表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/25

第二十章は不思議な国の攻防戦2

第二十章は不思議な国の攻防戦2





鷹の顔の言葉は力強く僕は本当に救われた気持ちになった。


「お前は怪我をしているのか?」


鷹の顔が聞いて来る。


「へっちゃらです」


と、僕は強がりを見せようと思った。けど鷹の顔が見ている視線の方向を見たときに前言は撤回する事になった。


鷹の顔が見ていたのは僕の胸と腹だった。そこは「闇の狼」の爪で深くえぐられていた。


僕は自分自身の傷に今気が付いた。結構な深さだった。


「あれれれ・・・痛!」


急に胸と腹がうずきだした。とたんに痛みが襲ってくる。


「大丈夫か?」


鷹の顔が聞いて来るけど僕はなんて答えればいいのか分からなくなっていた。

抱きしめているミスマーブルは気絶しているみたいに静かだった。

ミスマーブルの背中は僕の血で真っ赤に染まっている。

僕の事を心配しているのだろう目は僕の傷口に向いていた。


他にも仲間の警備兵達はここにどんどん集まってきた。

僕は無事地上に降りた。鷹の顔の警備兵達は「闇の狼」を包囲している。

「闇の狼」も身動きが取れなくなっていた。


「ヒロ君一!」


無事に下りてきた僕とミスマーブルにユミさんが駆け寄ってきた。


「大丈夫だよ、ユミさんこれぐらい・・・」


僕はなるべく何でも無いフリをしてユミさんに話しかけた。

地上に降り立ったミスマーブルが大急ぎで僕の出血を止める応急手当をほどこす。


「闇の狼」はうかつに動けない状態だった。

なにせ20人?20羽?の警備兵が文字通り「とり」囲んでいる。

屈強な兵士達はそれぞれの手に巨大なボウガンを持ちその鉄の矢の目標は「闇の狼」一点に集中している。


鷹の顔はその隙を付いて僕達を逃がすつもりだ。


「早く用意しろ。とにかく早くだ!」


鷹の顔の命令で他の兵士がキビキビ動いた。そして鳥の羽で覆われた担架を僕の為に運んできた。


「いったい、いつ用意したんだ?」


僕はその担架を不思議に思って見た。まるで僕が怪我をするのを予言していたみたいだ。

ユミさんが僕の頭を心配そうに撫でてくれる。


「これはこれで悪くないや・・・」


怪我はかなり痛かったけど僕は前向きな男の子だからそんな事を考えていた。

チラリと「闇の狼」の方を見てみた。

口惜しそうな顔で僕達を見ている。屈強な警備兵に囲まれて動けないんだ。

動けない様子を確認すると僕は安堵の息を吐いた。


「闇の狼もうおしまいだね・・」


僕はそうつぶやいた、ユミさんも無言で頷く。その顔を見て僕達は助かったと実感じた。

もう一度「闇の狼」の方に目をむけた。


「!?」


「闇の狼」は屈強な兵士に囲まれているのにもかかわらず僕の方だけを見ていた。

そして僕と目が合った瞬間「ニヤリ」と笑った。


「闇の狼」余裕の顔に僕は寒気が走った。

僕の顔色を見てミスマーブルが心配そうに僕を気遣う。


「どうしたんだいヒロ もう大丈夫だよ」


その時「闇の狼」は一歩僕達の方へ足を進めた。

たったの一歩だったけど兵士達は容赦なくボウガンの矢を「闇の狼」へ向けて発射した。

一斉に20本以上の矢が「闇の狼」の身体を突き刺した。


「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ」


「闇の狼」は苦痛で唸り声を喉から搾り出していた。

悪魔の様な奴だけどその光景を見ていられなくて僕は目を背けた。


兵士達は素早く次の矢をボウガンに装填して又「闇の狼」を狙う。


「ぐぅぅぅぅぅぅぅ」


「闇の狼」は唸り声が出ているのに顔が笑っている。

僕は担架に乗せられた立場だけどとにかく早くこの場から立ち去りたかった。

だって視線は一点!僕の方を見ているからだ。


ユミさんはそれに気が付いているらしく「闇の狼」を警戒している。

ミスマーブルも同様だった。


「闇の狼」がまた動き出した。

今度は後ろ足で跳躍して飛び上がろうとした。


無慈悲に再度ボウガンの矢が一斉に発射される。

どれも外す事なく全ての矢が「闇の狼」を貫いた。


跳躍しようとしていた「闇の狼」はもんどりうって地面に叩きつけられる。


「これでおとなしくなるだろう」


鷹の顔が「闇の狼」を見つめながらそう言った。

でもそれは違っていたんだ。


次の瞬間「闇の狼」はこの世の物とは思えない大きな遠吠えを上げた。


「あぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


僕が元気だったら耳を塞いでいただろう。でも今の僕は身体が動かずなすがままだ。

だからこの大きな遠吠えをジッと我慢するしかなかった。

遠吠えは凄まじくて周りの金属がビリビリ振動している。


その遠吠えをかき消すために兵士達が第三弾の矢を放った。

すでに肉の魂の様になった「闇の狼」にさらに矢が突き刺さる。


その矢が全部命中した後「闇の狼」の遠吠えは止み沈黙だけが残った。

「闇の狼」が動かなくなった事を確認して兵士達がその周りを取り囲んだ。

手にはまだボウガンがしっかりと握られている。


「これで闇の狼もくたばっただろうて」


ミスマーブルが「闇の狼」の方を見ながら独り言の様につぶやいた。

鷹の顔は何も言わずミスマーブル同様に「闇の狼」を見つめていた。


「これで安心できる・・・」


僕は担架の上で仰向けになりながらそう考えていた。


でもそれは違っていた。

最初の異変に気が付いたのはユミさんだった。


「何・・この音」


空が急に暗くなってきた。

兵士たちも異変を察知したらしく警戒する。

僕も担架で運ばれながら異様な感覚を感じていた。


「何か来る」


僕は確信していた。災いはまだ終わっていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ