が横たわる。
「あの下にアロがいる」
僕をかばう様にしていたミスマーブルが驚きの顔をしている。
「ヒロ・・」
「大丈夫ですミスマーブル」
僕はそう言った後にユミさんの方を見てみた。
ユミさんは必死で骸骨の鳥人に向って光の玉で応戦している。
鳥人の頭の警備兵の一人は槍で負傷している。
僕を守る為にみんながんばってくれているんだ。
「やかなきゃ!」
僕は起き上がり自分の足で大地に立った。