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第十八章も不思議な国の市場の悪夢5

第十八章も不思議な国の市場の悪夢5





いきなりの変化に僕は言葉を失った。

先生はしわくちゃの顔で僕に向って微笑んだ。


「こうすれば説得力があるのかね」


三百歳の老人になれば話がしやすいのだろうか?「僕は単純に怖い」


「それが本当の姿なの」僕の心の中でそう思った。思っただけでは話が進まない。

僕は恐る恐る聞いてみた。


「それが本当の姿?」


「さあどうかな」


先生はとぼけた顔で又笑う。


「この姿も確かに私だ」


その笑顔は僕の警戒心を少し緩めた。先生はそれを見抜いた様に僕の隣に腰掛けた。


「さて、これからヒロ君は色々大変な事件をいくつも経験する」


「今でも充分大変だよ」と、僕は心の中で思う。


「そして守る物が出来てくれば必然的に強くもならなければならない」


「僕が強く?」


今の時点ではユミさんに守られているのが僕の立ち居地だよ。


「そうだ強くなり自分の希望をかなえるのだ。ここはそれが出来る世界だ」


「希望が本当にかなうの」


僕は先生に訴える様に聞いた。

僕の頭の中には「家に帰る事」がまず最初に浮かんだ。「いや違う」と考え直す。


「あの娘を救う事は出来ますか?」


「あの娘?闇の狼に食い殺された娘の事かね」


「はい」


僕は帰る事よりもあの娘の復活を望んだ。

僕の言葉に先生は少し考え込んだ。「やっぱり無理なのか」


「出来るよ、ヒロ、君次第だ」


稲妻に打たれた気持ちになった。


僕に少し希望がでてきた。先生の目は嘘を言っていない。

自分の力が腹の底から出てきているのを感じる。


「一つヒントを与えよう」


「何ですか」


先生の笑顔にテンションが上がってくる。


「この世界は君の望みを必ずかなえてくれる。それを絶対忘れるな」


「ハイ」


僕は大きな返事をする。方法は分からないけどあの娘が助かるなら何でも出来るさ。


僕は再び大きな声で「ハイ」と返事をした。


その時僕と先生のいる暗闇の世界が「グラッ」と大きく揺れた。


僕は座りながらもバランスを崩しそうになって手を地面?につけて体を支えた。

グラグラと身体が揺れる「地震?」

さらに「グラグラ」と揺れる。「おわわわわ」

僕はバランスを取るために今度はよつんばになって身体を支える。


「先生!何ですか」


先生は涼しい顔をしながら微動すらしていない。


「闇の狼め、目覚めだしたな」


僕は無意識に「闇の狼」の意識に集中した。

臭いに反応したんだ。誰の臭い?


「僕・・それとミスマーブル。それにユミさん!」


どういう事か分からない!理解できないけど「闇の狼」は確かに僕達の臭いに反応して目を覚まそうとしている。


「ヒロ君時間が無い・・」


先生は僕を見つめてそういった。しわくちゃの顔だけど目だけが凄く若く見える。


「どうなるんですか?」


揺れが段々酷くなる。


「君は魂だけの存在だ。自分の身体に戻る様に念じろ」


「ハイ」


僕はとにかく自分の身体に戻る事に意識を集中した。

目を閉じると自分の行くべき方向が見えた。直感なんだけど確かにそう感じた。


「それともう一つ!」


先生が怒鳴った。僕はもう飛び立とうとしていた。身体が浮き上がっている。


「君には名前を付ける能力がある。物に願いを込めて名前を付けろ。それが味方になる」


僕はその時「バナップル」を思い出した。


「そういう事だったのか」


僕は呟いた。身体が暗黒の空に吸い上げられそうになった。

もう飛び上がるまでほんの少し。


「それともう一つ!」


「まだあるの」僕は意識を集中させながら先生の方を見た。


「あっ!」


先生は小さな子供に変身していた。幼い頃の僕だ。


「ユミを必ず守れ、彼女は弱い子だ」


小さい子供のくせに「僕自身なんだけど」上から目線の言い方をする。

でもそんな事はどうでも良かった。なんせその瞬間僕は光の様な速さで飛び上がったから。


一瞬で闇を抜けた。豚小屋の中に戻ったんだ。それでも僕の身体は止まらずに加速する。

豚小屋の壁が凄い速さで近づく。「危ない!」そう思った時には僕は壁をすり抜けて

外に飛び出していた。


外には三人の人影が見えた。それは僕とユミさんとミスマーブルだ。

僕はさらに加速しながら僕自身の身体に飛び込んだ。


周りが真っ白になって僕はどうなっているのか分からなくなった。


「ヒロ君 ヒロ君 大丈夫?」


自分が揺さぶられているのが分かった。呼びかける声はユミさんだ。


僕は目を開いた。

僕の前にはミスマーブルとユミさんがいた。


「戻ったんだ」


僕は状況を理解した。昼間の市場の肉屋の前に僕達がいる。

そして僕は豚小屋の方を睨んだ。


「逃げて!あの小屋の中に「闇の狼」がいる」


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