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第二十一章も不思議な国の攻防戦3

第二十一章も不思議な国の攻防戦3






門番の「アロ」は空を見上げていた。

城壁の中では今頃「闇の狼」が何かをしでかしている最中であろう。

それが腹立たしいが「アロ」は城壁より中には入れない。

巨人族の宿命だ、彼らが街に入る事は出来ない。城壁と街の間に彼らの宿泊施設があるだけで街に向う事は許されていない。

そもそも巨人が通れる広い道がこの街には存在していないのである。


「アロ」はそれを今更ながら苦々しく感じていた。

「アロ」の耳には街中での爆発音 悲鳴 はてはボウガンの矢が空を切る音まで正確に理解出来ている。

しかし成す手段を「アロ」は持っていない。

もどかしさと無力な姿。それこそが今の自分自身なのだ。


空からは異様な気配を感じていた。

横を見てみると仲間の巨人族「カイ」と「ハト」も同様に気配を感じて空を凝視している。

「カイ」「ハト」は共に生粋の巨人族で「アロ」の様に人の言葉を理解出来ない。

それでもこの異様な気配を二人は感じている様子だった。


「闇の狼」をみすみす街に入れてしまった。自分「アロ」の失態である。

そして今「望まれた街」に新しい災いが降りかかろうとしている。


「アロ」は本能と直感でそれを予感していた。


「闇の狼め・・何をたくらんでいる」


心の中で毒づく、「アロ」は冷静であったが目は炎の様に赤く染まっていた。

その殺気は同じ同族の「カイ」や「ハト」すらも遠ざけてしまう迫力があった。


それからしばらくして遠くの空に「アロ」は不可思議な物体を確認した。


近づいてくる物体は警備兵の様な鳥人で合ったが何かが違う。


「何だ、あれは?」


「アロ」は赤い目を細めて焦点を合わせた。

ここからではまだ影でしか見えない。鳥の羽、人間の身体。一見すれば警備兵の姿に見える。


「何かが違う」


直感でそれを感じる。胸騒ぎの正体はどうやらあれで間違いない。

「アロ」は凝視してその正体を探った。


「アロ」はその正体に気が付いた。そして愕然とした。




「アロ」が災いの正体に気が付いた同じ頃、僕は街の空を見ていた。

単純に担架に乗せられているから仕方が無い

警備兵に薬を飲まされた痛み止めらしい痛みは少し楽にはなったけど今度は身体がまったく動かなくなっていた。


「災い・・・」


その言葉だけがなぜか僕の頭の中をグルグル回っている。


「あれ?」


僕の目が出血の影響で霞んでいるのかと思った。

空が暗くなってきている。

よく見てみると結界の上に上空から何かが沢山着陸している。


「警備兵たち?」


僕は心の中でそう考えていた。鷹の顔と同じ風貌をしているからだ。

ユミさんと鷹の顔も空を見上げている真剣な表情だ。

担架を担いでくれている兵士たちも同じ顔になっている。


「ヒロ君・・・」


ユミさんがすまなさそうに僕に話しかけた。


「何、ユミさん」


と、返事をしたかったんだけど言葉が出ない。後から聞いた話だと僕はその時、かなりえらい事になっていたらしい。


「お願い目を貸して、危険がせまっているの」


「目?」ちなみに言葉は出ていない。


今の身体だと誰の役にも立ちそうに無い。「目を貸す」だけで多少のお役に立つならと

僕は単純にそう思った。

ユミさんに何か合図を送ろうと目を一度閉じて又開いてみせた。


「ありがとう」


ユミさんに僕のサインの意味が理解出来たみたいだった。

ユミさんの手のひらが僕の目にそっと覆いかぶさった。

手のひらが離れた時には僕はもう何も見えなくなっていた。


僕はその後意識を失った。




「ヒロ大丈夫かい、しっかりおし!」


意識の無くなったヒロ君に慌ててミスマーブルが話しかけている。


「大丈夫、眠っただけだから」


本当に眠らせたのは私だった。

暗闇に凄く怯えていたヒロ君を思い出してそうした。


ヒロ君の目を私の中に取り入れた。眩しい光が全身を包む。


「ユミあんた・・・・」


私の顔を見てミスマーブルは驚いていた。

私が瞳を開き空高く見上げていたからだ。


結界の屋根に次々と降り立つのは全て骸骨になった鳥人間だった。

総勢で百羽近くいる様に見える。

骨だけの手には長い槍と盾が握り締められている。

ボロボロの鎧を身にまとい悪魔を連想させる姿をしている。


私は鷹の顔にあの悪魔の正体を尋ねた。


「あれは何者ですか?初めて見ます」


私は説明する時間を短縮する為に「感じる」を「見ます」に変換して質問した。


「・・分からない、しかし甲冑のエンブレムは代々我々に伝わるものだ」


そう言うと鷹の顔は真っ直ぐに「闇の狼」の所まで歩き出した。

私もそのすぐ後について行く。


私が振り返るとヒロ君は担架に乗せられて進んでいる様子だった。「お願いもっと遠くに逃げて」私は小さくなったヒロ君の姿に祈るように呟いた。


「闇の狼」は矢で串刺しになって横たわっている。それを屈強な鳥人間の警備兵が取り囲んでいる。鷹の顔はその横をすり抜けて「闇の狼」に近づいた。


「闇の狼よ、質問がある」


顔まで串刺しになった「闇の狼」は目だけをギョロリと鷹の顔に向けた。

私はその様子を見て恐いと感じていたけど無表情のまま鷹の顔の横に立った。


「あのもののけ達の正体はなんだ」


鷹の顔が空を指差して「闇の狼」に質問する。


「し・・ら・・な・・い・・ね」


「闇の狼」は苦しそうにそう言うと鷹の顔から視線を外して目を閉じようとしていた。

私は手を「闇の狼」に向かってかざした。青い光が手のひらから浮き上がってくる。


「闇の狼、聞きなさい私の力はしっているわね。貴方をこの光の玉で灰にする事だって

 出来るのよ」


「くくく・・・・」


「闇の狼」はかろうじて動く爪で鷹の顔を指差した。


「お前の・・先祖だ・・哀れにも・・虐殺された・・」


私は鷹の顔を見た。羽は逆立ち恐ろしいぐらいに顔を赤くして怒りを表していた。


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