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第二十二章は不思議な国の闇の力

第二十二章は不思議な国の闇の力






鷹の顔の凄まじい怒りの表情を確認して「闇の狼」は満足そうに笑った。


その笑いに私の怒りは頂点に達したと思う。


私は本気で「闇の狼」を殺そうと思った。

光の玉は「闇の狼」めがけて今にも飛び出して行きそうな勢いだった。


鷹の顔は左手を軽く上げて私と「闇の狼」の間に割って入った。


「殺した方がいいと思います。今すぐに」


私は鷹の顔に訴えた。


「まだだ、殺せばこの事態は収拾するのか?」


鷹の顔は哀しい目をして私を見た。その顔を見て私は冷静さを取り戻した。


「分かりません、でも殺すべきです」


私はもう一度鷹の顔に訴えた。

鷹の顔は再び哀しい目をした。そしてその目をそらす事なく私を見つめ続けた。


私は手を地面に下ろした。急速に手のひらからの光は消えていく。


「闇の狼」は私の方をチラリと見て「再び微笑む」


それが口惜しかったが今は何も言えない。

鷹の顔が虐げられた民族だという事を私は知っていた。「先生」から教えられたこの世界の歴史だ。

恐らく「闇の狼」も同じ虐げられた民族の一人だろう。


「しかしこのままには出来んな」


鷹の顔はそう言って「闇の狼」へさらに近づいていった。

私は不安をかんじながら空を見上げてみた。


「さっきよりも増えている」


骸骨の鳥人間が続々と集まり結界の上に着地してこちらの様子を伺っている。

その数はもう数百といったところだろう。一方の鷹の顔は「闇の狼」と何か話している。


「教えろ、闇の狼いったい何をした」


聞くだけ無駄だという顔で「闇の狼」は目を閉じた。


「ならば、これでどうだ」


鷹の顔は「闇の狼」に打ち込まれた矢を持ち力任せにかき回す。

矢の刺さった傷口から鮮血が滴り落ちてくる。

「闇の狼」は苦痛で顔をゆがめながら鷹の顔の洗礼に耐えた。


しばらくやってみて無駄だとわかると今度は他の兵士に小さな壷を持ってこさせた。


「壷?」


私は不思議に思ってその壷を見ていた。しかし壷を見た瞬間から「闇の狼」の表情があきらかに変化した。


「これが何か分かるな」


鷹の顔は壷を手に取り「闇の狼」の顔に近づけた。壷は「闇の狼」に共鳴したのかブルブルと震えだしている。


「カザンへキロ虫か・・・」


「闇の狼」はあきらかに動揺し、そして怯えていた。


「そうだ、いくら「闇」の戦士でもこいつに取り付かれれば死よりむごい結末がまっている。全身骨だけになっても死ねない苦痛を味わうか?」


鷹の顔は冷静にかつ冷酷に「闇の狼」の方を向き壷の蓋を少しずらした。


「・・・・やめろ」


「闇の狼」が小さな声で哀願する。壷の中から小さな虫の足がいくつも這い出そうとしているのが見えた。


「契約したのだ・・」


「闇の狼」がささやく様に口を開く。


「聞こえんな」


無表情のまま鷹の顔は壷を「闇の狼」に近づける。


「契約したのだ!150年前に」


鷹の目の動きが止まった。


「するとあの骸骨はやはり我々の先祖か」


「闇の狼」はしばらくの間その返答に躊躇していたが鷹の目には誤魔化せないと悟った。


「そういう事だ」


そう言って鷹の目から視線をそらして目を閉じた。


私は考えた、なぜ今のタイミングなのか「闇の狼」が現れ今「骸骨の鳥人」が街を覆う。

答えは恐らく「ヒロ君」がこの世界に来たことから始まっているのだろう。

だったら私はその「ヒロ君」を導いてここまで来た。


「本当の災いは私かもしれない」


そう考えると心が痛かった。


「ユミもうここはいい。少年の所に行ってあげなさい」


鷹の顔は私にそう優しく言ってくれた。私を気遣って?それとも聞かれたくない何かがあるのか。私は詮索する事よりも鷹の顔の言葉を選択した。


駆け足でヒロ君が消えた方に走る。

私が走り出して直ぐに異変を感じた。周辺が急に暗くなったからだ。

空を見上げてみる。


巨大な岩石が今まさにこの街に落ちてこようとしている。

岩石は太陽の光も遮ってしまうぐらい巨大だった。


「骸骨の鳥人の仕業だわ」


私は直感でそれを感じた。

そして次の瞬間凄い速さで結界を駆け上がる巨大な人影が見えた。


「アロ!」


「アロ」は巨大だけど落ちてくる岩石は「アロ」の10倍以上の大きさだ。


地響きが響き渡った。この街全体に雷が落ちたみたいだった。

私は思わず目を硬く閉じてしまった、しまったと思い慌てて「アロ」と岩石の行方を追った。


「アロ!」


私はもう一度叫んだ。「アロ」はしっかりと巨大な岩石を結界の上で受け止めていた。


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