第十四章は不思議な国の市場の悪夢1
第十四章は不思議な国の市場の悪夢1
ミスマーブルのお節介さは僕のママ以上だ。
「水と火と寝る所が充実していれ人は生き延びられる」
と、言うミスマーブルの持論に僕達は素直に従う事になった。
ミスマーブルが先生の許可をもらい僕とユミさんで納屋を検索する。
で、僕とユミさんは「先生」の納屋で「迷宮の館」に向う為に必要な物を色々物色していた。
「これは何?」
僕がガラクタか何かを掻き分けて役立ちそうな物をユミさんに渡した。
実際僕は何がなんだか分かっていない。
ユミさんは僕の渡した物を手に取って触りながら確認する。
「これは駄目」
「じゃあこれは?」
こんな感じで朝の時間は過ぎて行った。
結局僕達が選んだものは
「水筒」大きな魚の鱗が縫い付けてあってキラキラ光っている。
で、この水筒が凄いのはいくらでも水が入りそして軽い。
ミスマーブルは胸を張ってそう言った。
「本当かよ」
僕はそう思い山の上から流れる小川に行って水を入れてみた。
「どんどん入ってくる」
僕は感心して見ていると水筒の口が勝手に大きく開いた。・・川一杯に。
「どんどん入ってくるな・・」
小川の水はどんどんこの水筒に入っていった。まったくあふれる様子が無い。
川の下を見てみると洗濯をしている人や水遊びをしていた子供たちが一斉に僕の方をにらんでいる。僕としては「えっ?」それもそのはず。
「あっ」
小川の水が全部水筒に入っていて、ここから下の小川が干上がっていた。
「すいません。ごめんなさい」
僕はぺこぺこ頭を下げて慌てて水筒を引き上げた。驚くほど軽い!
先生の家に帰りながら「どうなっているんだ?」と、思って水筒の中を覗いてみた。
中は真っ暗で何も見えない。でも中は水の波打っている音が聞こえる。
水筒を持ち上げて目の高さにしてもう一度覗いてみた。
「バシャ!バシャ!」
いきなり水が水筒からあふれ出た。「うぁ!」と思った瞬間にはもう遅かった。
僕は頭から全身にかけて水を思いっきりかぶった。
「うぁぁぁぁぁ!」
水筒は小川の水をたっぷり吸い込んでいて僕は全身水をかぶった。
その程度なら良かったのだけど水の勢いが凄くて坂道になっている溢れでた水が洪水になった。滝の様になって近くにいた人達も水を浴びる。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
僕は周りの人に謝りながら走って先生の家に逃げ込んだ。
ドアを慌てて閉めて僕は「はぁ」とため息を漏らした。
その様子をミスマーブルが横目で見ている。
「やっぱりやったのか」
言葉には出さなかったがミスマーブルがそんな顔をして僕を出迎えてくれた。
「何!そのしたり顔」
全身ずぶ濡れの僕はミスマーブルにすごく腹が立った。
しかしミスマーブルはそんな僕の行動を予測していたみたいで。
「これに着替えておいで」
そう言って新しい着替えを用意していてくれた。
そんなこんなの道具集めだった。
結局こんな事を繰り返して僕達が「先生」の家を出発したのは昼過ぎになった。
悲しい事にミスマーブルは僕達に着いてきた。
「まだ足りてないね」
その一言にミスマーブルの性格が現れていると思う。
ミスマーブルはお節介の達人で僕達が行く「迷宮の館」にまだ足りていない必要な物を市場で買うと言い張った。
「やる気満々のおばあちゃんに僕は勝つ気かしない。」
僕達はミスマーブルの提案に従った。
僕達は「先生」の家を出発した。
長い坂道を下りながら僕は考えていた。
「僕がしっかりしないと」
ミスマーブルはおばあちゃんだしユミさんは足元がおぼつかない。
杖を付くユミさんは僕から見ても本当に弱弱しかった。
一歩一歩杖で確認しながら階段を降りていく。
ちょっとした段差でユミさんが転びそうになった。
「あっ」
僕は無意識にユミさんを抱きしめてしまった。
下心は無い。断言できる。偶然だ。それ以外はありえない「階段から落ちるのと僕に抱きしめられるのと、どちらが得か?」
答えは簡単さ。「僕が受け止める」
ユミさんの軟らかい感触と女性の香りに僕は心臓が口から飛び出るくらいドキドキした。
「ユミさん大丈夫?」
僕は抱きしめた手を離したく無くて抱きしめたまま次の言葉をひねり出そうとしていた。
しかしユミさんの手は僕をゆっくりと突き放した。
「ごめんありがとう」
ユミさんが優しく僕に言った。
「いいんだよ気をつけてね」
僕はそう言って又歩き出した。
確かに目が見えなくてこの急な坂道を下りるのは大変だと思う。
ミスマーブルも黙っているけどゆっくりと歩くようにしているみたいだ。
僕もミスマーブルと同じ歩調で歩く事にした。
ようやく街に下りる事が出来た。時計がないから時間が分からないけどお日様は西に
傾きだしていた。
「市場に真っ直ぐ行くよ、お昼ごはんはそのあとだ」
ミスマーブルに従い僕達は街の市場に真っ直ぐ向った。
僕はその時変な感覚に襲われだしていた。
一歩ずつ歩くたびにその感覚が強くなる。
「どうしたの」
僕の様子にユミさんが気づいた。
「なんでもない大丈夫」
僕はそう言って歩く速度を速めた。
「なんだろう」
心の中で考えるこの感覚の正体は?
いやな予感が又僕の頭の中に駆け巡りだした。




