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第一章は不思議の国へ

僕が小学生の頃の思い出や初恋の思いを詰め込んだ作品です。

書いているうちに色々な思い出がよみがえって来ました。

読者の皆様にも読んでくれている間に僕の気持ちが伝われば

最高だと思います。

第一章は不思議の国へ




僕の名前は田坂博之、通称ヒロってみんなが呼んでいる。来年からは中学生って呼ばれる物になるみたいだ。

実感は無いけど、実際そうらしい。

だって僕は来月からママの命令で英語の塾に行かされる。

とても嫌だが、お小遣いが人質だからしかたない。でもママはまだいい、厄介なのはパパだ。パパとは毎日夕方キャッチボールをする。僕が小学校に入った時は僕の起きている時間には帰って来た事が無かった、だのに最近は夕方の六時にはきっちり家に帰ってる。

で、夕食前のキャッチボールだ。はっきりいって迷惑、だってパパはすぐ切れる。


前はそんな事、無かったのに。

思いっきり投げてくるんだ、ボールを受けた手が痛い。

「思いっきり投げてみろ、ヒロ!」

パパが大声で僕に向かって叫ぶ、周りに恥ずかしいしグローブの中の手がパンパンだ、

だから僕は消極的にボールを返す、パパがあきらめてくれる事を神様に祈って。

で、パパが又怒る、「真面目にやれないのかヒロ!」

でも僕は答えない、答えてやるもんか。

しばらく無言のキャッチボールが続く、気まずい時間が過ぎてパパがあきらめる。「もう、もどろう・・」僕は無言で「ホッ」と安心する、今日もこの儀式を乗り越えた。

いったい神様は、あとどれくらいこの試練を与えるのだろう。


家に帰ってリビングに行く、ママの作った晩御飯の匂いをクンクン嗅いで今日は何か当ててみる、今日の匂いは焼き魚の匂いだ、お腹はペコペコだけどちょっとがっかり、だって僕の好きなのはカレーライスとハンバーグ。

それに焼肉、焼そば、その次にクリームシチューと、とんかつ、これを嫌いな小学生は絶対にいないって断言できるよ。

「手、洗ったの?」ママが毎回聞く言葉だ。

僕は子供じゃないよ!心の中でそう思う、大人は

そんな事言っても理解出来ないだろうから、黙っておく。

この当たり僕が大人の証拠だ。


で、夕食が終わり二階に上がろうとするとママが僕を呼び止めた。

「ヒロこれ、買っといたから」

紙袋を僕に差し出す。紙袋を広げると車酔いの薬が出てきた、僕はムッとする。

「大丈夫だよママ」

去年のおじいちゃんの葬式の時、焼き場に向かう車を

僕が耐え切った事をママは覚えてないらしい。

明日からの修学旅行をきっと心配してるんだな、でも大丈夫。

準備はバッチリ一人で出来たし、バスだって平気さ。


部屋に戻った僕は明日からの日々に期待半分不安半分の修学旅行の荷物をもう一度確認した。それからママがお風呂に入れと言われるまでは、ゲームのスイッチを入れて「集中」

しばしの空想タイムに入る、下でテレビを見たいけど、下にはパパとママがいる「何を喋っていいのか最近よくわからなく成って来てるんだ、気まずい会話をするくらいならゲームの中でドラゴンを倒して、仲間と旅をする方がずっといい。明日はどうなる事やら、僕は考えるのを止めてゲームに熱中した。



で、もうバスの中。朝六時に家を出て、学校に言って、校長先生が何か言って、先生が何か言って、バスが校門の横に着いて、

それに乗って、高速に乗って、しばらくたって、…


「 僕は史上最悪の気分になっていた。」


いやはやなんとも理解しがたい、車酔いとはいったい何なんだろう。

お爺ちゃんの葬式の車に勝った僕が今現在大型バスの中で負けようとしている。


「おじいちゃん、僕に力を!」


念じていても気分はどんどん悪くなるし、胃袋からは朝食べた

サンドイッチが今にもコンニチハしそうだ。周りは楽しそうにおしゃべりしている、しかも近くには伊藤美紀がいる、伊藤は小四からずっと同じクラスで、なぜかよく同じ班になったりもしている。


「この伊藤の前で失敗は絶対にしたくない。」


だって僕はこの二年の間、伊藤の前だけは何とかカッコの良い男を演じてきた。

サッカーの時も、野球の時でも、苦手なバスケットボールの時でもいつもよりは二十パーセントは良い印象を与えてきたと自負している。それをバス如きに全てを台無しにされては

たまったもんじゃない。


「僕が将来もし総理大臣になったとしたらバスは全面廃止だ、修学旅行は電車のみ!

    よし決めた、絶対に決めた    」


そうこうしている内にバスが休憩でサービスエリアに到着した、減速してゆっくりカーブに入る、最後のカーブの重圧がサンドイッチ

を喉までコンニチハ状態にしたが、何とか僕はサンドイッチ君にお別れをした。


「サンドイッチ君の出口は下から。上は通行禁止。」


「二十分の休憩です、トイレに行きたい人は今の間に…」


先生が何か言っているんだけど最後まで集中して聞いていられない

とにかくバスからへロへロ状態で降りる事がやっと出来た。とにかく新鮮な空気を。

バスや他の車の排気ガスから一刻も離れなければ、そう思いながらバスからなるべく遠く

に行く。


二十分で果たして回復できるんだろうか?


「ポーションか薬草が欲しい」


切実に僕はそう願った。


で、一人でサービスエリアの展望台に来た。

見晴らしが、すっごくいい。

柵の向こう側には海が広がっている、潮風が吹き付けてくる気持ちがいい、車酔いが少し

ずつ引いていくのを実感する。

僕は水筒のお茶を少し口に含んだ、生ぬるくなっていたけど今の僕にはすっごく美味しく

感じる。

僕は辺りを見回す余裕が出てきた、展望台はサービスエリアの一番奥にあるらしく、あんまり人がいない。


「こんなに綺麗な景色なのに…」


勿体ないなんて思っていた時に事件が起きたんだ。


ふと一人の女の人が視界に入った、杖をついている一人だ、女の人といっても中学校の制服を着ている、だから僕よりは一つか二つ年上って事だ。その子が真直ぐ柵の方へ近づいて行く。


「あれ変だな」


僕が何か変な感じがした、ぞわぞわと胸騒ぎもする。


「目が見えないんだ!」


気づいた僕は水筒を放り投げて全速力で女の人に駆け寄っていく。柵はそんなに高くないしその先は崖だ。僕は大声で叫ぼうとした。

でもそれより先に女の人が柵につまずいた。


「危ない!」


声が思うように出ないし焦る。女の人がバランスを崩して崖に吸い込まれようとしている。その時僕はようやく追いついて手を握る。

事が出来たんだ。女の人は落ちかけている。僕はありったけの声で助けをよぼうとした。


「助けて」


僕が声を張り上げようとした。でも叫べたかどうか判らない、急に眼の前が真っ暗になった。と、同時に鼓膜が裂けるかと思うぐらいの雷の音がした。後はジェットコースターに

乗った時みたいなお尻からお腹が抜けていく

感覚。「死んだ、僕は死んだ」そう思いながら、僕は闇の向こう、それでもって闇の下の

方へ掃除機で吸い込まれる様に、えらい早さで落ちていった。



 ずいぶん意識を失ってたと思う。

軽い夢も見ていた。僕がバッターボックスに立っている、ピッチャーは隣のクラスの内藤だ。ツーアウト満塁で僕はツーストライク。ハッキリいってかなり追い込まれている。クラスの盛り上がり方が凄い。


「僕はイチローじゃないか。」


と錯覚してしまう。今が同点だから一人帰れば勝ち越し。で内藤がリトルリーグ仕込みで僕の嫌いな内角ばかり攻めてくる。しかもやっかいな事に早く試合の終わった女子が男子の応援にきている。当然その中に伊藤もいる。      


「だったら答えはひとつ」


僕は足を半歩移動して肩をずらしてバットを構える。そして次に来るはずの「痛さ」を覚悟する。

「デットボール!」肩にぶつかった球はとてつもなく痛かったが僕はわざと無表情な顔で

累に出た。クラスのボルテージは最高だ。

「ヒロ!」「ヒロ君!」みんなが僕に向かって声援をくれる。あの時は最高だった。でも

何か違う様な気がする。なんでだろう?


「なんでだろう」


僕は夢の中で呟いた。そして現実に呼び戻されたんだ。


「どこだろうここは?」


周りが真っ暗で何にも見えない、でも強烈な潮風が頬に当たる。

そうか海に落ちたんだ。僕はそう確信して起き上がろうとした。「?」なんか揺れている。

ぞ。「誰か」起き上がると急に不安になって僕は人を探した。とにかく真っ暗で何にも見えやしない。


「誰かいませんか」


僕はもう一度叫ぼうとしたんだ。そうしたら      


「ごめんねもう少しだけ」


声が聞こえたんだ、ごめんねと頼まれれば

「ハイハイ」と答えるのが僕のポリシーだったが「※ただし女子のみ」だが今は状況が違う

「誰かいるの?」僕は声のする方に顔を向けたんだけど真っ暗でさっぱり見えない。

「ごめんね」声の主は泣いている様にも思える、何が何だか訳が分らん。先生やみんなは

心配していないだろうか?探しているのかな。僕はそんな事を思いながら声の主の次の言葉

を待ったんだ。で、しばらくして声の主が口

を開いた。「今、 目を返すね」はいありがとうございますと言いたい所だが「目!」何の事なんだ何を言っているんだ。僕は軽くパニックに陥った。


「なんだ、何をいってんだ」


「大丈夫」


かなりうろたえている僕の目の当たりに温かい手の温もりを感じた。その瞬間僕の目の前が明るくパッと開いんだ。


 海の上にいる。波が足元をいったり来たりしている。僕が立っているのは何か黒くてブヨブヨした生き物の上みたいだ。とにかく見える様になったのはありがたい。回りをきょろきょろと見渡すとすぐ隣にさっきの女の人がいた。


「あのう、」


僕が声を掛けようとする。

でもやっぱり泣いていたみたいでその後の言葉がかけづらい。僕はどうしようかと思って途方にくれてみた。「見てみて、ほら、きれいでしょ」女の人が最初に口を開いた。指差す方向を僕は見てみた。

太陽が今まさに大海原に沈もうとしている。風景全体がオレンジの褐色に包まれている。


「うわぁ!本当に綺麗だ」


僕はその時初めて遠くを見たと思う。


「ね、凄く奇麗でしょ」


女の人が僕に向かって微笑みかけた。「あっ」僕は小さな悲鳴を

上げた。彼女は目を閉じたままだ。そうだ彼女は杖を確かについていた。


「どうして?見えるの」

僕は聞いていい質問何だか良く判んなかったけど、とにかく聞いてみた。


「あなたが見せてくれたの」


僕「?」


「えっと…どういう事でしょうか?」


大人に聞くような質問を僕は彼女にした。多少の沈黙って奴に僕は慣れていない。だから空気をごまかす為にも僕は再び景色に集中した。

空の景色はどこまでも茜色が広がってて頭は?だらけ。


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